「支援を受けている子どもの保護者は、中学校にも支援学級を作って欲しいというのは自分たちのワガママなのではないか、という苦悩を抱えています」
海外で障がいのある子どもを育てる「海外日本人学校への特別支援学級導入を考える会」の代表は悩みを打ち明けた。
森補佐官「なんでこんなことに」
海外の日本人学校で、特別支援教育を必要としている子どもへの支援不足が課題となっている。女性活躍担当の森雅子補佐官は、5月の大型連休中にシンガポールを訪問し、日本人学校に通う子どもを持つ保護者と「車座」で意見交換を行った。
シンガポールの日本人小学校には1500人以上在籍(21年7月時点)していて、これはニューヨークよりも多いという。一方で、シンガポールにある日本人学校は小学校2校、中学校1校のあわせて3校で、そのうち特別支援学級が設置されているのは小学校だけだ。そのため、小学校で支援を受けている約30人が、中学校に進学できない状況にある。
森補佐官は「なんでこんなことになってるんだと。2008年から特別支援学級を作ってほしいと要望書を出しているのに通らないと話していた」と話す。
中学に支援学級設立検討も
この車座に参加していた「海外日本人学校への特別支援学級導入を考える会」の代表は、「支援を受けている子どもの保護者は、中学校にも支援学級を作って欲しいというのは自分たちのワガママなのではないか、という苦悩を抱えています。ただ、小学校に支援学級が出来るまでの道のりも容易なものではありませんでした」と当時を振り返る。
2018年には中学校での特別支援学級の設置について検討はされたものの、人材確保などが課題となり結局設置には至らなかった。海外の日本人学校は文科省から教員が派遣されているため、支援学級に関しても教員派遣の目処が立たなかったことも理由の一つだったという。
また、小学校の支援学級に編入・入学する際の面接で『支援学級等の利用者は、学校の決定や行われる支援指導について過度な要求はした場合は退学となる』と説明され、「過度な要求」には「中学校に特別支援学級を設立してほしい」ということも含まれるとする説明を受けたと代表は話す。
支援を受けている生徒は、小学4年生の3学期目に、現地の日本人中学校に進級するために支援学級の利用をやめるか、支援学級の利用を希望する場合は、シンガポールを離れて、支援学級のある日本に帰国するか、難しい判断を迫られる。
そのため、「現地の中学校に進学できないため、親からすると積み上げてきたキャリアを諦めて帰国したり、母と子のみで帰国し家族がバラバラになったり。それを見て家族が一緒に暮らせないのは自分がダメな子だからだ、と自己肯定感が下がりメンタル的にダウンする子どももいます。障がいのある子ども達も誰かの役に立つことが、大好きです。誰かに喜んでもらうのが、大好きです。
他者と関わり共に生きることを学ぶのが、教育であり学校の役割ならば、どうか、義務教育期間にある支援学級の子ども達にもその機会をいただけないでしょうか」代表は強く語った。

森雅子補佐官は、シンガポールでの支援学級について、林外相と末松文科相に報告するとしている。現地でも自由に教育を受けられるよう、教員の派遣などの課題を一つ一つ解決していってほしい。
(フジテレビ政治部・長島理紗)