フェンシングの街としてアピールを続ける静岡・沼津市。この沼津市を新たな拠点に加え、活動しているのが脇田樹魅選手だ。沼津を選んだ理由は、街ぐるみの取り組みがあった。

フェンシング日本代表選手が拠点を沼津に

フェンシングの練習に励む脇田樹魅選手(23)。フェンシング女子サーブルの日本代表選手だ。
脇田選手は小学5年生からフェンシングをはじめ、年代別のアジア大会で優勝したほか、全日本選手権で3位の成績を収め、現在 日本代表として世界を舞台に活躍している。

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ほとんどのトップ選手が東京を拠点に活動するなか、脇田選手は2022年4月から東京と沼津の2つの拠点での活動をスタートさせた。

トップアスリートの職場は信用金庫

沼津市に本店を置く沼津信用金庫。脇田選手は、フェンシングの活動を中心にしながら、週1回勤務するいわゆる「アスリート採用」で2022年春に入庫した

脇田選手:
主に自分の大会の結果報告や次の遠征の予定表の作成、あとは経費の計算などをしています

この日は、社内向けに5月の海外遠征の結果をまとめた報告書を作成していた。フェンシングは得意でも、「パソコンは苦手」と話す脇田選手。先輩に教えてもらいながら、見やすくわかりやすい報告書作りを進めていた。

沼津信用金庫・岡正浩副部長:
フェンシング自体あまりわかっていない職員も多いので、みんなにわかりやすく伝えられるようなものができればいいと思うので、協力して作っていきましょう

アスリート採用で地域の活性化を

脇田選手の活動を全面的にバックアップしている沼津信用金庫。初めて、スポーツ活動を中心としながら正社員として働く「アスリート採用」を行った。地域の活性化につながることが、大きな理由だ。

沼津信用金庫・鈴木俊一理事長:
脇田選手は九州出身ですが沼津に住んで、ここを拠点に活躍したいという思いがあったので、脇田選手の活躍が組織も活性化しますし、沼津市の活性化にもつながるのではないかと大いに期待しております

脇田選手:
アスリート採用が初めてで不安もありつつ、自分がチャレンジしたい気持ちが大きかったので、すごくありがたく感じています。正社員として雇ってもらったからには、沼津市そして信金に貢献できるように努めていきたいと思っています

最もダイナミックな「サーブル」

フェンシングの3つの種目の中で、脇田選手が専門とするサーブルは、「突き」に加えて「切る」動作が入る。得点が入る有効面は上半身のみ。豪快な剣さばきが魅力だという。

脇田選手:
初心者で剣を持っても、ランプを付ける(得点する)ことができる。掘っていけば掘っていくほど難しいんですけど、簡単に楽しさを味わえるスポーツだし、フェンシングの3種目の中でも一番ダイナミックな動きで、3Dな動きがサーブルの魅力かなと思います

恩師の存在が決め手に

脇田選手が沼津市を拠点に選んだ大きな理由が、かつての恩師の存在があった

脇田選手を指導するのは、沼津市職員の長良将司(ながらまさし)さんだ。
長良さんはフェンシングで過去2度オリンピックに出場し、3年ほど前から沼津市職員としてフェンシングの普及のためのイベントや、コーチとして選手の育成に取り組んでいる。

脇田選手が東京で本格的にフェンシングを始めた中学生の頃、コーチとして指導していたのが長良さんだった。

脇田選手:
私がフェンシングを始めたきっかけが、長良コーチに声をかけてもらい、スカウトという形で東京に呼んでもらっいました。そこからフェンシングを始めて、中学1年~3年まで初心者の私を育ててくれた

フェンシングの街づくりを進める沼津市。
2021年6月には、国内最大級のフェンシングの練習場「F3BASE(エフスリーベース)」が設置され、日本代表合宿が何度もおこなわれている。

長良さんは、沼津でトップ選手を強化・育成することが、沼津での競技人口の増加とレベルの底上げにつながると考えている。

沼津市職員・長良将司さん:
(子供たちの)あこがれの存在の脇田選手が沼津に来て、剣を交えている姿を見ると、すごく感慨深いし、脇田選手がフェンシングを始めたころと同い年の子供たちが一緒にやっているというのはすごくいいなって思っています

"子供たちのあこがれ”が更なる高みへ

指導する長良さんからみた脇田選手の強みは、高い運動能力とメンタルの強さだ。

沼津市職員・長良将司さん:
脇田選手の運動能力は非常に高く、そこから生み出されるパワー・スピードは世界に通用すると思っています。あとは勝負強いメンタル的なところも、小中学生のころから培ってきたものがあると思うので、非常に期待できると思います

脇田選手のトップレベルの技術が、同じ場所で練習する子供たちにも良い影響を与えている。脇田選手もかつて長良さんから指導してもらったように、子供たちにアドバイスを送っている。

脇田選手:
ガンガンやるよりは、一つ一つ戦術を丁寧に組み立てて、考えてやっていった方が絶対伸びると思うよ。技術はちゃんとあるから頑張って

練習生:
ありがとうございます

同じ場所で練習するトップアスリートの存在は、子供たちの大きな励みとなっている。

高校生:
スピード感とかもあって技術もすごくしっかりしていたので、私もそんな選手になれたらいいなって思っていました

小学生:
あこがれの人がとても近いところに来てくれるので、目指すところがわかりやすいからとてもいいと思う

新たな場所で、様々なサポートを受けながら、世界に挑戦する脇田選手。今後の目標は…

脇田選手:
最終的な目標としてはオリンピックでメダルを取ることで、次のシーズンからも1大会ずつ細かく目標を立てて、着実に達成できるように頑張りたいと思います。静岡県・沼津市・沼津信用金庫が全面的にバックアップしてくれているので、自分のためだけじゃなく、サポートしてくれている人たちのために頑張ろうっていう気持ちになっています

沼津市を新たな拠点に、さらなる飛躍を目指す脇田選手。パリオリンピックでの活躍に期待が膨らむ。

(テレビ静岡)

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