救急隊員が暴行される事件が相次いでいる。名古屋市消防局の救急課に、隊員への暴行や、適正とはいえない要請の現状について伺った。

愛知や三重で救急隊員への暴行事件が相次ぐ

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8月16日、三重県松阪市で「彼氏が吐いてうなっている」と女性から119番通報があった。救急隊が向かったところ、現場に興奮状態の男がいて、隊員の顔を突然殴るなどしたうえ、止めようとした別の隊員の顔にも肘打ち。隊員2人はケガをし、男は警察官に現行犯逮捕された。

8月24日には、名古屋市中村区で「人が歩道に倒れている」と119番通報があり、救急隊員が倒れていた男に声をかけたところ、いきなり殴られたという。男は逮捕されたが、酒に酔っていたとみられている。

7月18日には、「おなかが痛い」などと119番通報した三重県松阪市に住む男が、救急車に向かう途中に、吸っていたタバコを投げ捨てたのを注意されたことに腹を立て、隊員2人を殴り逮捕された。

高齢者から「話し相手になって」…適正利用とは程遠い要請も頻発

増加している「隊員への暴行」や「適正とはいえない要請」の現状について、名古屋市消防局・救急課の木崎慶輔(きざき・けいすけ)さんに伺った。

木崎慶輔さん:
新型コロナウイルス感染症の第7波と猛暑の熱中症と合わせまして、かなりの出動件数
 

7月はコロナと熱中症患者の要請が重なり、救急出動は過去最多の1万4700件を超えた。そうした中で起きた、今回の救急隊員への暴行事件。

木崎慶輔さん:
数年に1,2回は、こういった隊員への暴行事件というのは発生しております。救急搬送体制も苦しんでいる中で、このような形で隊員が暴行されて、非常に残念でもありますし、許せない行為だと思っております
 

第7波の中では、病気やケガ以外の救急要請も増えているという。

木崎慶輔さん:
行動制限がないというところで、お酒を飲みすぎた方といいますか、酔っ払った方からの救急要請は増えているように感じます。適度に楽しんでいただいて、ほどほどでご帰宅いただくと

また、悪質とまではいかなくても、「適正利用」とは程遠い要請が頻発している。

木崎慶輔さん:
数日前にぎっくり腰。歩くには歩けるんだけれども、医療機関にかかりたい。しゃっくりが止まらないと救急車を呼ばれる。料理中に指先を包丁で切ってしまって、心配だからと呼ばれる方も

1人暮らしの高齢者からは「話し相手になってほしい」という要請が入ったこともあるという。

救急隊員の勤務時間は24時間で、最近では多い日に20回の出動があり、食事や仮眠もままならない状況だ。

木崎慶輔さん:
119番をしてくるというのは、何か助けて欲しいということで救急車を呼ぶと思っています。我々はそういった方々に、真摯に対応しなければいけないと思っています。迷ったら救急車を呼んでもらって結構です。ただ救急車を呼ぶ前に「本当に必要かな」と一瞬だけ考えていただいて、要請していただければと思っています
 

救急車を呼ぶべきか迷った場合に、サポートしてくれる窓口がある。

一つは、愛知県で行っている「救急医療情報センター」。電話で休日や夜間でも診療が可能な医療機関を24時間体制で紹介してくれる。

もう一つは救急受診アプリ、通称「Q助(きゅーすけ)」。該当する症状を選んでいくと、緊急度に応じてどのように行動すればいいのか教えてくれる。合わせて近くの受診可能な医療機関を検索することができ、交通手段を表示したり、タクシーを呼ぶこともできる。

(東海テレビ)

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