エンゼルス大谷翔平(28)が7日、マーリンズ戦に先発し7回を2安打1失点10奪三振の好投で8勝目を挙げた。野球解説者の野村弘樹さんは、この試合で大谷の巧みな投球術を見たという。

第6の球種スローカーブ

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それは4回、サンチェスへの初球、109キロのスローカーブだった。大谷と言えばこの試合でも三振を奪った160キロを超える直球が持ち味だが、野村さんが対局ともいえるスローカーブにも注目したのには大きな理由があった。

「もう1つ投球の幅があることを相手に見せつけるために意図して1球投げたんだと。もう1つ遅いボールがあるということは球種が1つ増えたことになる。相手からするとものすごく邪魔なボールになってきます」

今季、ストレート、スライダー、スプリット、カーブ、カットボールと5つの球種を投げている大谷。そこに第6のボール、スローカーブが加わることで、相手打線全体が混乱。実際にスローカーブを見た直後の打者は初球の161キロに振り遅れた。

「カメレオンピッチング」

「110キロ前後のカーブ、160キロのストレート、その差50キロ。カメレオンピッチングですね。160キロ以上のストレートに感じると思います。出どころも違うし、そこからさらにそれをイメージしていると、ストレートはあっという間にキャッチャーミットについてしまう」

まさにカメレオンのように変幻自在に緩急を操り、大谷は三振の山を築いていた。

握り方から考察 大谷翔平の投球

また、米誌「TIME」公式SNSの「43秒で大谷翔平のように投球する方法を学ぶ」と題した動画で、知られざる各球種の握り方を披露し大きな話題となった大谷。なかなかお目にかかれないストレート、スプリット、スライダー、カットボール、カーブの全5球種の握り方に果たしてどんな特徴があるのだろうか?握り方の特徴を野村さんに聞いた。まず鋭く落ちるスプリットの握りについて野村さんはこう解説する。

「見る限り特別な握り方はしていないですね。スプリットの握りとしてはオーソドックスな握りだと思いますね」

縫い目に沿って人差し指と中指でボールを挟む大谷のスプリット。これはフォークも含め、いわゆる落ちるボールの一般的な握りだった。決して特殊な握りではないという大谷のスプリットだが、ではなぜ打者が打てない魔球となっているのか。

「まず投球フォームですよね。投球フォームがストレートとスプリットに変わりがないです。リリースポイントが同じ」

野村さんが注目したのが6月30日ホワイトソックス戦で2回2死で迎えたハリソンとの対戦。2球目の直球を見送らせて追い込むと、最後はスプリットで三球三振に仕留めたシーンだ。

「まず投げ方は全く変わらない。リリースポイントも一緒なんです。若干ストレートよりもスプリットの方がボールが高いんですけどもバッターはボールの見極めがし辛いというのが映像をみても明らかですよね」

直球とほぼ同じフォーム。そしてほぼ同じリリースポイント。そこから同じコースに投げられたスプリットを打者がとらえるのは至難の業。大谷はこの直球との組み合わせでスプリットを生かしていた。

「利き指は中指だなと」

そして握りをみた野村さんが立てたある考察が…

「曲がり系の握りを見た時に利き指は中指だなと感じました。ピッチャーには利き指があって、人差し指と中指があるんですけど、大谷投手は中指が前に出てくるんですよ」

ボールに回転をかける時、より力を伝えやすい指「利き指」が投手にはあるという野村さん。そして大谷の利き指が中指であることが大きなメリットにつながるという。

「曲がり系のボールはひねらなければいけないので、人差し指だとボールの動きは小さいんですよ。中指だとそれだけ大きく動かせるので、曲がり系の球種というのは利き指が中指の投手の方が曲がりが大きくなります。大谷投手のスライダーもカーブも曲がりが大きいというのは、中指が利き指なんだなと握りを見て感じましたね」

利き指が人さし指より中指の方が、ボールに回転をかけやすい傾向に。だからこそ生まれるのがスプリットと並び魔球と称されているスライダー。6月30日のゲームでも中指で強烈なスピンをかけ、スライダーだけで5つの三振を奪った大谷。さらにこのカーブもあわせ、大きく曲がる変化球を操ることで7勝目をつかみとっていた。

まさに無双状態の大谷は14日のアストロズ戦でも6回1失点12奪三振の快投。自身6連勝で自己最多に並ぶ9勝目を上げ、1918年のベーブルース以来104年ぶりの「二桁勝利、二桁本塁打」に王手。今季も二刀流への挑戦は見るものをワクワクさせてくれる。

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7月16日(土)24時35分から
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