参院選の公示日が近づいてきました。
今回は、ニュースでよく目にする「勝敗ライン」について説明したいと思います。
「56」自民と公明で過半数
選挙では半分以上の議席を取れば「勝利」と言っていいのですが、以前に説明したように、参議院では国会議員を半分ずつ選挙で選ぶので、少し複雑になります。
つまり、今回は選ばれない「非改選」議員が半分いるので、この「非改選」議席も計算しないといけないからです。
主要政党の現在の議席数を見てみると、
自民党 110議席 改選55議席 非改選55議席
立憲民主党 45議席 改選23議席 非改選22議席
公明党 28議席 改選14議席 非改選14議席
日本維新の会 15議席 改選 6議席 非改選 9議席
日本共産党 13議席 改選 6議席 非改選 7議席
国民民主党 12議席 改選 7議席 非改選 5議席
れいわ新選組 2議席 改選 0議席 非改選 2議席
社民党 1議席 改選 1議席 非改選 0議席
NHK党 1議席 改選 0議席 非改選 1議席
参議院の定数は248議席になりますので、125議席で「過半数」になります。
自民と公明は「非改選」があわせて69議席なので、今回の選挙で56議席を獲得すれば、自公の与党で125議席と過半数となります。

過半数があれば、法案などの採決を行う際、与党のみの賛成で可決するため、与党で「56」議席を上回るかどうか、重要な数字となります。
「63」自民と公明で改選過半数
今回の参院選では124議席(※神奈川補選除く)を選ぶので、過半数は63となります。さきほど説明した通り、「非改選」の分を考えると、自公で56議席を獲得すれば、参議院で過半数を維持できますが、直近の国政選挙で「半分以上の民意の支持を得た」という形にすることで、安定した政権運営ができるという考えから、自公で改選過半数の「63」議席を上回るかどうかもポイントです。

「70」自民単独で過半数
自民は現在110の議席を持っていて、このうち「非改選」は55議席です。なので、自民が今回の選挙で70議席を獲得すると、自民単独で125議席と過半数を超えることになります。
自民は衆議院でも単独で過半数を維持しているので、自民が「70」議席を獲得すると、衆参両院で自民党が単独で過半数を得ることになります。

「83」改憲勢力で3分の2
憲法改正を国会で発議するには、衆参両院で3分の2の賛成が必要となります。参議院全体の3分の2は166議席となります。
自民・公明に加え、憲法改正に前向きな維新・国民の「非改選」の議席数は83議席ですので、改憲発議に必要な3分の2を上回るには、今回の参院選でも「83」議席を獲得する必要があります。

岸田首相の「勝敗ライン」は何議席?
このように、「56」「63」「70」「83」と色々な数字が出てきましたが、岸田首相の考える「勝敗ライン」は、どこになるのでしょうか。
岸田首相は、国会閉会の6月15日の記者会見で勝敗ラインについて問われ、「非改選の議員を含めて与党で過半数」と明言しました。つまり、岸田首相にとって勝敗ラインの数字は「56」ということです。

「56」は先ほど示した4つの中で最も実現がしやすい数字です。政権運営について「安全運転」といわれる岸田首相らしい目標設定ともいえそうです。一方で、選挙情勢次第で下方修正することや、もし実現できなかった場合に言い訳ができない数字でもあります。
さらに、与党で過半数を獲得できた場合の「勝ち方」を測る指標としては、「63」「70」「83」は変わらず大きな意味を持つことになります。
【執筆:フジテレビ政治部】
【イラスト:さいとうひさし】