これまでの長いマスク生活や感染対策を尽くした生活の中で私たち人間の免疫力が低下しているという指摘があります。”脱マスク”の方向へ向かう中でコロナ以外の感染症の流行の可能性について解説します。

アフターコロナで懸念 子どもが免疫不十分

イギリス ノッティンガム大学 ウイルス学 ウィル・アーヴィング教授:
新型コロナのパンデミックにより、厳しいロックダウンをしてきたので、子どもたちは小児期によくある感染症にさらされてこなかった可能性があります。そして、今になり突然複数のウイルスにさらされ、免疫系がどういうわけか、うまく対応できていないのかもしれません

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ウイルス学が専門のイギリス・ノッティンガム大学のウィル・アーヴィング教授が懸念を示したのは、コロナ禍の生活による“免疫異常”。日本を含め世界で次々に確認されている“原因不明の小児肝炎”には、「コロナ禍での徹底した感染対策」が影響している可能性を指摘しました。

ウィズコロナへ進む国々がある中、感染症の拡大は世界各地で起きています。

厳格なコロナ対策からアフターコロナへ、世界が舵を切る中、気になる広がりを見せる“コロナ以外の感染症”。これまでのコロナ対策が何か影響を与えているのでしょうか?

後藤茂之厚労相:
屋外で、2m以上を目安として他者との距離が確保できる場合はマスクを着用する必要はありません

進む“脱マスク”をはじめとする感染対策の緩和。「免疫力」を保ちながらどう過ごしていけばいいのでしょうか?

コロナ以外の感染症が猛威 原因のひとつに免疫力の低下?

世界では、オーストラリアで「日本脳炎」が、初めて流行。イスラエルでは「ポリオ」が約30年ぶりに確認されました。シンガポールでは「デング熱」。ケニアでは、1995年以来の「黄熱」が流行しています。

日本脳炎とデング熱、黄熱は蚊が媒介するということですから、マスクの有無が直接は関係ないのですが、コロナが収束へ向かう中でこうしたことが起きているというのは心配です。

コロナが収束に向かっている中で、なぜ、いろいろな感染症が感染拡大しているのでしょうか?

浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野邦夫医師:
おそらく、各国の保健機関、例えば保健所等のマンパワーがコロナの方に吸い取られて、消耗されてしまって、調査とかワクチン接種が遅れてしまった、これが大きく関連しているのではないかなと思います

欧米を中心に流行「サル痘」 

また、欧米を中心として広がっているのが「サル痘」というもの。

アメリカ、イギリス、フランスなど合わせて15カ国でサル痘の感染者80人以上が確認されています。症状は発熱、頭痛、発疹など。致死率も数%から10%というふうに言われています。感染経路は、感染している人や動物との濃厚接触。

外務省は5月23日、渡航者に対して注意喚起をしました。アフリカで拡大するイメージがありましたが、欧米でというところが懸念されています。

浜松医療センター 感染症管理特別顧問 矢野邦夫医師:
感染力が強くなっていなくて、濃厚接触していない限りは感染しないんですが、ただ、このような感染症は他の感染症も発生する可能性があるので、感染の対策はしておく必要があるのかなと思います。

専門家「インフルエンザ、子どもの感染症が流行する可能性」

日本では何に注意したらいいのか?

それが「インフルエンザと子どもの感染症の流行の可能性」です。ただ、5月20日、後藤厚労相はマスクは必要ないという、2m以上の距離が保てればという条件付きで動いている中で、果たしてどうなるのでしょうか?

そもそも、コロナ禍でのマスク生活で免疫力が下がっているともいわれていますが、コロナ前というのは、マスクをせずに自由に外に出て、会話をして色々なところに行っていました。

自然と免疫というものが訓練されていた、強化維持されていたのです。

ところが、マスク生活なるようになって、マスクやしっかりとした消毒、リモートでなるべく人と会わないようにしたり外出も自粛した。そうすると、持っている免疫は、やはり落ちてきてしまうという結果です。

これは”免疫低下”ということもありますが、もう1つ、久留米大学医学部の溝口充志教授によると、「ウイルスなどに自分の身体が過剰に反応してしまう」自己免疫疾患やアレルギーなどが突然起こってしまうケースもあると指摘しています。

コロナにかからないように防御した結果、日常生活で免疫が鍛えられなくて低下してしまったのでしょうか。

浜松医療センター 感染症管理特別顧問 矢野邦夫医師:
特に子どもたちの場合は、あまりこの2年間ウイルスに曝露していないし、高齢者などは、もともと免疫弱いものですから、かなり免疫下がってくるのではないかなと心配しています

徹底した感染症の対策というところで、例えば「インフルエンザ」

数字を見てみると激減していることが分かります。
これまでは、180万人を超える年も日本ではありましたが、コロナ禍で人数が減り、404人というかなり少ない数字になっていました。
そのため、矢野邦夫医師によると、インフルエンザの免疫低下の可能性が大きくなってしまうということです。

直接的な関係があるかは分かりませんが、南米のブラジルでは1月、2月のインフルエンザによる死者数が急増しています。2021年までは数十人程度と2ケタで推移していました。

ところが、コロナ禍になった中で2022年、死者の数は1719人と急増。

日本でもこのような事態に見舞われる可能性はあるのでしょうか?

浜松医療センター 感染症管理特別顧問 矢野邦夫医師:
十分あり得ると思います。2年間全く流行していないので、2022年は3年間分が一気に襲ってくる可能性がある。その間で一定の重症者がいるわけなのですが、それが3倍になるのでブラジルのような状況というのは十分にあり得ると思います

他にも、謎の小児肝炎も、いま取り沙汰されています。これも免疫低下が原因ではないかといわれています。

謎の小児肝炎「アデノウイルス」が流行

5月15日時点で、22カ国429人が原因不明の急性肝炎になっていて、中には肝移植が必要な例も出てきています。WHOの発表では7割の患者からアデノウイルスが検出されているのですが、本来このウイルスというのは特別悪いウイルスではなくて、重症化するものではありません。
ところが、何らかの原因でいまこういう状況になってしまっている。

このことについて、イギリス・ノッティンガム大学のウィル・アーヴィング教授は、「ロックダウンで子どもたちが本来かかっておくべき感染症にかかることができず、その結果免疫力が落ちた可能性がある」と指摘。

子どものうちに感染して、免疫を獲得しておくのが重要だということでしょうか。

浜松医療センター 感染症管理特別顧問 矢野邦夫医師:
子どもの頃は免疫の獲得の回数が増えますし、アデノウイルスも2年間流行していなくて一気に増え出してきている。一定の割合で重症化のリスクという可能性もありますね

子どもの頃にかかっておかないと、という話がありますが、実は大人になってから感染してしまうと思わぬリスクがあるという感染症を紹介します。

それが「サイトメガロウイルス」というもの。

本来これは、母乳であったり、血液、唾液、こういったものを介して、子どものうちにかかるウイルスですが、本当は無症状です。

妊婦がこのウイルスに初めて感染してしまうと、本人は大丈夫ですが、生まれてきた赤ちゃんに目や耳の障害、小頭症など高確率で発生するということです。その割合は、発生に対して3分の1という高い数字となっています。

矢野邦夫医師によると、「子どもに対するワクチンが存在しない。なので子どものうちに感染をしておくことが免疫を付ける上で大事」ということです。

子どもたちがいかに、感染をして、免疫をつけて、ただ、重症化せず、なだらかに免疫を獲得していくという流れが、大切なのかもしれません。

(めざまし8「わかるまで解説」5月24日放送より)

 
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