砂から細長い体を伸ばし、ゆらゆらと揺れているイメージのあるチンアナゴ。その様子に癒やされるが、砂の中ではどうなっているか知っているだろうか。
今、「思ってたより長い!」と話題になっている。
それがこちら。

よく目にするチンアナゴの展示といえば、砂から出た部分がメインで、砂の中はよく見えないことが多い。
そんな中でこの展示は、チンアナゴが水槽部分に接して砂の中に潜っているため、どういう状態なのかがよく見える。砂から出ている体はほんの一部で、砂の中でもくねくねしていたのだ。
展示しているのは、静岡県にある沼津港深海水族館。

展示を見た人が、Twitterに投稿したことで話題になり、投稿を見たTwitterユーザーからは、「チンアナゴは砂の中でどうなっているのかなあってずっと気になっていました 謎が解けました!」「すごいきれいにうねうねー!」「思ってたより長い!」などと、驚いたコメントが集まっている。
砂から出ているのは一部…実際は全長約25センチ
気になっていた人には疑問が解消できた展示となったが、なぜこのような形で紹介したのだろうか? また、そもそもチンアナゴはなぜ砂の中に潜っているのだろうか?
沼津港深海水族館の担当者に話を聞いた。
ーーこの展示はどういうものなの?
自ら巣穴を掘り、また巣穴の形もおもしろいチンアナゴを、普段見えない巣の部分を是非多くの方に見てもらいたいとの思いから特別展示「女性飼育員トリオのお仕事報告書」内の水槽で展開しようと企画いたしました。
「女性飼育員トリオのお仕事報告書」は、昨年入社した女性3人にスポットを当て、担当する生物の展示を行い、上司への報告書や業務内容のメモ書きなどを生物の解説に見たて、ユーモアいっぱいにご紹介しています。

ーー普段の展示とどこが違う?
通常のチンアナゴを展示する水槽と砂質(細かいサンゴ砂)、砂の深さは変わりありませんが、少し特別な水槽を製作しました。

ーー展示でこだわった部分は?
巣穴が綺麗に見えるよう砂の粒の大きさ、水槽の奥行きです。水槽の奥行きをチンアナゴの太さ(5〜6ミリ)に近い7ミリとし、極端に奥行きが狭い水槽を製作致しました。
チンアナゴは全長25センチ程になりますが、水族館で通常見られる(砂の上に露出した部分)は10センチ程度のことが多いため、砂の中が見えることで体全体を見ることが出来、思ったより長かった、という感想を多くいただけたと思います。
ーー水槽に奥行きがあるようにも見えるけど、もう少し具体的な仕組みを教えて
水槽内の砂の深さを仕切り板で調整していて、深くなっているのは水槽前面部の幅7ミリ部分だけとなります。奥にも砂が広がっていますが、この部分は実は浅く、チンアナゴが身を隠すことができなくなっています。
ーー難しいことはあった?
普段見えないところを見てもらいたい、という思いで試行錯誤して水槽製作から行なったことです。
身を隠すために砂中に巣穴
ーー砂の中が見えることで、新たな発見はあった?
人気のチンアナゴのさらなる魅力を多くの方に知っていただけたと思います。飼育員の中でもチンアナゴの巣の中を実際見たことのある者が少なかったため、今回の展示は飼育員としても勉強になりました。

ーーそもそも、チンアナゴはなぜ砂の中に潜っているの?
身を隠すために砂中に巣穴を作ります。チンアナゴは非常に臆病な生物で全身が隠れる巣穴を作ります。また、素早く全身を砂の中に隠すことができます。
巣穴同士が近接している場合、チンアナゴ同士の強い・弱いがあるようで、大きく巣穴から体を出している個体の方が多くの餌を捕えているようです。
巣穴の場所を変える、繁殖行動の際には巣穴から出ると考えられていますが、通常巣穴から全身を出すことはほぼありません。

ーー「女性飼育員トリオのお仕事報告書」はいつまで開催している?
特別展示は、4月23日から開催しており、7月10日終了予定です。特別展示エリア内で入館者どなたでもご覧頂ける水槽で展示を行っています。
ーー反響はあった?
ネットで話題になったことは、飼育員として非常に嬉しかったです。反響があり、この展示を行なってよかったと思っています。多くの入館者から、チンアナゴの長さ、巣の形について驚きの声を頂戴しています。

チンアナゴは砂の中ではもまっすぐだと思っていた人がいたようで、今回の展示は、多くの人に新たな発見を与えられたのではないだろうか。なお展示では、「どうやって巣穴を掘るの?」「巣穴はどうして固まっているの?」などチンアナゴの秘密について解説している。
興味がある人は実際に訪れて、チンアナゴを見てほしい。