シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法など健康に関する悩みをわかりやすく解説。

今回は女性泌尿器科の専門医、女性医療クリニックLUNA 横浜元町・ネクストステージ理事長の関口由紀医師が女性の更年期障害について解説。ホットフラッシュなどの症状や更年期障害になりやすい人、乗り越えるポイントなどを説明。

また、生活習慣病や認知症のリスクなど閉経によって起こりうる別の病気の可能性についてもお伝えする。

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更年期障害とは

更年期は期間の問題です。

日本の女性の場合はだいたい50~51歳で閉経を迎え、生理がなくなります。その前後5年間(トータルで10年間)を更年期といいます。

その時期は、女性ホルモンアップダウンしながら下がっていきます。

アップダウンしながら下がっていくことによって起こるいろいろなトラブルのことを更年期障害といいます。

まず閉経をどう定義するかということですが、生理がなくなって1年が経った時にその1年前の月日を閉経月とか閉経年といいます。

普通はだいたいわかりますが、子宮を取ってしまった人は生理が前から無いのでわからないことから、50~51歳になったら血液検査をします。そこで閉経の判断基準として、エストラジオール濃度が20pg/mL以下、さらに卵胞刺激ホルモン(FSH)が40mlU/mL以上になっていたら、そろそろ閉経かなと診断します。

更年期障害のメカニズムと2つの症状 

閉経前の女性は女性ホルモンの一番主要なホルモンのエストラジオール100pg/mL前後ありますが、閉経すると10~20pg/mLになります。そこに向かって数年かけて上がったり下がったりしながら下がっていきます。

この行ったり来たりを長く続けていると、卵胞刺激ホルモン(FSH)を出す脳の視床下部、下垂体がバランスを崩します。それによって2つの症状が出ます。

1つが自律神経失調症状

一番多いのがホットフラッシュといって、カッと熱くなって汗がバッと出て、またすごく冷えるという症状。

あと、めまい体が痒いといった症状や臭いがする。周りは誰も臭いといっていないのに「自分だけ臭い」とか。

さらに、の中が調子悪い、外陰部が痒いなどいろいろな知覚過敏のような症状も出ます。

もう1つは精神神経症状

イライラしてなかなか感情を制御できない。逆に何の原因もないのに落ち込んでなかなか上がってこれない。

この2つが代表的な症状になります。

更年期障害になりやすい人

生理前や生理中に体調が悪くなる人は更年期障害も重くなる傾向があります。また、過労、働き過ぎ、人間関係が複雑になってくる時期でもあり、親の介護の問題を持っている人も多かったり、あとは仕事が忙しくなり昇進ストレスなどもあるなど、精神的なストレスによって更年期障害も強くなる傾向があると言われています。

閉経して5年ぐらい経って女性ホルモンが低く一定化すると大体症状は落ち着きます。

自律神経失調症状とメンタルの問題は解決する人が多いのですが、症状が落ち着かないという人は更年期に起こった別の病気の可能性があるので、そっちを調べてみる必要があります。

一番多いのが甲状腺の病気。あと膠原病という人達もいます。さらにホルモンと関係ないうつ病

あと、閉経して3年後くらいから女性ホルモンが低いことで血管皮膚に影響が出てきます。一番代表的なのがGMS(閉経関連尿路生殖器症候群)で、これになる人が大体半分くらいいます。

症状としては外陰部が痒い、乾燥する、頻尿になる、膀胱炎になりやすくなる、セックスの時痛いなどちょっとした下のトラブルが起こってくるようなら治療が必要です。

また、骨の問題も出てきます。女性ホルモンがあるうちは骨の破壊はあまり進みませんが、女性ホルモンがなくなってくると骨密度が低下してくるので、骨粗しょう症の問題が起きてきます。

女性ホルモンは血管を守っているので、閉経すると生活習慣病になりやすいです。

血圧が上がってきたり、脂質異常症といってコレステロールが上がってきたり、糖尿病がひどくなってきたりもします。

さらに閉経して5~6年以降は認知症のリスクも上がってくるので、ここら辺のケアも開始した方がいいです。

更年期障害を乗り越えるポイント

更年期は女性であれば誰でも起こることです。

閉経すると自分が女じゃなくなると落ち込む人達が少なからずいますが、生理のトラブルもなくなって子育ても大体終わっているので、それまで悩んでいたことは後回しにして自分の好きなことをやって欲しいです。

明日できることは明日やる。今日できることを今日やって自分の楽しいことをやることが原則
更年期前よりは無理できなくなってくるので、無理せず労働量は半分くらいにする、規則正しい生活をする。

ご飯も栄養のあるタンパク質ミネラル繊維のあるものを食べて、定期的な運動をする。

困っている症状が80%改善する人は病院に来る必要はありませんが、いろいろ努力してみても50%以上にならないし、あまり愚痴れない、人に相談もできないということであれば、婦人科とか女性外来に気軽に来た方が良いと思います。

更年期障害の治療法

いろいろな体質の人がいるので、賢くサプリメント漢方薬を使ったり、代替医療といいますが鍼灸アロママッサージなども使ってリラックスする。これでもダメなら現代医学の力も気軽に使った方がいいです。

具体的には、ホルモン補充は65歳までは比較的気軽に受けられます。

65歳以降になっても少しだけ血栓症と乳がんのリスクは増えますが、それを理解してリスク管理ができる女性は気軽にホルモン補充で一歩進むのもいいと思います。

関口由紀
関口由紀

女性医療クリニックLUNAグループ理事長 平成元年 山形大学医学部医学科卒業 平成19年 横浜市立大学大学院医学研究科修了、平成21年 日本大学グローバルビジネス研究科修士課程修了 平成17年 横浜元町女性医療クリニック・LUNA(婦人科)開業 平成20年 女性医療クリニックLUNA・ANNEX(女性内科・漢方内科・ヘルススタジオ)開設 平成24年 LUNA骨盤底トータルサポートクリニック(女性泌尿器科・乳腺科・美容皮膚科)開設 平成30年 女性医療クリニックLUNA 横浜元町(生殖年齢女性対象クリニック)と女性医療クリニックLUNA ネクストステージ(更年期以降の女性対象クリニック)を開設。 医学博士、経営学修士、横浜市立大学客員教授、日本泌尿器科学会専門医、日本東洋医学会専門医、日本性機能学会専門医、
日本排尿機能学会専門医