福島第一原発事故以降、福島県内の河川や湖では、淡水魚に含まれる放射性物質濃度の調査が続いている。
実施しているのは、福島県内水面水産試験場。普段は見られない福島県内水面水産試験場の裏側へ、福島テレビの坂井有生アナウンサーが向かった。

調査以外で捕る機会なく…魚の数増え大型化も

今回、魚の調査をする福島・楢葉町にある「木戸ダム」は、福島県の楢葉町・広野町・富岡町・大熊町・双葉町の生活用水や工業用水、また木戸川の洪水防止を目的に、2008年に完成した多目的ダムだ。

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福島テレビ・坂井有生アナウンサー:
今、特別に立ち入り禁止のゲートが開けられました。普段は一般の方は立ち入り禁止なんですか?

福島県内水面水産試験場調査部長・神山亨一さん:
特別に許可を取って、入場しています

管理道路を通り、ダムへ到着。ここからボートでダム湖へ出て魚を捕る。

福島県内水面水産試験場調査部長・神山亨一さん:
目的としては、木戸ダムのある木戸川水系の放射性物質濃度の測定です

ダム湖の4カ所に、前日のうちに仕掛けた刺し網を引き上げる。

福島テレビ・坂井有生アナウンサー:
どんなのが捕れたんですか?

福島県内水面水産試験場研究員・舟木優斗さん:
ウグイとヤマメが捕れています

坂井アナもボートに乗り、調査へ。最初のポイントでは…

福島テレビ・坂井有生アナウンサー:
おっ! ヤマメだ! …すごいサイズ

別のポイントでも…

福島県内水面水産試験場研究員・舟木優斗さん:
おぉ! ウグイ!

福島テレビ・坂井有生アナウンサー:
ここ大量ですね!…すごい量だ!

さらに、こんな魚も。

福島県内水面水産試験場研究員・舟木優斗さん:
あっ!ワカサギだ!

こうして、すべての刺し網を回収。

福島テレビ・坂井有生アナウンサー:
すごいサイズのヤマメやウグイ。こんなに大きいサイズって、普通に捕れるものなんですか?

福島県内水面水産試験場調査部長・神山亨一さん:
調査以外で魚を捕る機会がないので、魚の数も増えサイズも大きくなっているということはあります

福島テレビ・坂井有生アナウンサー:
ウグイは福島県の河川に広くいると思うのですが、ここで捕れることでどういう事がわかってくるのですか?

福島県内水面水産試験場調査部長・神山亨一さん:
ウグイは、どちらの河川にも下流から上流まで広く生息している魚なので、これを調べる事で、各地の放射線濃度などを評価するのに最適な魚種です

放射性物質の影響…河川や地域ごとに比較

捕まえるのは、魚だけではない。プランクトンも採取する。

福島テレビ・坂井有生アナウンサー:
プランクトンを調べることで、どういうことがわかるのですか?

福島県内水面水産試験場研究員・舟木優斗さん:
プランクトンは、魚介類のエサになる小魚のエサになるので、食物網による放射性物質の蓄積についての参考資料になります。きょうは木戸ダムの調査ですが、横川ダム(福島・南相馬市)や大柿ダム(福島・浪江町)でも同じような調査をして、それぞれの比較もできます。
海と違い、内水面の場合は、河川や地域ごとに放射性物質の影響のバラつきが大きいので、指標になるようなところをいくつか設けて調査をすることで、それぞれの地区の状況を把握して将来予測に役立てていきたいと思っています

そして、機械を使った採取方法も。

福島県内水面水産試験場調査部長・神山亨一さん:
これは主に河川で使う「電気ショッカー」。棒の先についている丸い電極のところから、河川の中に弱い電流を流して、一時的にマヒした魚を網ですくって採取します

20kg以上ある電気ショッカーを背負い、上流に向かって歩きながら魚を採取するという。

福島県内水面水産試験場調査部長・神山亨一さん:
これはアブラハヤという魚です。こういった形で採取します

福島テレビ・坂井有生アナウンサー:
これはなかなか同行できない調査です。よもや県の職員の方々が、こんな調査をしているとは思いませんでした

採取した魚は、福島・猪苗代町にある県内水面水産試験場へ。
ここでは、放流用のマゴイやウグイ、養殖用のヤマメやイワナなど稚魚の飼育をはじめ、淡水魚に関する様々な調査や研究を行っている。

捕獲作業から戻ると、大変な作業が待っていた。網から魚を外し、種類ごとに分けていく。

福島テレビ・坂井有生アナウンサー:
結構複雑に絡み合ってますけども…

福島県内水面水産試験場研究員・舟木優斗さん:
網を破らないように、通していく感じですかね…。ヒレとか歯に引っかかったり結構大変なんですけど、網もできるだけ再利用したいので、基本的には外せるものはきれいに外して。ちょっと地味な作業で…

淡水魚からは微量の放射性物質検出も

網から外された魚は、実験室で体長や体重などを測定し、さらに解剖。性別や胃の内容物なども確認する。

福島テレビ・坂井有生アナウンサー:
プライベートでも魚をさばいたりするんですか?

福島県内水面水産試験場研究員・舟木優斗さん:
たまにさばいたりします。釣りが趣味なので

福島テレビ・坂井有生アナウンサー:
趣味と実益を兼ねているんですね

福島県が所有する計測器にも数に限りがあり、さらに検査する魚の数も多いので、魚の身は冷凍庫で保管。後日、放射性物質濃度を検査する。

福島テレビ・坂井有生アナウンサー:
実際にこうやって、内水面の調査を震災・原発事故以降継続してきて、いまどんなことが見えてきたり、わかってきましたか?

福島県内水面水産試験場調査部長・神山亨一さん:
周辺の空間線量と魚の放射性物質の関係が見えることで、その地域の線量に対する魚の放射性物質濃度が、実際に現場に行かなくても推定することができる。
この先々、漁業の再開がいつできるのかわかることで、漁業組合の皆さんも先が見えてくると思う。そこに私たちの仕事が役立てられればいいと考えています

放射性物質検査で、海の魚は99.9%が検出限界値未満(ND)だが、淡水魚は4割~5割で、わずかながらも放射性物質が検出されるそう。
このため、福島県浜通りの河川では、安全性が確認されている木戸川のアユしか漁が解禁されていない。

福島県内水面水産試験場は、春から秋にかけて、月に1、2回、こうした調査を実施して、漁解禁のタイミングに役立てようとしている。

(福島テレビ)

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