熱中症は防ぐことができる。山形・米沢市の女子生徒のような痛ましい事故を繰り返さないため、必要な対策は何なのか…。当日の女子生徒の行動を踏まえ、救急医学の専門医に聞いた。
部活動中に体調異常始まっていた可能性
7月30日に開かれた米沢市教育委員会の会見。
米沢市教育委員会・土屋宏教育長:
命を守ることができず大変申し訳ない気持ちでいっぱい。心よりおわび申し上げる
具体的な部活動の内容は家族の意向で明らかにされなかったが、会見からわかった女子生徒の28日の行動は以下の通り。
午前8時10分、自転車で登校。
午前8時半、部活動スタート。
午前9時55分、部活動終了。当初11時までの予定だったが、顧問の教員が暑さを考慮し約1時間短縮。
午前10時半、1人で自転車で下校。
午前11時7分、下校から約30分後に止めた自転車の横で倒れているのを発見される。
午後9時49分、運ばれた病院で亡くなる。
部活動中は、20分から25分ごとに休憩し水分補給をしていて、亡くなった女子生徒を含め体調不良を訴えた生徒はいなかったという。
しかし、救急医学が専門の山形大学医学部附属病院・中根正樹救急部長は「部活動中から暑さによる異変が始まっていたのでは」と指摘する。
山形大学医学部附属病院・中根正樹救急部長:
部活動中に体のコンディションとしては脱水状態にあった、体温が高くなっていたと想像できる。子どもはあまり自分から体調異常を訴えないことが多いので、もしかしたらギリギリの状態だったが、“頑張れる”と判断したのかもしれない
自転車の運転が熱中症に拍車かけたか
28日の米沢市は、午前11時には32℃を超えていた。学校から女子生徒が倒れていた現場までは、3km弱だった。
山形大学医学部附属病院・中根正樹救急部長:
おそらくギリギリの状態で下校・自転車の運転が始まり、自転車の運転自体が運動なので、炎天下の運動は熱中症・脱水状態にさらに拍車をかけたと思う
また、自転車通学の中学生がかぶっている一般的なヘルメットは、通気性が悪く熱がこもり炎天下の着用を疑問視する声も上がっている。
山形大学医学部附属病院・中根正樹救急部長:
実際どういうヘルメットをしていたかわからないが、最近はサイクリングやプロのレース用に通気性にこだわったヘルメットが市販されている。中学生・学生もそういうものを使うのがより良いのでは
米沢三中では30日夜、保護者説明会が開かれた。参加者からは今回の事故を受け「水筒以外のペットボトルの持参」「遠距離通学生徒のバス利用と携帯電話の所持」などの要望があったという。
連日の命にかかわる危険な暑さ。痛ましい事故を繰り返さないための対策は部活動の中止を含め、決してし過ぎることはない。
山形大学医学部附属病院・中根正樹救急部長:
子どもは自分から異常を発することができない。周りの大人がしっかり見てあげること。そして、水分摂取・塩分摂取、もし可能であれば、エアコンの効いた部屋で少しクールダウンしてから下校することが考えられる
「暑さ指数」を指標に行動を
もう一つ、中根先生が熱中症対策をする上で重要としたのが、気温と湿度などから算出する「暑さ指数」だ。米沢市のガイドラインでもその数値に応じて「運動は原則中止」「激しい運動は避ける」など対応するとしている。
今回の事案で、顧問の教員は暑さ指数を確認していなかったという。そもそも学校に計測器が1台しかなかったということだが、「暑さ指数」に関しては環境省のウェブサイトに予測も含めて載っている。中根先生はそれを活用しながら対策をとってほしいと話していた。
(さくらんぼテレビ)