2020年に鹿児島県内で生まれた赤ちゃん1万1638人のうち、全体の10%にあたる1208人が、体重2500g未満で生まれた「低出生体重児」。このうち116人は1500g未満の「極低出生体重児」で、さらに42人が1000g未満の「超低出生体重児」だった。
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鹿児島市の母子健康手帳には、妊娠、出産、生まれてからの赤ちゃんの成長を記録できるようになっている。しかし、小さく生まれた赤ちゃんの中にはこの母子健康手帳の中に成長の記録ができないこともある。
![鹿児島市の母子健康手帳](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/b/5/700mw/img_b5c9315124e6bb1f3fbb9c888ad4449b207910.jpg)
小さく生まれた赤ちゃんの成長を記録する「リトルベビーハンドブック」の作成を望む、鹿児島のお母さんたちを取材した。
体重520gで出生 不安の中での子育て
山元理英さんは、雫ちゃんと暦ちゃん、2人の女の子のお母さん。妹の暦ちゃんは表情豊かで、時々おどけた表情でみんなを和ませる。
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しかし2019年4月、暦ちゃんが生まれたときの体重はわずか520g。「超低出生体重児」だった。
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山元理英さん:
すぐ保育器に入れて連れて行かれたので、見ることもできないし泣き声も聞けなかった。生まれた直後は「24時間がヤマです」とか「3日、5日と生きる確率は上がっていくけど危ない状態です」という話は聞いたので。死ぬのを待たないといけないのかな、というような…。産んでよかったのかなって。でも、暦の生きる力の強さがすごく感じられて
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手術や命の危険を何度も乗り越え、日に日に成長していく暦ちゃん。誕生から10カ月、ついに退院の日を迎えた。
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待ちに待った家族4人の生活の始まりだったが…。
山元理英さん:
病院の中だと、すぐに先生が駆けつけてくれて、いつでも診てもらえる安心感があったんですが、家に帰ってからはちょっとせきが出ると、大丈夫かなとか。夜中も寝息が聞こえないと、息してるかなとか
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不安の中での子育て。さらに山元さんを苦しめたのが…。
山元理英さん:
普通の母子健康手帳で、成長曲線のところが(気持ちが)へこんでしまって。身長は40cmから、体重は1kgからしか記入できないんです
母子健康手帳には、体重1kg未満を記録する目盛がなかった。
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山元理英さん:
書きたくなくなってしまう、見たくなくなってしまう。すごくつらかったです
ある日、山元さんはネットで小さく生まれた赤ちゃんの成長を記録できる手帳「リトルベビーハンドブック」を見つけた。
![福岡県の「リトルベビーハンドブック」](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/8/d/700mw/img_8d7705ec699861a75a0b85eef6b2d05e783096.jpg)
山元理英さん:
リトルベビーハンドブックが鹿児島にもあると思い込んでしまって。市役所に問い合わせたんですけど「鹿児島にはないですよ」と。誰か作ってくれないかなと思いながら…
自分を責めないで…母たちの活動
そんな時に病院で出会ったのが、高野裕子さん。476gの男の子を出産し、同じように不安と悩みを抱えていた。
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山元理英さん:
(リトルベビーハンドブックを)一緒に作ろうと声をかけてもらって、2021年10月に動き出しました
こうして山元さんたちは、リトルベビーサークル「ゆるり」を結成した。
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山元理英さん:
「私のせいで小さく産んでしまった」とか「私がもっと我慢すればよかったんじゃないか」とか、そういうお母さんたちの希望になれたらと思います
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山元さんたちが作成を目指すリトルベビーハンドブックの発祥は静岡県。静岡大学のNICU(新生児集中治療室)で過ごした赤ちゃんのお母さんたちが2011年に作成した。その手帳をグループ以外でも広く使いたいと、2018年に静岡県がリトルベビーハンドブックを作成し配布した。
赤ちゃんの成長を記録するページを見ると、体重は0gから目盛があり、発達についても、それぞれの子どもに応じて記録できるようになっている。
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また、先輩ママからのメッセージが書かれたページもある。
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鹿児島でもリトルベビーハンドブックを作成したいと、高野さんと山元さん、そして病院で知り合ったほかのお母さんたちにも声をかけ、活動を開始した。
鹿児島にも低出生体重児のための”手帳”を
2021年12月、鹿児島市の子育て交流施設「りぼんかん」で「ゆるり」主催の交流会が開かれた。
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リトルベビーサークル「ゆるり」高野裕子代表:
476gで生まれて。23週で生まれると歩けるかどうか、話せるかどうかもわかりませんと言われたんですけど…
暦ちゃんの父・山元啓資さん:
喜びよりも罪悪感というか。でもこの子のためにもポジティブな気持ちを持とうと
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3歳の女の子の母・山本鈴乃さん:
5歳までもつかどうかとか、10歳まで元気に生きられればいいと言われたので、最初はどうしようかなと思った時もあったんですが、今は泣くのも悲しむのもやめようと
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我が子への思いをみんなで共感しあう時間となった。
そして12月22日、鹿児島県庁。緊張した様子の高野さんたちのもとに、鹿児島県の塩田康一知事が姿を見せた。
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リトルベビーサークル「ゆるり」高野裕子代表:
鹿児島県にリトルベビーハンドブックを採用していただきたく、お願いに参りました
高野さんが塩田知事に手渡したのは、開封前のマヨネーズ。
リトルベビーサークル「ゆるり」高野裕子代表:
息子が476gで生まれたんですけど、パッケージまで入れるとこれがちょうどぴったり
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高野さんたちはリトルベビーハンドブック鹿児島県版作成への思いを直接、知事に伝えた。
リトルベビーサークル「ゆるり」高野裕子代表:
要望を伝えられる日を楽しみにしていたのでほっとしています
山元理英副代表:
まずは思いを届けられたこと、よかったと思います
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年度内の配布を目指し作成へ
お母さんたちの思いは届いた。2022年3月23日、鹿児島県議会で「リトルベビーハンドブック」鹿児島県版作成事業を含む、県の令和4年度一般会計当初予算案が可決した。
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5月には意見交換会が開かれた。NICUのある鹿児島県内3つの病院から、出産や治療に携わる医師や看護師、助産師などが集まったほか、「ゆるり」代表の高野さんも保護者代表として委員に加わった。
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リトルベビーサークル「ゆるり」高野裕子代表:
とても皆さん温かくて、私が想像していた以上に考えていただいて感激しました。「大丈夫だよ、みんな一緒だよ」という気持ちが伝わるものになればいいなと思います
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小さく生まれた赤ちゃんと家族のための鹿児島県版「リトルベビーハンドブック」作成が始まった。県の担当者によると今後、関係者から個別に意見を聞きながらハンドブックの素案を作成し、2022年度内には対象の保護者に配布できるようにしたいという。
小さな命の未来を優しく見守る、鹿児島県版「リトルベビーハンドブック」の完成が待たれる。
(鹿児島テレビ)