韓国・尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は就任から2カ月あまりで支持率が急落し、危険水域とされる30%を割り込んだ。BSフジLIVE「プライムニュース」では、韓国を本拠地とする旧統一教会の問題、米ペロシ下院議長のアジア各国歴訪の影響と併せ、日韓関係の今後を検証した。

ペロシ氏訪台に対する中国軍事演習、韓国は「見て見ぬふり」か

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反町理キャスター:
米ペロシ下院議長の台湾訪問に対する軍事的な反発を中国が始め、さらに拡大の模様。日本の抗議は、日本のEEZ(排他的経済水域)が今回の演習区域に入っている点。

佐藤正久 参議院議員 自民党外交部会長:
与那国島、波照間島という有人島の目の前での実弾訓練。日本政府は絶対にもっと強く抗議しないといけない。今回の演習を見ると、中国が台湾に対し軍事行動を起こすとき、台湾の東側、つまり日本側から攻撃する可能性が以前より高まっている。我々は今まで以上に敏感に反応しなければ。

反町理キャスター:
この件を韓国の人々はどう見るか。

金玄基(キム・ヒョンキ) 韓国・中央日報 東京総局長

金玄基(キム・ヒョンキ) 韓国・中央日報 東京総局長:
韓国の報道には、今回、ペロシ議長がわざわざ訪台し緊張関係をつくる必要があったのかというものも。中国に軍事演習の口実を与えてしまった。議会の人だから、アメリカ政府の総意を反映した戦略的な訪問と言い切れない部分もある。アメリカの11月の中間選挙では、下院で恐らく共和党が勝つ。つまりペロシ議長にとって最後のアジアツアー。個人的な理由があったのでは。

佐藤正久 参議院議員 自民党外交部会長:
韓国も見て見ぬふりをしている部分がある。オイルシーレーン(石油を運ぶ海上交通路)として100%台湾海峡に依存する韓国にとっても、台湾海峡の平和と安定は死活問題。汗をかくべき。

旧統一教会は「キリスト教の異端のひとつ」と無関心

長野美郷キャスター:
旧統一教会(世界平和統一家庭連合)をめぐる主な経緯。1954年、韓国で文鮮明(ムン・ソンミョン)氏が創設。1968年に反共産主義を掲げる「国際勝共連合」が発足。1980年代ごろから霊感商法や多額の献金被害が日本では社会問題化。2015年に「世界平和統一家庭連合」に名称変更。そして2022年7月、安倍元総理を襲撃した2世信者の山上容疑者が「安倍氏が教団と親しいと思った」と動機を述べ、政治との関係について報道が相次いでいる。教団が創設された韓国での報じられ方は。

金玄基 韓国・中央日報 東京総局長:
旧統一教会は、キリスト教の中で異端の性格を持つものとして韓国でもよく知られているが、日本のメディアで盛んに言われる社会的弊害の部分はあまり表に出てこなかった。関心があまりない状況。

反町理キャスター:
韓国はキリスト教が盛んな国。メインストリームでない少数の宗派のうちの一つという見方だと。ソウルに住む黒田さんの理解は?

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員:
基本的には金さんの言うとおり。韓国では人口の半分近くがキリスト教徒という説があるほどで、旧統一教会は異端、邪教的な評価になる。大っぴらに布教活動をやる雰囲気ではない。メディアも遠ざける雰囲気があり、結果的に信徒も少なく日本の半分ほど。

反町理キャスター:
日本が約60万人で韓国が約30万人。なぜ日本に多いのか。

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員:
日本で信仰が広がった背景の一つは日韓関係。日本は韓国に対して過去の歴史における原罪がある、という贖罪意識を刺激した。

反町理キャスター:
ニューヨーク・タイムズの記事では、文鮮明が「日本の信者たちは罪に染まっていると警告し、償いを支払うことで歴史上で祖先が犯した罪を回復するよう勧めた」と。

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員:
そう。布教上の戦略だが、特に若い世代に効果を発揮した。で、その問題と今日本で問題になっている自民党との関係には別の次元がある。この教団は60〜70年代の東西冷戦時代に国際勝共連盟を作り、反共活動を熱心に行った。これが冷戦時代の日本の自民党をはじめとする保守勢力と共鳴した。冷戦後の現在でも関係が一部繋がっていたというのが現状だと思う。

支持率急落の韓国・尹大統領 ”政治のアマチュア”感への失望

長野美郷キャスター:
韓国・尹大統領の支持率が急落。最新の世論調査で支持すると答えた人は、前週より4ポイント下がって28%。就任直後の5月2週目には52%でスタートしたが、6月末には支持と不支持が逆転。下落傾向が続き、2カ月あまりで危険水域と言われる30%割れに。支持しないという答えは68%。この要因は。

