イルミネーションなどに使われるLEDランプを製造する会社が、島根・邑南町にある。

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ここではLEDランプだけではなく、日本の食卓にかかせない、あの食品も作っている。
地域の産業を守ろうと奮闘する社長と、職人の挑戦を取材した。

“60歳豆腐職人”がLED製造会社の面接に

中国山地の山間にある会社、トリコン。約40年前からイルミネーションなどに使われるLEDランプを製造している。

従業員は31人と小さな会社だが、廃線となったJR三江線の宇都井駅で行われるINAKAイルミにも、ここで作られたライトが使われている。

実はこの会社、もう1つ作っているものがある。
それは「豆腐」。作っているのは…

増谷實さん:
きょうのはあんまりよくない。温度の関係で難しい。きょうは水に浸す時間が長かったと思う。これじゃ納得できん

この道28年の職人、増谷實さん。使うのは、2種類の大豆とにがりのみ。通常の豆腐より濃度を濃くし、大豆本来の風味を大切している。

増谷實さん:
甘さで勝負しとる。1回食べたら違うってわかるんかなと

製造社長と熟練豆腐職人…6年目の挑戦

こだわりの豆腐は、会社や道の駅などを中心に販売されている。なぜ、LEDの工場が豆腐を作るのか。

トリコン・上田康志社長:
一流の職人さんが目の前にいる。ほんなら一緒にやりませんかというのは、普通の流れだった

こう話すのは、トリコンの上田社長。
実は5年前、豆腐職人の増谷さんが会社の面接に訪れたという。

トリコン・上田康志社長:
LEDについては、ちょっと技能職として作業してもらうのは難しいなと思った

電子機器の仕事は細かな作業が多く、当時すでに60歳を超えていた増谷さんの採用は厳しいと考えていた。
しかし、面接で話すうちに、増谷さんが同じ町内で豆腐工場を経営していたことがわかった。地域貢献のため、地元産業の支援を考えていた上田社長は、この話にピンときたという。

トリコン・上田康志社長:
これだと、直感で思った。新たな切り口で、今までの豆腐の概念を変えるような形で、どうにか展開できれば面白いことになる可能性があると思った

かつて、町に1軒はあった豆腐屋。大量生産の商品に押され、町の豆腐屋は急速に減っている。増谷さんも、その波に抗えず工場を閉めた。
しかし就職を考え、面接にきたトリコンで思いがけず豆腐作りを提案され、再び職人魂に灯がともった。

増谷實さん:
付加価値の高いものを作るならやってみようと。量産体制じゃないから

上田社長も、こだわりの豆腐の味と確かな技術の継承に期待を寄せる。

トリコン・上田康志社長:
一流の職人さんが辞めざるを得ないパターンは、たくさんあると思う。そういうときは、誰かが資本を提供して一緒にコラボしてやっていくということで、事業を受け継いでいって、地場産業を残していくことが必要だと思う

2022年で6年目となる、LED工場での豆腐づくり。
年間売り上げは、会社全体の2%ほどの約400万円だが、新商品を開発し、年間1,000万円の売り上げを目指す。

増谷實さん:
毎日やっても、いいのはできん。いつも1年生

中国山地の山間で、LEDランプとともに心にも灯るおいしい豆腐を作る。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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