2015年、長野県佐久市の男子中学生が車にはねられ死亡した。東京高裁はひき逃げの罪に問われた男性について逆転無罪を言い渡したが、検察はこの判決を不服とし上告した。男子中学生の母親は「最高裁では人の命を守るため、きちんとした判断をしてほしい」と話した。
異例の3度目の裁判に
2015年3月、佐久市で当時中学3年生の和田樹生さんが車にはねられ死亡した。
運転していた男性については、過失運転致死の罪などで2度裁判が行われたが、和田さんの両親は救護義務違反「ひき逃げ」の罪での起訴を求めて独自に調査して告訴。検察はその後ひき逃げの罪でも起訴し、異例の3度目の裁判となった。

事故後、飲酒を隠そうとコンビニへ
争点となったのは男性が事故を起こした後、飲酒を隠そうと近くのコンビニに行き口臭防止剤を買って服用していたこと。
一審の長野地裁は「ひき逃げ」の罪に当たるとし、懲役6カ月を言い渡した。

逆転無罪 高裁「すぐに救護している」
しかし、二審の東京高裁では―。
田村裁判長は「被告がコンビニで口臭防止剤を買って戻るまでの時間は1分余りで、すぐに救護している」、「飲酒運転の発覚を免れようとする意志と救護しようとする意志は両立する」とし、「ひき逃げ」には当たらないとした。
そして、一審の判決を破棄し、被告に「無罪」を言い渡した。

「息子にかける言葉が見つからない」
判決後、和田樹生さんの両親が取材に応じた。
父の善光さんは、「救護義務違反(ひき逃げ)に当たらないということは考えられません。なぜ、われわれの思いというものが司法に届かなかったのか」と、怒りをあらわにした。
また、母の真理さんは、「被害者の生命や体の保護を全く無視した判決。最低の判決です。樹生にかける言葉が見つからない。こんな国に産んでごめんねとしか言えない」と、やるせない表情で話した。

母「直ちに必要な措置をしたのか」
東京高検は判決を不服とし、10月11日までに最高裁判所へ上告した。
和田樹生さんの母の真理さんは、「このままこの刑が確定したら同様の犯罪が増えてしまうとすごく危機感を感じていましたので上告していただいたと聞いてほっとしました。息子にとって必要な措置というのは、何一つ行われていないと私たちは思っているので、きちんと事件全体というものも裁判官に見ていただいて、直ちに必要な措置を講じる、この直ちにという部分について他の行為を優先してはいけないということをきちんと示していただきたい。同じような思いを他の方に繰り返してほしくないという思いもすごく強く思ってきたことなので、国民の生命と安全を守るための司法であってほしいなと思っているので、最高裁にはきちんとそのあたりを示していただきたい」と話した。

(長野放送)