「“暗証番号”と教えられATMに入力した数字が“振込金額”で、数十万円をだまし取られた」
被害にあった女性が還付金詐欺の巧妙な手口を語ってくれた。
静岡県でも頻発している特殊詐欺は、被害者の7~8割が65歳以上の女性で、警察はこの層を対象に対策を始めている。

被害の8割…65歳以上の女性は注意

5月23日、静岡市清水区で開かれた特殊詐欺の対策会議。

清水警察署の特殊詐欺対策会議
清水警察署の特殊詐欺対策会議
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清水警察署生活安全課・鈴木武課長
65歳以上の女性が約8割以上、特殊詐欺の被害にあっている傾向がみられるので、緊急に今までにない対策を考えていかなければならない

参加したのは地域安全推進員の女性10人だ。全員が65歳以上で、県警が今回の対策のターゲットに掲げている年代だ。

警察担当者
皆さん(詐欺の電話に)すぐに気づいたりするのかな、どうですかね

参加者
午後2時や3時の銀行が終わりそうな時間帯に電話があると、急がせるから余計(詐欺に気づかない)というのがある

別の参加者
人に知られたくないというとおかしいけど、「(息子や孫が)悪いことを何かしましたよ、(お金を)落としましたよ」と電話がかかってくると、近所に相談する前に自分で何とか解決してやらなければという気持ちになる

2021年に静岡県で発生した特殊詐欺は374件で、このうち65歳以上の高齢者が被害にあったのは341件と9割以上だ。 高齢者のうち8割は女性で、65歳以上の女性の被害は275件と全体の7割だ。

対策会議が開かれた清水警察署は、2021年に発生した特殊詐欺が県内28署で最も多い。40件のうち34件が65歳以上の女性で、清水署管内に限ると65歳以上の女性の被害は全体の85%だ。

「詐欺の電話は皆さんの家にも」

清水警察署生活安全課・飛田貴光警部補
世間話でも結構です。「特殊詐欺が流行ってるから気をつけようね、電話がかかってくるから、怖いからすぐに誰かに相談しようね」という話をしてもらうことで、いろいろな高齢者の方たちに広まっていくのではという期待はあります

大切なのは、自分たちの世代が被害にあいやすいという気づきを与えることだ。

注意を呼び掛けるチラシの配布
注意を呼び掛けるチラシの配布

チラシを渡す女性
今ちょっと詐欺事件が多いので、65歳以上の女性が多いそうです

受け取った女性
女性が多いのはなぜだろうね

家族や友人など、身近なところから広めていってもらうことが警察の狙いだ。

受け取った女性
(周りに)伝えようと思います。8割はショックですね。数字で出ると「危機感をもたないといけない」と思いますね

清水署・飛田警部補
まず意識してもらいたいのは、詐欺の電話は必ず皆さんのもとにかかってくる可能性があるということです。皆さん、自分のことではなくて、離れた場所の話と感じているところもありますが、特殊詐欺は身近に潜む危険ということを意識してほしい

 被害にあった女性は一人暮らしか、家族がいても電話がかかってきた時は一人で家にいたケースが多いということだ。

6桁の暗証番号のつもりが…数十万円の振込に

静岡県警は、2021年7月に県西部の女性宅にかかってきた還付金詐欺の電話の音声をHPで公開し、注意を呼び掛けている。

犯人からの電話
もしもし、市役所年金保険課のカミヤと申します。本日こちらからお送りさせて頂きました“累積保険”の払い戻し申請書について、ご連絡をさせて頂いています

実際の詐欺電話をもとに静岡県警が作成
実際の詐欺電話をもとに静岡県警が作成

なぜ電話を信じ、お金をだまし取られてしまったのか。
2022年5月にこの手口の被害にあった、清水区に住む66歳の女性に話を聞くことができた。

被害女性に取材する山口順弘記者
被害女性に取材する山口順弘記者

被害にあった女性
12時半過ぎに「市役所の支援課のものです」と電話がありました。「介護保険料の過払いがあり、お返ししたいのですけれども」と言うんです。3万5000~6000円の還付があるというので、「あ、そうなんですね」とすっかり信じ込んでしまって

職業柄、市役所の職員と仕事をする機会があった女性は、同居する夫とともに電話を信じ込み、指定された金融機関に向かった。
そしてATMの振込金額に、犯人から「暗証番号です」と言われて6桁の数字を入力した。金額にすると数十万円だ。

被害にあった女性
「(ATM画面の)“振込”を押してください」というので。“振込”を押したら(自分の口座から)引き落とされてしまいますよね。でも信じ込んでたので、「そういうものなのかな」と思い、言われるままに押してしまって

注意を促すポスターがあったのに

警察や金融機関はポスターなどを張って、携帯電話を操作しながらのATMの利用に注意を呼び掛けているが、女性の目には入らなかった。

注意を促すATM内のポスター
注意を促すATM内のポスター

被害にあった女性
その時はスマホを片手に(ATMを)やっていて、「よく詐欺(の手口)にあるやつだな」と思ったんですけど、信じ込んでいたので、もし他の人が注意に来たら「これは大丈夫です」と言おうと思うくらい信じていた

ATMの利用明細書を見て被害に気づいた女性だったが、その時にはすでに約75万円がだまし取られていた。

被害にあった女性
まさか自分がひっかかると思っていなかったから、(被害にあう時は)「こんなもんなんだな」と思いながらも、だんだん反省というか、落ち着いて市役所に確かめれば良かったなと、しばらく落ち込んでいました。(犯人は)そのお金を使って楽しいんだろうか、何に使っているのかなとか思ったり。悔しさもあるけど、だました方はどうしてるんだろうという感じですよね

これが還付金詐欺の手口だ

女性が被害にあった還付金詐欺の手口を確認しておこう。 

まず市役所や区役所の職員を名乗り、保険料が戻るなどと電話がある。
そしてATMへ誘導し、指定した番号に電話をするよう伝えてくる。
ATMの前で電話をすると、キャッシュカードを差し込んだ後に、「保険料を振り込むので“振込”ボタンを押して下さい」と指示してくる。

次に振込金額を入力する欄に、「暗証番号」や「会員番号」とだまして「498795」などと金額を入力させてくる。犯人は事前に口座の残高を確認したうえで、一度に振り込むことのできる上限の金額を入力させる場合が多い。
そして最後に「代理店から振り込ませる」と伝えて、犯人の銀行口座を振込先に入力させ、お金をだまし取る手口だ。

警察は知らない番号からの電話には出ないなどの対策を呼び掛けている。

静岡県内では2022年1月から5月までに、特殊詐欺は161件(前年比+13件)発生し、被害金額は約3億3000万円(前年比+1億3800万円)と、前の年と比べ件数・被害額ともに増加している。

特殊詐欺の電話は自分のところにもかかってくると意識し、知らない番号の電話には出ないことや家族や警察に相談することが、被害を防ぐことにつながりそうだ。

(テレビ静岡)