戦争を経験した人々の高齢化が進む中、その記憶をどのように継承していくかを模索する29歳の女性が鹿児島市にいる。終戦から77年となる2022年、この重い課題を女性とともに考える。

戦争体験者の生の声を次世代に

肝付友美さん:
日本が戦争していたことを、若い人は知識としては知っているけれど、そこに思いをはせる機会がなかなかないのが現実だと思う

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鹿児島市で開催された「戦争を語り継ぐ集い」で語るのは、鹿児島市の肝付友美さん(29)だ。
戦争を語り継ぐ集いは、戦争体験者の生の声を聞いて次の世代に継承しようと考える有志によって、ほぼ毎月開催されている。

肝付さんは、2021年からこの活動をサポートしていて、戦争体験者から聞いた話や、鹿児島県内の戦跡をインスタグラムに投稿しては、戦争の記憶を発信している。

インスタグラムで戦争の記憶を発信する肝付さん
インスタグラムで戦争の記憶を発信する肝付さん

肝付友美さん:
私が戦争について考えるきっかけは、明確なものがなくて、いろいろな人と触れ合う中で、自分の中の気づきと言いますか、戦争を体験した人がだんだん少なくなる中で、残された私たちは戦争について想像することしかできなくなることを危惧していて

肝付友美さん:
今のうちから考えて行動していくことが大切だと思っています

“戦争の記憶”に地域差も…継承に危機感

その取り組みをSNSで続けているうちに、同じ志を持つ同世代の友達ができた。埼玉県に住む篠崎亜緒衣さん(23)。

篠崎さんは、鹿児島と埼玉では戦争の記憶を伝えていこうとする熱意に大きな差があると話す。

篠崎亜緒衣さん:
(埼玉では)平和学習自体も、ほぼないと言っても過言ではないので、それをどうやって学校に取り入れてもらえるかなっていう、ゼロスタートだなっていうところが難しいところですかね

肝付友美さん:
じゃあ、小学生もきっかけがないですね

篠崎亜緒衣さん:
全くないですね。私自身、特攻隊という存在を大学生になるまで知らなくて、映画を見て知ったので

映画を見て「特攻隊」を知ったという篠崎さん(左)
映画を見て「特攻隊」を知ったという篠崎さん(左)

特攻という歴史的事実が子どもたちに伝わっていない地域が、日本にはある…。それは、肝付さんには衝撃的な話だった。

肝付友美さん:
ここまで平和学習に地域差が出てくるということは、今後、埼玉の人みたいに学習機会が奪われることが増えていって、やはり伝えられないことや継承されないことが危惧されますよね

篠崎亜緒衣さん:
そうですね。実際に起こり始めていることでもあるので、早急に何とかしないとというところはあります

戦争を知らない世代が記憶をつなぐために…

肝付さんは、特攻について改めて知ろうと、南九州市知覧町へ向かった。
軍指定食堂だった富屋食堂が、当時の場所に復元されている。

ここでは、死を目前にして悩み、苦しみ、そして無理やり明るくしていた特攻隊員たちの悲しいエピソードがいくつも紹介されている。

肝付友美さん:
言葉もないです。ただただ胸が痛くて

富屋食堂を切り盛りしていた鳥濱トメさんは、特攻隊員のお母さん代わりとなって、その世話に尽くした。
特攻隊員の数々のエピソードは、トメさんが家族に語り継いだことで、私たちに残された。

肝付友美さん:
今、こうやって私が感じられるよう形に残して伝えようとしてきてくれた皆さんがあるからこそ、戦争を全く知らない私が、この事実を知ることができたんだなと思って

トメさんを通じて、後世に残されている特攻隊員たちのエピソード。残さなければならない、伝えなければならない。思いを改めて強くする。

肝付友美さん:
きょう来させていただいた富屋食堂だったり、場所だったり、実際の生の声を聞く機会を設けるだけでも全然違うと思うんです。触れる機会をどんどん設けていけたらと思います

戦争を知らない世代が、戦争の記憶を人々につなぐ。そのためにはどうすればよいのか、明確な解答はまだ、肝付さんにもない。

ただ、その記憶を知ろうとする姿勢、知ろうとする努力を、29歳の肝付さんは持ち続けようとしている。

(鹿児島テレビ)

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