地元の自然を見直すことで、地域の宝を復活させた。舞台は広島・福山市神辺町。荒れ放題の川が、地元愛と努力で清らかな流れを取り戻した。

福山市神辺町、芦田川の支流となる堂々川にある巨大な石組みの斜面。

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その中腹に、積もった土を取り除く人の姿が…いったい、何をやっているのか?

江戸時代に作られた砂防ダム「砂留(すなどめ)」に溜まった砂を除去

堂々川ホタル同好会・土肥徳之さん:
これは鳶ケ迫砂留(とびがさこすなどめ)という、堂々川右岸の砂留です。砂留は江戸時代に作られた石組の堰堤です。

現代の砂防ダムのように、土砂災害を防ぐために造られた「砂留」。
堂々川には、このような砂留が16基も現存していて、その整備を行っているのが堂々川ホタル同好会の皆さん。

堂々川ホタル同好会・土肥徳之さん:
砂が最大で1メートルくらい堆積しているんです。堆積した砂を取って整備しています。
砂があれだけあると、木が生えて砂留を壊してしまいます。危険なので、なかなかできない作業ですが、彼は命綱まで自分で用意してくれて、こういうことができるようになったんですね

作業をしていたのは渡邉文夫さん。
5年ほど前に会に参加し、砂留の整備を続けている。

渡邉文夫さん:
大雨が降った時に流れて溜まった泥を取っています。定年退職したもので少しでもお役に立てればと、ケガをしない程度に奉仕をさせていただくというか、きれいになればそれでいいかなと思うんですけどね

これらの砂留は、江戸時代に作られたもの。

堂々川ホタル同好会・土肥徳之さん:
1673年に堂々川の最上流の大原池が決壊したんですね。そのあと砂が流れて住民が困っていたので、福山藩が砂留を作ったんです

今も、その雄大な姿を楽しむことができる砂留。
しかし、会が発足した2006年以前は全く違う状況だった。

ゴミ捨て場のような川にホタルが…

堂々川ホタル同好会・土肥徳之さん:
ゴミがたくさんあったり、草木が生い茂ったりで問題の多い川だったんです。どうして皆さんここにゴミを捨てにくるのかというくらい、不法投棄が多かったですね。

荒れ放題だった故郷の川。それを変えたのは数匹のホタルだった。

堂々川ホタル同好会・土肥徳之さん:
5番砂留の河原の真ん中辺りに、広島県が石積みをしたんですね。そこにホタルが飛び始めたのが会の設立のきっかけです

ゴミが散乱していた川に舞うホタル。これをきっかけに川の清掃を本格化させ、ホタルのエサになるカワニナという貝を放流したところ、2007年には約200匹のホタルが確認された。

こうして堂々川ホタル同好会は結成され、川の清掃や砂留の整備を行うようになった。そこには土肥さんのある狙いがあった。

キレイな場所にはゴミは捨てにくい

堂々川ホタル同好会・土肥徳之さん:
キレイな場所には、モノは捨てにくいということですね

同好会の仲間や地元の小学生に支えられて姿を変えていった川。

2008年からは、別の取り組みも。
荒れた斜面で行われている作業は…?

河岸にも彼岸花を植えて…不法投棄されにくい川に

桜井道雄さん:
イノシシが掘り起こした彼岸花の球根を植え直しているんです。

不法投棄されにくい川を作るため、河岸に彼岸花を植え始めた。

桜井道雄さん:
今22万本くらい植えています。しかしこういう状態で掘り返されているから、少し減っているとは思いますけど

イノシシの被害に耐えながら、植え続けてきた彼岸花。
毎年秋になれば、美しい景色が訪れる人を楽しませてくれるようになった。

公園も整備され、川はすっかり生まれ変わり、今では町の人たちの憩いの場に変身。

行楽客:
土日は家族連れが多く、夏には川で遊ぶ人もいて。いいね、使いやすくて

多くの人が訪れるようになった堂々川。地域を愛する人たちのやさしい思いに支えられて、川は、憩いと安らぎの場に生まれ変わった。

堂々川ホタル同好会・土肥徳之さん:
この堂々川の中流域を見に来られる人が、だいたい年間1万人弱。うれしい成果が出ています。ホタルをたくさん飛ばそうということと、不法投棄をなくそうということ。これがほぼ達成できたということですね

渡邉文夫さん:
彼岸花が9月20日以降に咲くと見応えがあるので、砂防ダムをきれいにしたのは、やって良かったなと思いますね

桜井道雄さん:
花一面にしたいですね

ホタル同好会の地道な活動が、地元民の地域を思う心をよみがえらせ、憩いの場をつくった。2022年も、清らかなせせらぎにホタルが舞い、彼岸花が咲き誇る季節が来る。

(テレビ新広島)

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