サツマイモの生産量、日本一を誇る鹿児島県。実は今、輸出が好調で、2021年度のサツマイモの輸出額は2016年度の10倍となる6億4500万円。海外での需要が高まるサツマイモの輸出を支える生産現場や販売会社を取材した。
雨が少なくいい出来 収穫は最盛期
南九州市頴娃町のサツマイモ畑。収穫の最盛期を迎えている。作業に精を出すのは、別府宏一さんと妻の由希さん、そして母の宏子さん。鹿児島のサツマイモ農家の収穫風景だ。
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サツマイモ農家・別府宏一さん:
今年は雨も少なく、良いイモができたと思います
坪内一樹アナウンサーも収穫の手伝い。カメラが回る中、収穫されたサツマイモが次々にベルトコンベアーで流れてくるのをリポートし始めた。
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その時、宏子さんがすかさず「はい、どうぞ!」とイモを手渡す。アットホームな雰囲気ながら、リポートする間も惜しんで次々に収穫されるサツマイモ。その一部は海外に輸出されている。
実は別府さん、最近になって自分の畑のサツマイモが輸出されていることを知り、驚いたという。
サツマイモ農家・別府宏一さん:
(輸出は)果物のイメージがあったが、野菜が輸出されるのはイメージがつかなかったですね
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香港では小さいサイズが好まれる
輸出を手がけるのは、食品販売会社の鹿児島くみあい食品。物流センターでは一つ一つ、手作業で袋詰めが行われていた。
これらは香港に向けて出荷されるが、サイズがポイント。
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坪内一樹アナウンサー:
ずいぶん小さいサツマイモですが、これを輸出用に梱包しているということですか?
鹿児島くみあい食品・塚原隆浩さん:
そうですね、Sサイズという小さいサイズになります。日本みたいに調理するというよりは、ふかしたらすぐ食べやすいということで、食べごろサイズが人気になっています
![香港に向けて出荷されるのは小さな「Sサイズ」](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/9/c/700mw/img_9ca5c328bc97ad98d96ea5cd5f5b0715565840.jpg)
日本では様々な料理に使われるサツマイモだが、香港ではおやつ感覚で食べることが多く、電子炊飯器にそのまま入れてふかすという。そのため小さいサイズが好まれている。
輸出担当者は、サツマイモの人気の理由は「甘さ」にあると話す。
鹿児島くみあい食品・木元達郎さん:
現地のサツマイモを食べたんですが「これはどうなの?」という味でしたね。味もなく、ただ柔らかい離乳食を食べているような感じ。それが日本の甘くておいしいサツマイモが来たとき、おいしさにほれて買う人が多い
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現在、この会社では輸出用のサツマイモは全体の1割だが、将来的には3割にまで増やしたいと意気込む。
鹿児島くみあい食品・木元達郎さん:
国内で価格競争するより、海外だとそれなりの味・クオリティーであれば、価格で勝負できる。相場に左右されないということで、一定価格で農家から仕入れることができるので、農家に還元できる
海外ドンキで焼き芋ブーム 鹿児島産に期待
ここ数年で飛躍的に伸びた鹿児島のサツマイモの輸出額。ある商品の人気が、1つの要因となっている。
シンガポールで、現地の人が列をなして買い求めていたのは「焼き芋」だ。
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アジアでの焼き芋人気に火を付けたのは、大手ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を運営するPPIH。アジア各国で日本産の商品を販売する店舗を展開している。
サツマイモに目を付けた理由を担当者に聞いた。
PPIH海外輸出担当・檜山健一さん:
シンガポールの最初の店長が研修で日本に来たとき、いろんな日本食を食べてもらった。一番印象に残った食べ物は何ですかと聞いたら、「サツマイモだ」と言ったんですよね。サツマイモが甘くて、あの値段で食べられるということが彼にとっては衝撃だったようです。現地の人がそう思うのであれば、ある程度可能性はあるなと
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鹿児島県は2020年にPPIHと連携協定を結び、県産品の海外販路の拡大を進めてきた。県などが主催し、この会社が参加した2019年の商談会を機にサツマイモの輸出額は伸び始め、この会社と取引する県内企業も増加したという。
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PPIHでは鹿児島のサツマイモを高く評価している。
PPIH海外輸出担当・檜山健一さん:
味というのは当然あるんですが、輸出となると鮮度劣化との戦いになる。長期輸送に耐えられるような保管だったり、工夫ということでは鹿児島県が最先端
特殊な貯蔵施設で温度・湿度を適切に管理することで、鹿児島は輸出でのアドバンテージをとっていた。
鹿児島県内のサツマイモは今、根や葉が腐る基腐病(もとぐされびょう)で収穫量に大きな影響を受けていて、全てが順風満帆とは言えない。しかし、「薩摩」の名を冠した鹿児島の農産物は着実にアジアに広がっている。
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サツマイモ農家・別府宏一さん:
海外の人たちに鹿児島の野菜が知られるのはうれしいので、そこをやりがいに頑張っていきたい
外貨の獲得による生産農家の所得向上や、サツマイモをきっかけにした鹿児島のPRなど、サツマイモが秘める可能性に注目だ。
(鹿児島テレビ)