金玄基 韓国・中央日報 東京総局長:
韓国では3段階で見る。1段階目は国民の半分である50%割れ。2段階目は大統領選での得票率、今回は48.6%。3段階目が支持と不支持が逆転する点。今回珍しいのは、その1〜3段階目がほぼ同時に起きた。それほど急速な下落だが、懸念されるのは政策のミスなど外部要因がない中で起きたこと。国民感情が要因になっていると思うが、最初にあげられるのは人事。

反町理キャスター:
世論調査では、支持率低下の要因を人事とした人が21%でトップ。

金玄基 韓国・中央日報 東京総局長:
尹大統領は政治に入門して1年ほどしか経っていない。政治の世界での人材ツールが乏しく、自分が長くいた検察で一緒に仕事した人を側近の要職に使った。前政権と同じだという失望感がある。第2の要因としては、大統領の言葉。日本で言うぶら下がりの会見を初めて導入した。だが、荒っぽく国民の感情に触れるような言葉のミスが多かった。大統領候補のときは有権者へのアピールになった部分もあるが、大統領になれば国民は「大統領らしさ」を要求する。

反町理キャスター:
経験不足の問題はあるだろうが、大統領がアピールする上での知恵を秘書団や側近が出していないのでは。周りの責任は。

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員:
そのとおり。文在寅(ムン・ジェイン)前大統領は退任時の支持率が40%という異例の高さだった。演出の専門家が5年間ずっとそばにいて、決して大統領を悪者にさせない手練手管がうまくいった。尹大統領は今の韓国社会、特にインターネット・SNS社会に合ったことができていない。

佐藤正久 参議院議員 自民党外交部会長:
青木幹雄先生の「青木率」つまり「内閣と党の支持率を足して100あれば必ず勝つ」で考えれば、与党支持の38%と大統領支持の28%を合わせても60台。日本の政界で言えば末期的状況。しかも国会には解散がなく、あと2年間は野党が5分の3の議席を持つ。日韓関係でも我々は前のめりになってはいけない。尹大統領が仮に日本が飲める案を作ったとしても、国民を説得できるか。

尹政権は元徴用工訴訟の解決に動くが、日本側からは低支持率に懸念

長野美郷キャスター:
いわゆる元徴用工訴訟について、尹政権が立ち上げた官民協議会で検討中の「代位弁済」の案。中央日報によれば、日韓企業の自発的出資で基金を設立し、原告に賠償金を支払う。財源が足りない場合は韓国政府が出資。賠償金支払い後に被告の日本企業に請求。従来と何がどう違う案か。

金玄基 韓国・中央日報 東京総局長:
これは2段階目の措置。1段階目はまず、両国のさらなる関係悪化を止めるために現金化を止めること。韓国の外交部が大法院に対し、外交交渉が行われている問題なのですぐに現金化することはやめてほしい、という趣旨の意見書を出した。

佐藤正久 参議院議員 自民党外交部会長:
韓国の民事訴訟規則に「意見書を出すことができる」とあるのだが、原告側からは訴訟妨害に見え、対話の窓口を閉ざしてしまう逆効果もある。韓国政府も辛いと思うが、支持率が低い中で日本にすり寄っていると見られたとき、それを乗り越えられるか。またこの案の最後に、日本企業に請求するとある。受け入れられるはずがない。まだまだ先は長い。

佐藤正久 参議院議員 自民党外交部会長

黒田勝弘 産経新聞ソウル駐在客員論説委員:
長期的に考えると韓国側の変化はあり、それは評価すべき。日本側が一貫して言ってきたのは、1965年の請求権協定で基本的には解決済みであるから、今の問題は韓国政府が処理すべきということ。案には受け入れられない部分もあるが、韓国側はなんとかこの問題を処理したいというところまでは来た。また、前政権がほぼ反故にした慰安婦合意も、今の政権になって再評価論が出ている。一方にとっての100%の勝ち負けとはいかないので、譲歩を覚悟して流れを見て、なんとか合意にこぎつける。

反町理キャスター:
だがこのスキームで止まるか。際限なく広がっていき、ゴールポストがどんどん動いていくリスクは。

金玄基 韓国・中央日報 東京総局長:
今回の法的な解釈は、2018年の大法院によるもの。期限はそこから2021年末までの3年。これから訴訟を起こす人は棄却となる。それに、合意に至らず現金化が起きて関係がさらに悪くなり、微笑むのは誰か。それは韓国でも日本でもなく中国。広く見て、解決を前提としたアプローチをすべき。

佐藤正久 参議院議員 自民党外交部会長:
これは韓国が今までずっと繰り返してきた日本への甘え癖。前の文在寅政権のように、左派政権になれば司法も変わる。4年後にまた左派政権ができたとき、また同様のことが起きたらどうか。現金化を止める責任は韓国にあり、これぐらい対応できなければ国家として恥ずかしい。1965年に、日本が個人賠償も全部やると言ったにもかかわらず、まとめて払うから全部くれと言ったのは韓国政府。

BSフジLIVE「プライムニュース」8月4日放送

記事 150 BSフジLIVE プライムニュース

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