「当面、発生届の取り扱いにつきましては、現在の運用を続けていくことといたします」医療現場ひっ迫の原因である「全数把握」を、小池知事はなぜ「当面」「続ける」と言ったのか。小池知事自身は「医師が患者を診て作成する「発生届」には感染動向の把握に加え、患者一人一人の健康状態を把握して、必要な医療に繋げていく重要な機能がある」と説明したが・・・

小池知事の胸の内は・・・

「東京も全数把握の見直しを「やれるタイミング」でやることは否定しない」。ある関係者は知事の胸の内を、こう推察し、今が「タイミングでない理由」として感染者情報を管理する国のシステム「HER-SYS・ハーシス」を挙げた。全数把握の見直しを受けたハーシスの改修は9月末になるという。

今すぐ見直した場合、重症化リスクのある人は、これまで通りハーシスに入力すればいい。しかし、それ以外の感染者については、総数などを各医療機関がそれぞれFAXやメールで保健所に送らなければならないというのだ。ちなみに都内では、発熱外来だけで4742件にのぼっている(24日現在)。

「全数把握」見直しをオンラインで表明した岸田首相(今月24日)
「全数把握」見直しをオンラインで表明した岸田首相(今月24日)
この記事の画像(4枚)

ある関係者は「これだけの医療機関がそれぞれ保健所にFAXやメールを送れば、逆に手間が増え、正確な情報把握は困難になる」との見方を示す。これでは、”手作業”でコロナ患者の情報を整理していた、ひと昔前の医療現場に逆戻りすることになる。

また、同じ関係者は、「1ヶ月前のピーク時に、この話が来たら検討の度合いが違った。しかし、今の減少傾向では、ひっ迫して大変でも、全数把握はやれる」と強調した。要は、岸田政権の「タイミングが悪い」ということだ。

軽症・中等症から“急変”目立つ

さらに、岸田首相の新たな方針表明後に、専門家からは「全数把握を見直した結果、健康観察を受けられなくなった人の体調が急変し死亡するリスク」について指摘する声があがったという。今の段階で、全数把握を止めるメリットはないということだ。

「最近の傾向を見てみますと軽症から突然亡くなる方、それから中等症から突然亡くなる方が目立ちます」小池知事は、25日の記者会見でこう述べるとともに、「重症者の方が亡くなっているというケースの方が、逆に少ない」として、軽症や中等症の急変の多さを指摘した。

第7波では、軽症・中等症から、容態が急変するケースが目立つという。
第7波では、軽症・中等症から、容態が急変するケースが目立つという。

オールジャパンなら・・・ そして夏休みが明ける

「オールジャパンで一律に見直すならわかるけど自治体ごとの判断、というのは中途半端」。別の関係者は、政府の方針に”反旗”を翻した背景を、こう説明する。東京都の感染者には他府県の感染者も多く含まれており、他県と全数把握のやり方が異なった場合も問題になるという。

しかし、全国一律で見直すなら、東京都も乗らざるを得ないだろう。小池知事が「当面」といったのは「国が見直しの新たな提案を出すまで」ということなのではないか。ただ、現状の「全数把握」を続けるとしても、ハーシスと電子カルテが結びついていないなど、電子化も効率化も進んでいない。

結局、他県の知事からも”異論”が続出したところで、岸田首相は、27日、「全国一律」で見直すことを表明した。

小池知事は、ハーシス入力のために、医師以外の人材を確保すべきと指摘するが・・・。
小池知事は、ハーシス入力のために、医師以外の人材を確保すべきと指摘するが・・・。

一方で、当の小池知事は、医療ひっ迫の原因とされる「ハーシス」入力を、医師が自ら行うのでなく、別の人を雇うなど工夫すべき、との考えを持っている。

しかし、ハーシス入力を任せることができる人材には、カルテの内容を理解し記入する医療知識が必要だという。かつ、デジタル面にも長け、その上で、患者の個人情報順守も求められる。ある医療関係者は「医療従事者の感染拡大で、ただでさえ人手が足りないのに、そんな人を探すのは難しい」と指摘する。

東京都の新規感染者数の7日間平均は、3週連続で減少しているが、新規感染者数は、第6波のピーク時を超える非常に高い水準が続いている。休み明けで仕事が本格化し、学校も再開し、来月1日からは都民の都内旅行を補助する「都民割」も始まる。感染者の再増加をにらみながら、感染状況をどう効率的に把握していくのか、課題は山積している。

(フジテレビ社会部・都庁担当 小川美那)