私がお伝えしたいのは「北朝鮮への強制送還をとらえた10枚の画像」です。
韓国政府は3年前、脱北を試みた男性2人を強制送還し、当時の文在寅政権は本人たちが送還を希望したともとれる説明をしていました。ところが新たに公開された画像では抵抗する2人を無理矢理連行する様子が明らかに。現在の尹政権は「反人道的」と非難しています。
ポイントはこちら。「韓国揺るがす画像公開、狙いは前政権の責任追及か」注目です。【報告:FNNソウル支局・熱海吉和】
~ポイント解説~
今回韓国統一省が公開したのは、漁船で脱北を試みた男2人が韓国当局に捕まり、北朝鮮側に引き渡された際の写真です。
韓国政府は、国内法に基づき亡命の意思を示した北朝鮮の住民を保護していて、2人も保護を要請したものの、男らは、同じ船に乗っていた同僚16人を殺害し、遺体を海に投げ捨てていたことがわかり、当時の文在寅政権は「凶悪犯は保護対象ではない」「真剣な亡命意思はなかった」などとする調査報告書を国会に提出。2人の身柄を北朝鮮に引き渡していました。男らはその後「反逆罪」で処刑されたと見られています。
しかし、事件からおよそ2年8ヶ月経って公開された写真から明らかになったのは、当時の説明とは異なるものでした。身柄引き渡しに抵抗する男を、複数の韓国当局者で取り囲み、力ずくで連行する様子が写っていたのです。政権交代を果たした保守政権が前・文在寅政権の対応が北朝鮮におもねった人権を無視していたものだったと突きつけた形となりました。
韓国大統領府の姜仁仙報道官は「引き渡されないようもがく姿は、亡命の意思がなかったとする文在寅政権の説明とあまりに違う」とした上で、「国際法と憲法の両方に違反した反人道的な犯罪行為だ」と批判し、真相を究明する考えを示しました。
この事件を巡っては、2人の送還に関わったとして、今月6日、韓国の情報機関・国家情報院がみずから当時のトップ徐薫元院長を職権乱用などの疑いで告発。13日には検察が家宅捜索に入りました。このほか、一部の市民団体が「亡命意思が全くなかったとする当時の発表は虚偽だった」として文在寅前大統領の告発に踏み切るなど、前政権への風当たりは強くなりつつあります。
韓国では、軍事政権の流れをくむ「保守」と、民主化運動の出身者らを中心とする「革新」との政治対立が激しく、政権交代のたびに前政権の不正が徹底的に追及され、歴代の大統領の多くが逮捕・収監されてきました。敵対勢力を徹底的に追求する「韓国政治の伝統」がまた繰り返される可能性があります。