今年最大の政治決戦である参院選の投開票日まで一ヶ月を切りました。去年10月に衆院選が行われましたが、実は参院選と衆院選では投票の仕方などで違いがあります。

参院議員は半分ずつを選挙で選ぶ

衆院選では、465人の衆院議員全員を一斉に選挙で選びます。
一方、参院選では、3年ごとに半分ずつを選ぶ形となります。参議院の国会議員の定数は現在245人ですが、今回の参院選から248人となることが決まっていますので、私たちは今回、124人の国会議員を選ぶこととなります。(※神奈川補選除く)

ちなみに、今回選ばれる議員を「改選」と呼び、前回3年前に選ばれたので今回は選挙がない議員を「非改選」と呼びます。

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比例区候補者が名前を書いてほしいワケ

今回の選挙で選ばれる124人のうち、74人が各都道府県で戦う「選挙区」、50人が全国を1つの選挙区として戦う「比例区」で選ばれます。

「選挙区」は、有権者数に見合った形で、定数が1~6まで割り振られています。一番多いのは東京で6人の国会議員を選びます。定数「1」の選挙区は「1人区」と呼ばれ、32選挙区もある上に与野党が一騎打ちになることが多いため、「勝敗のカギを握る1人区」として選挙の度に注目されます。

一方の「比例区」ですが、参議院の場合は「非拘束名簿式」という方法をとっています。「非拘束名簿」というのは、「比例名簿の順位を事前に決めない」という意味合いです。

まず政党ごとの当選者数が決まります。その後、政党の中で書かれた候補者の名前が多い順に、当選となっていく仕組みです。

ただ、私たちは、投票の際に、政党名でも候補者名でも、どちらを書いても大丈夫です。

例えば「A党」から「Bさん」「Cさん」「Dさん」という人が立候補していた場合、「A党」と書いて投票した場合は、「A党」に一票が割り振られます。また「Bさん」や「Cさん」と書いて投票した場合も、「A党」に一票が割り振られます。

最終的に「A党」が2議席を獲得した場合、「Bさん」「Cさん」「Dさん」の中で、名前が書かれた数の多い上位2人が当選者となります。

比例区に立候補した候補者が「党の名前ではなく私の名前を書いてください」と呼びかけているのは、自分の名前で投票してもらわないと、当選する順位が上がらないためです。

ちなみに衆院選では、選挙区と比例区で重複して立候補することが認められていますが、参院選では両方に立候補することはできません。

優先指定席の「特定枠」とは?

このように「参院選の比例区では事前に順位を決められない」のですが、前回2019年の参院選から一部変更があり、「特定枠」という制度が導入されました。

「特定枠」とは、それぞれの政党や団体が優先的に比例で当選させたい候補を決められる制度で、いわば「優先指定席」のようなものです。

さきほどのケースで説明すると、「A党」の比例候補者「Bさん」「Cさん」「Dさん」のうち、「Dさん」は特定枠で立候補したとします。

「A党」が比例区で2議席を獲得し、候補者名の票は「Bさん」が100万票、「Cさん」が50万票、「Dさん」が10万票を獲得したとします。本来ならば、「Bさん」と「Cさん」の二人が当選するわけですが、「Dさん」は特定枠で優先されるため、当選者は「Dさん」と「Bさん」になるわけです。

「特定枠」では、有権者に個人名で名前を書いてもらわなくても、当選や落選が決まるため、その候補者は選挙事務所を置くことや個人演説会、選挙カーを使用すること、ポスターなどを張ったり、ビラを配ったりすることなど、「個人名」を浸透させるような選挙戦は制限されています。

また、この特定枠の候補者の名前を投票用紙に書いたとしても政党に1票が投じられたと同じ事になります。

「特定枠」が導入された理由について、総務省は「全国的な支持基盤を有するとはいえないが、国政上有為な人材又は民意を媒介する政党がその役割を果たす上で必要な人材が当選しやすくなる」と説明しています。

次回は、各党の思惑が交差する「選挙区」についてお伝えします。

【執筆:フジテレビ政治部】
【イラスト:さいとうひさし】

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