学校の中で孤立している子どもを把握するのは容易なことではないだろう。経験豊富な先生であっても多忙な校務を行う中で、児童・生徒の微妙な関係を見落とすことは少なくないと思う。

こうした中、NTTコミュニケーションズは、クラス内での孤立状況を把握するため、児童・生徒同士の関係性を見える化するシステムを開発した。「スクールタクト」という授業支援システムの中で、子どもたちが行っているコミュニケーションのログを分析し、児童・生徒の関係性や学級の状態を可視化するものだ。

「スクールタクト」はPCやタブレットで先生が課題を配布すると、児童・生徒は答えを書き込むことができ、それをみなで共有し、コメントやいいねを付けることができる。その行動から誰とやりとりしているかなどを分析。先生は、関係性を見える化することができる。

こちらが児童・生徒の関係性を可視化した図だ。この場合、“生徒16”が孤立傾向にあることになる。

児童・生徒のコミュニケーションログを可視化した図(画像提供:NTTコミュニケーションズ)
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先生はこのシステムを使って、どの子どもが孤立しているかを把握し、登校拒否やいじめを未然に防ぐことにつなげてもらうというわけだ。

子どもの関係性などを可視化し“よりよい学級づくり”を支援

現在、試験的に導入している教育機関もあるようだが、実際の効果はどうなのか?

NTTコミュニケーションズビジネスソリューション本部スマートワールドビジネス部スマートエデュケーション推進室の担当者に詳しく話を聞いてみた。


――孤立化する児童・生徒を把握するシステムを詳しく教えて

「スクールタクト」という授業支援システム上で子供たちが行っているコミュニケーションのログを分析し、児童・生徒の関係性や学級の状態を可視化するものです。

「スクールタクト」ではPCやタブレットで先生が課題シートを配布し、児童・生徒が自由に回答を書き込むことができます。先生は児童・生徒の回答状況をリアルタイムで確認できますので、思考の過程を把握したり、手が止まっている子のフォローができます。

児童・生徒はお互いのシートを見合うことで自分とは異なる発想に触れ、考えを深めることができます。また、お互いにコメントし合ったり、「いいね」というリアクションを送ることができます。このようなスクールタクト上でのコミュニケーションや、閲覧の行動ログを分析しています。

児童・生徒が回答を書き込んだシートの一覧(画像提供:NTTコミュニケーションズ)

クラス内での児童・生徒同士の人間関係やそれにまつわる感情は、先生によるヒアリングやアンケートでも把握することはできます。ですが、児童・生徒が本音を言ってくれない可能性もあります。

一方で、児童・生徒同士のコミュニケーションや行動はお互いの関係や感情を反映することがあります。ちょっとした時の言い方やしぐさによって、仲良さそうだなとか、喧嘩してそうだな、という人間関係が見えるようなイメージといえば、わかりやすいのではないでしょうか。可視化されたデータと普段先生が見ていらっしゃる児童・生徒ひとりひとりの様子を照らし合わせていただくことで、よりよい学級づくりのご支援ができるのではないかと考えています。


――このシステムはいつ開発された?

「スクールタクト」という授業支援システムそのものは以前からあるのですが、そのシステム上での行動ログを使った機能として2020年から開発を始めています。


――どのようにして孤立化していることがわかる?

行動ログの分析には、特許出願中のアルゴリズムを使っています。そのアルゴリズムで、スクールタクト上でのコミュニケーション活動に基づき、児童・生徒をいくつかのグループにグルーピングします。グループに属さない、またはほかの児童・生徒と関係性が薄い状態を孤立として表現しています。

この図では、クラスに大きく3つのグループが存在することを示している(画像提供:NTTコミュニケーションズ)

先生が把握する児童・生徒の関係性と照らし合わすことが重要

――他の子どもから孤立していることがばれることはない?

このシステムは児童・生徒には見えないものになっています。先生の立場でないと、分析結果などが見られない仕組みとなっています。


――このシステムを逆手にとって、あえて孤立生徒にリアクションするようにしてもわかる?

スクールタクトから得られるデータのみにとらわれず、先生が把握している児童・生徒の関係性と照らし合わせていただくことが重要であると考えています。

先生方は、日々、クラス内の雰囲気や児童・生徒たちの関係性を見守っています。そこから把握している情報と、スクールタクトの分析結果に乖離がある場合、不自然さに気付いていただけるのではないでしょうか。

例えば、日常生活で仲睦まじく遊んでいる様子がないのに、スクールタクト上でだけリアクションが多い場合等が該当します。

スクールタクトは、子どもたちが安心して学校生活を送れるようサポートするツールの1つですので、先生方が日頃見ていらっしゃるクラスの様子と照らし合わせながらご活用いただきたいと考えています。


――孤立化の判断基準はコミュニケーションの有無以外にもある?

特許出願中なので詳しくは述べられませんが、大きな意味でのコミュニケーションに関する行動ログを扱ってアルゴリズムを開発しています。

孤立傾向のある児童・生徒への対応は?

――孤立化したことがわかった後、先生たちはどう対応していく?

児童・生徒それぞれの個性に応じた対応が第一ですが、孤立傾向のある児童・生徒がクラス内でコミュニケーションしやすい状況を作っていただくのがよいのではないかと考えています。

例えば調べ学習をするための班分けを例に出すなら、孤立傾向のある児童・生徒が一番なじみやすい相手が誰なのかシステムにより可視化されますので、その情報に基づき班分けをしてもらいます。そのような対応を取ることで、孤立傾向のある児童・生徒がクラス内でコミュニケーションしやすい状況を作る、といったイメージです。


――例えば、いじめを防げた成功例はすでにある?

まだ研究フェーズなので、いじめを未然に防げたと言い切れるまでのエビデンスはありませんが、行動ログ分析の確からしさを示す事象としては、孤立傾向があると判定された児童・生徒が、数カ月後に不登校になったというようなことが観察されています。


――スクールタクト以外にも孤立やいじめを防ぐシステムはある?

クラス内で孤立傾向のある児童・生徒を可視化する「WEBQU」というサービスもあります。児童・生徒がPCやタブレットでアンケートに回答することで、学級に対する満足度を測ることができます。

最大の特徴として、回答の結果が即時に反映されるため、いじめや不登校の兆候に対して、迅速な対応が可能となります。NTTコミュニケーションズが提供する「まなびポケット」からご利用いただけるサービスとなっており、約1200校の学校で導入いただいています。(※2022年7月現在)

「WEBQU」イメージ(画像提供:NTTコミュニケーションズ)


児童・生徒の孤立化を把握できる便利なシステムのようだが、担当者が言うように、スクールタクトのデータだけにとらわれず、先生自身が知る児童・生徒の関係性と照らし合わせることが重要だろう。こうしたシステムを上手に活用して不登校やいじめの防止につなげてほしい。

記事 4307 プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。