7年前、長野・佐久市で男子中学生が車にはねられて死亡した事故。ひき逃げの罪で異例となる3度目の裁判が開かれていて、検察は運転手の男に懲役1年を求刑した。

時効直前に「ひき逃げ」で起訴 異例の経過…3度目の裁判

2015年3月、佐久市の横断歩道で当時中学3年生の和田樹生さんが車にはねられて死亡した。

事故現場(2015年 長野県佐久市)
事故現場(2015年 長野県佐久市)
この記事の画像(9枚)

必要な救護をせずに現場を立ち去ったなどとして、御代田町の池田忠正被告(49)がひき逃げの罪で起訴されている。

この事故をめぐる刑事裁判は3度目。これまで過失運転致死の罪などで2度裁判が行われ、池田被告は執行猶予付きの判決などを受けている。

父・善光さん
父・善光さん

ただ、判決に納得がいかない両親が再捜査や起訴を求め、検察は時効成立直前の2022年1月に「ひき逃げ」の罪で起訴した異例の経過をたどっている。

長野地方裁判所
長野地方裁判所

6月から始まった裁判で、被告側は「救護した」などと述べて無罪を主張。

検察側は「事故直後に通報せず、救護の前にコンビニで口臭防止剤を買った」と指摘。被告は「酒の臭いを消したいと思ってしまい、コンビニが目に入った。飲酒を隠したかった」などと述べていた。

長野地方裁判所(9月14日)
長野地方裁判所(9月14日)

14日の裁判で検察側は「飲酒運転の発覚を免れるという、救護義務を果たす以外の別の明確な目的があったことは明らか」「人命を軽視した悪質なもの」などとして懲役1年を求刑。

一方、弁護側はコンビニに行ったことは認めながらも、「その後、速やかに現場に戻った」などとして改めて無罪を主張した。

また、3度目となる裁判について同じ事件で再び審理することを禁じる「一事不再理」に当たるとして免訴なども主張した。

樹生さんの両親
樹生さんの両親

傍聴した樹生さんの両親は…

母・真理さん:
望んでいたものよりは短い求刑だったが、減刑せずに実刑判決をいただきたい

父・善光さん:
なんとか樹生に、墓前で全ての裁判がこういう結果で終わって、樹生が少しでも納得できるような報告ができれば

裁判の争点…「ひき逃げに当たるか」「一事不再理に当たるか」

記者:
3度目となる異例の裁判。争点の一つが「ひき逃げに当たるか」です。
検察は被告が事故を起こしたあと、コンビニへ向かって再び現場に戻るまで時間が経過していたと指摘。警察への通報も通行人の男性で、救護義務違反などに当たるとしています。
一方、被告側は戻って救護しているとし、「ひき逃げ」には当たらないと主張しています。
そして、もう一つ、同じ事件について再び裁くことを禁じた「一事不再理」に当たるかです。刑事裁判は3度目となり、これまでに過失運転致死などの罪で執行猶予付きの判決が出ています

刑事法に詳しい専門家は…

刑事法に詳しい・三枝有 信州大学名誉教授:
「ひき逃げ」という一般的な観点から見ても、「ひく」行為と「逃げる」行為の2つがある。2つの事実からなっているとすると、原則的には別の事実だと。そうなってくると、一事不再理だという主張が通るかというと通りにくい

三枝教授は「起訴事実がこれまでの公判とは別で、一事不再理には当たらない」としている。

事故現場(当時)
事故現場(当時)

異例の経過をたどった3度目の裁判。注目の判決は11月29日の予定だ。

(長野放送)