松井一郎代表の後任を選ぶ日本維新の会の代表選が8月14日告示され、足立康史衆院議員(国会議員団政調会長)、馬場伸幸衆院議員(共同代表)、梅村みずほ参院議員の3人が立候補した。

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日本維新の会にとって初めての代表選。松井代表は「後継指名」をしないと明言し、立候補者が出そろった暁には、支持する候補を明らかにすると話してきた。
すると、候補者が正式に出そろう告示日よりも10日早い8月4日に、馬場議員の支持を表明。さらに同じ会見の場で、他の候補者が「立候補する理由が分からない」と発言した。

松井代表(8月4日):
東色っていうのは何を出すのか。そこはちょっとよく分からないところはあります。もっと分からんのは足立議員とか。あともう1人いたけど…え?
(Q梅村議員?)
あっ、そうそう。分からん

この発言の前日の8月3日に、立候補の意思を示した東徹参院議員。
松井代表の発言の翌日である8月5日に出馬を断念した。

「創設者」である松井代表の「思惑」が見え隠れする、東議員出馬断念。
その背景と今回の「日本維新の会」代表選について、大阪府政担当の井上真一記者が解説する。

Q.松井代表の発言が先月と今月で変わっています。
7月13日には地方議員でも「我こそは!」という人が出てきてもらいたい。後継指名もしないとしていましたが、8月4日には「次の代表としては、馬場共同代表を応援したい」と話しました。それだけではなく、当時立候補の意思を示していた東徹参院議員に対して、「なんで立候補するのか分からない」というような言い方もされた。松井代表の発言が“ひょう変”したのには、何か理由があったのでしょうか?

井上記者:
松井代表の発言の背景には、“焦り”があったのではないかと思います。東議員の出馬が、自身が推す馬場共同代表の脅威になると、松井さんは感じたのではないかと思います

Q.松井代表はそもそも馬場議員を応援していたんですか?

井上記者:
そうです、馬場議員は国会で幹事長、共同代表として松井代表を支えてくれたと、党をまとめられるのは馬場さんだと厚い信頼を寄せていました。ただ関係者によると、もしかしたら馬場議員よりも東議員の方が、推薦人を集められるかもしれないというような噂が流れていたそうなんです。それが、候補者が出そろう告示日の10日前にも関わらず、松井代表が馬場議員の支持を表明した理由につながったのではないかと思います

Q.馬場議員の方が知名度はあると思うんですが、なぜ東議員がそこまで有力だったんですか?

井上記者:
ポイントは、維新の“頭脳”とされる浅田均参院議員や大阪府議団の一部の議員が東議員を支持していたことなんです。大阪府議団は、東議員の古巣になるわけです。一緒に大阪維新の改革をやってきたと、大阪府議の1人は「徹ちゃんはいい男だよ。一緒に大阪維新の改革やってきた。人柄もいい」とおっしゃっていた。
一方で、馬場議員は堺市議出身なんです。大阪府議の一部の議員からは馬場議員に対して「馬場さんは地方の方を向いていない。大阪の維新とそんなにコミュニケーションを取らない。大阪で実行してきた行財政改革を国会でも行うというのが維新なのに、それを馬場さんはやってないんじゃないのか」という不満の声が上がっていました

Q.大阪府議の一部が東議員支援に動いたというのが、松井代表が“焦った”理由なのではないかということなんですね。結局、もしかしたら、いい勝負ができそうだったのに、東議員が出馬を辞めたのは、なぜでしょうか?

井上記者:
東議員にお話を聞いた際、その理由については「最後は人間関係ですから。仕方ないんです。その一言に尽きます」とおっしゃっていました

Q.もっと深掘りされましたか?

井上記者:
なかなか「言いたいことは言えない」とおっしゃっていましたが、東議員自身が出馬すると、“国会議員”と古巣の“大阪の維新”が分断されてしまうと、維新の分裂を生む可能性があるのではないかということで、自ら身を引いたのではないかと取材を通して感じました

Q.国会議員は馬場議員を支持して大阪府議の一部が東議員を支持すると、そこに亀裂が入ってしまうかもしれないと。松井代表が「出るな」と言ったわけではないんですか?

井上記者:
東議員は、松井代表ご本人からは「言われていない」とおっしゃっていました

Q.代表選の仕組みですが、国会議員や地方議員など特別党員約600人も1人1票を持っているし、一般党員(2年以上党費を納めている党員)約2万人、ほぼ一般国民と言ってもいいわけですが、同じ1人1票を持っている。総理大臣を選挙で選びましょうという仕組みを提唱している維新ならではの方法だと思いますが、結果どうなるのか、代表選のカギはどこにあると井上記者は考えますか?

井上記者:
カギを握るのは“大阪票”です。約2万人の一般党員のうち、実は約1万2000人が大阪在住の方なんです。さらにほとんどの方が、大阪府議や市議など議員の紹介で党員になっていて、議員にひもづいているんです。大阪府議の一部の方は、東議員を応援していたわけです。
ということは、東議員を応援していた大阪府議にひもづく一般党員票は“浮いて”いますよね。この票を、立候補している足立議員、馬場議員、梅村議員の3陣営が奪い合うということになります

Q.議員を通じた票固めをしている陣営もある?

井上記者:
そうです。この議員が一般党員の名簿を持っているので、一般党員の名簿を入手して、そこから、投票の呼びかけを行うと

Q.そこが自民党的という受け止めをする人もいると思うのですが、固められて終わってしまうのですか?

井上記者:
ただ一方で、8月14日の告示日に大阪・なんばで開かれた3候補の演説会に来られていた一般党員の方にお話を聞いていますと「議員に言われたからと言って、無記名での投票ですし、自分の意思で投票先を決める」というようなことを話される方が多かったので、この約2万人、大阪であれば約1万2000人の一般党員票を完全にコントロールできる議員はいないのではないかとも考えられます

Q.確かに、大阪・なんばで話を聞いた一般党員の人たちは、「強い意志を持って3人の中からフラットに選ぶんだ」とおっしゃっていたから、その結果がどうなるのかっていうのは、神崎解説デスク、いかがでしょうか。

神崎博 解説デスク:
自民党の総裁選であれば、国会議員票と地方票で割合が全然違うんですけども、維新の場合は、約600人の特別党員と約2万人で、一般党員の方が数が多いわけなんです。なので、どうなるかはこれから選挙活動が進んでいくうちに分かってくるかもしれませんけど、ほんとにどうなるか分からないというところ。
ただ、最初に松井代表が「誰でも出てきてくださいよ」と言って、開かれた選挙ができるんやと、維新らしい選挙になるのかなと。初めての選挙なので、そうなるのを期待してたんですけど、結局、“実質後継指名”をして、一般党員の方からも「出来レースみたいや」という声もあったりするので、私個人としては、誰でもいろんな人が出てきて、闊達な議論をして、一般党員の投票で決まるというのがいいのかなと考えていましたが、ちょっと出だしからつまずいたなという気がします

投開票は、8月27日。
2週間弱の選挙戦が行われてきている。

(関西テレビ「報道ランナー」2022年8月15日放送)

関西テレビ
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