医療機関には救急搬送される患者が殺到し、受け入れが困難な状況が続いている。必要な人に必要な医療が届かない危機的な局面を迎えている、救急医療の現場を取材した。

医療体制は既に“崩壊”している

沖縄・豊見城市の友愛医療センターで、救急外来の患者の対応にあたる山内素直医師。

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友愛医療センター救急科部長 山内素直 医師:
今ある医療体制、既にもう崩壊し始めている、崩壊しちゃってはいるんですけども、これ以上悪くさせないで立ち直させるため、立ち直らせるために軽症な患者さんはあえて心を鬼にしてですね、お断りをせざるを得ない

友愛医療センターでは、新型コロナウイルスの患者を受け入れる県の重点医療機関として、新型コロナ専用の病床を20床確保している。
しかし、感染の急拡大で2022年7月22日から全てのベッドが埋まり、入院ができない状態となっている。

友愛医療センター職員:
すみません。今、発熱受け入れるベッドがなくて、コロナ病床も。一度他の病院あたってもらっても良いですか。すみません、お願いします

(Q.今の要請はコロナ疑いの人ですか?)
友愛医療センター職員:
そうですね。デイサービスで(感染者が)出たみたいで。濃厚接触者か、まだわからないみたいなんですけど

この日、新型コロナに感染した80代の女性が救急搬送されてきたが…

友愛医療センター救急科部長 山内素直 医師:
実は、あの患者さんは僕たちのとこに来る前に、救急隊が他の病院に受け入れ要請をかけたらしいんですね。そしたら、私達と同じことを言われると。やっぱ入院はできないから、絶対帰って頂くことになりますよと。家族がそれを拒否して、いや絶対入院させてほしいと言って、私達のところに要請がかかったんですよ。私達も前の病院と全く同じことを言って

友愛医療センター救急科部長 山内素直 医師:
(家族が)どこも受け入れてくれるとこないんだったら、もう入院じゃなくてもいいから診てほしいということで、それを了解の上で受けたって形なんですね

感染による人手不足…一部の医療に制限も

今や重症化リスクが高い高齢者や、基礎疾患を持っている患者も入院ができない異常事態。

県は受け入れる病床を増やそうと、医療フェーズを緊急フェーズに上げ、一般の医療を制限。コロナ専用の病床を確保するよう調整しているが、重点医療機関では医療従事者が感染するなどして、2022年7月28日時点で1199人が休職を余儀なくされ、人手不足に陥っている。

友愛医療センターでも1400人の職員のうち、約100人が出勤できず、不急の手術を延期するなど、一部の医療に制限をかけている状況だ。

友愛医療センター救急科部長 山内素直 医師:
病床そのものがあっても、患者さんのケアに当たるスタッフが今不足しているわけですから、本当にそれが実現可能かっていうところが一つ問題とか疑問に思うところと、もし重点医療機関が病床を増やして、コロナ診療に力を入れるとなると、コロナ以外の医療を重点医療機関ではない病院であったり、クリニックさんが診なければいけないと思うんですね。
ただ、今そういった病院とかクリニックでも、もう発熱患者さんが押し寄せていて、かなりクリニックも悲鳴を上げてるっていうふうに伺ってます

友愛医療センターでは、新型コロナだけでなく熱中症などで運ばれてくる患者も急増。2022年7月に入り、27日までに救急搬送された患者の受け入れが過去最多の516件に上っている。
救急隊員は…

救急隊員:
毎日右肩上がりで、通常の1.5倍の救急を1日にこなしている状況で。病院も1回で決まることが多いんですけれども、現状では2、3回断られるのが普通になっていまして、1回1回の救急搬送が長時間になっています

友愛医療センターでは対応が追いつかないとして、2022年7月27日までに193件の要請を断ったのが前年の10倍に上るなど、適切なタイミングで適切な医療が受けられない状況。

友愛医療センター救急科部長 山内素直 医師:
今の沖縄の状況を見ると、沖縄県民であろうが、観光客であろうが、本当に必要な医療が受けられない状況になっていて、救急車を呼んでもすぐには病院が決まらないし、誰にでも起こりえる急な怪我・病気であっても、それにすぐ対応してもらえるような医療機関がもうなくなってきてる

息つく暇もなく急患に対応している現場

一刻を争う救急医療の現場では、搬送されてくる患者への対応だけではなく、医師や看護師が現場に向かわなければならない状況もある。

友愛医療センター職員:
CPA(心肺停止)で良いですか

取材中にも、自宅で心肺停止になった人がいるとの通報を受け、ドクターカーで駆け付け対応。
その後も…

友愛医療センター職員:
何アレルギーですか。プラスチックアレルギー、今は嘔吐と呼吸苦

友愛医療センター職員:
ドクターカー、今からアナフィラキシーの現場に向かいます

アナフィラキシーショックを起こした患者の元へ急行するなど、息つく暇もない。

社会とのギャップ感じながら…しわ寄せ来ている救急医療の現場

友愛医療センター救急科部長 山内素直 医師:
やっぱり今が一番つらいですね。圧倒的な患者の数とスタッフの欠員と、コロナ診療だけじゃなくて、救急医療もあおりを受けて逼迫しているっていう状態で、どちらの両立も考えなきゃいけないっていうので、かなり厳しい絶望的な状態

こうした状況の中、政府は新型コロナと共存する「ウィズコロナ」を見据えて、新たな行動制限は行わない考えを示している。
そのシワ寄せが来ているのが、命を守る救急医療の現場だと山内医師は訴えている。

友愛医療センター救急科部長 山内素直 医師:
一般診療も救急体制も、ある程度犠牲にしていいっていう前提なんですかっていうのを、ちょっと問いたいなと思っていて。ウィズコロナでも良いかもしれませんが、今現実として重症のコロナ患者さん、重症でないコロナの患者さんも病院に行けない、救急隊が現場で困って何件も病院に受け入れ要請をして何件も断られる、そういう社会になってしまってるんですよね

友愛医療センター救急科部長 山内素直 医師:
なってしまったことはどうしようもないと思うんですけども、何とか止めよう、これ以上悪くなることを止めようとすることはできると思うんです。自分たちの大切な医療体制とか、社会を守っていく、経済も守っていく、取り組みについて考えなきゃいけないんじゃないかなと思います

一人一人の命を守る為、日々困難に立ち向かう医療現場。医療従事者は「ウィズコロナ」へと向かう社会とのギャップを感じながら、危機感を募らせている。

(沖縄テレビ)