長野県千曲市で教会を運営するアメリカ出身の牧師とその妻が、この春から「こども食堂」を始めた。両親から虐待を受けて育ち、教会に救いを求めたことがきっかけで牧師になったというロビンズさん。移住した千曲市で子どもたちにとって温かく感じる「居場所づくり」に取り組んでいる。

笑い声と笑顔がうれしい
十字架が掲げられた建物から聞こえてきたのはー。
♪You are my all in all:
イエス様 神の子羊よー
賛美歌の流れをくむワーシップソング。
千曲市の戸倉キリスト教会。およそ20人が日曜礼拝に訪れていた。

妻・ナオミさん(62):
神様に助けてくださいと祈れば、神様は100%許してくれます
キリスト教の教えを説く牧師のダビデ・ロビンズさん(64)。
通訳は妻のナオミさん(62)。

二人は2023年4月から教会とは別に新たな取り組みを始めた。
月2回のこども食堂「居場所カフェ オリーブ」だ。
ダビデ・ロビンズさん(64):
忙しいですけど、楽しい
妻・ナオミさん(62):
笑い声と笑顔と「おいしい、おいしい」と食べているのがすごくうれしい
千曲市に移住して33年。二人で始めた地域への「恩返し」だ。

両親から虐待…牧師の言葉が希望に
テキサス州のヒューストンで生まれたダビデさん。
牧師になったのは18歳の時、教会に救いを求めたことがきっかけになったと言う。
ダビデ・ロビンズさん(64):
正直に言うと、両親から虐待を受けて育ちました。牧師先生が「問題を抱えているのなら、神様があなたを助けてくれる」と言ってくれて、もう死のうと思っていた時だったので、それを聞いて希望を得ました。とても助かって、すごく素晴らしい経験をしたから、それを多くの人と共有したいと思いました

ナオミさんは、日本で活動していたアメリカ出身の牧師夫婦の娘で、神戸で生まれた。
二人は、進学したカリフォルニアの神学校で出会い、その後、結婚。
1985年、ナオミさんの両親が運営していた富山県の教会を手伝うため来日し、ダビデさんも牧師となった。

千曲市に移住33年 地域に恩返し
その後、知人の紹介で訪れた旧戸倉町が気に入り1990年、夫婦で移り住んだ。
ダビデ・ロビンズさん(64):
田舎大好き、でも本当の田舎じゃない。(住んでいる)人たちは親切、気持ちがよく大好き。ここが自分の居場所、帰ってきた気持ちになります
妻・ナオミさん(62):
全部で4つ、牧師がいないところを案内されたが、他のところは「ここじゃない、違う」って感じ。戸倉に入ってきたら「ここだ」って感じたというか、導かれたと言ってもいい

地域に受け入れられ、「宣教」をしてきた二人。
何か恩返しができないかと考えていたところ、信者の一人から「こども食堂」の活動を聞き、すべきことが見つかったと言う。
妻・ナオミさん(62):
大人に頼ったり、聞いたりしながら、自分の場所で自分らしくいることがとても大事。こども食堂って話を聞いた時に「あ、これじゃない」と思って開きたいなと
ダビデ・ロビンズさん(64):
(地域に)お返しができるのがすごくうれしい。楽しいし、機会が与えられたことに感謝です

「幸福をもたらす贈り物」
6月14日、戸倉創造館―。
5回目の開催を迎えた「居場所カフェ オリーブ」。市からの支援金とボランティアの協力でこの4月から月に2回、市の施設で開いている。
この日のメニューは、ナオミさん特製の「ミートソースパスタ」と「ベーコンときのこのパスタ」。

子ども:
すごくおいしいです
集まった子どもたちはおよそ70人。
ダビデさんもエプロン姿となり、忙しくテーブルを回っていた。
ダビデ・ロビンズさん(64):
注文したいですか?ミートソースあります。ベーコンときのこ、どちらがいい?

子ども:
ベーコンときのこ
ダビデ・ロビンズさん(64):
おー、いいね
ちなみに「オリーブ」は「幸福をもたらす贈り物」として聖書に登場する。
二人は聖書の教えと、こども食堂を重ね合わせている。
ダビデ・ロビンズさん(64):
今の子どもたちは食べ物だけでなくて、いろいろ困っている部分があると思います。心が乾いている人を助ける教会の働きと、こども食堂の働きはある意味、似ています

温かく感じられる「居場所」づくり
食べ終わったら、宿題をしたり、ゲームをして遊んだりと子どもたちは自由な時間を過ごす。
小学2年生:
ご飯食べられたり、遊べたり、ゴロゴロできたり、鬼ごっことか、いろいろあって楽しい
小学3年生:
みんな勉強とかできるし、遊べて楽しい場所。友達と一緒にできるから楽しい

保護者はー
保護者:
仕事終わりとか児童館終わりでも友達と集う場所があるので、それもおいしいご飯がいただけるので、私たちも子どもたちも、とてもありがたい憩いの場だと思っています
保護者:
すごくいいなと思って。これからもあればいいなと思いながら(子どもが)大きくなってからも、ぜひあってほしいな

子ども:
(再来週)絶対、来るの、オリーブに
ダビデ・ロビンズさん(64):
帰り、気をつけてー。バイバーイ
子どもにも、保護者にも好評の「居場所カフェ オリーブ」。
二人の思いは教会を越えて地域に届き始めている。
妻・ナオミさん(62):
とにかく子どもたち一人一人が、大事にされていると分かってほしい。それだけかな
ダビデ・ロビンズさん(64):
温かく感じられる、自分の「居場所」だと感じられる場所。お腹も心も満たされる場所になってほしい。子どもは未来だから

(長野放送)