感染拡大が続く新型コロナウイルス。岩手県内でも様々な施設でクラスターが相次いでいる。
今回、番組の取材に2月以降クラスターが発生した八幡平市の病院が応じてくれた。

「BCP」の存在が運営支える

岩手・八幡平市の東八幡平病院。病床数は150。リハビリテーションを中心とする医療機関だ。この病院では、2月26日に職員1人の新型コロナウイルスへの感染を確認。その後、入院患者や他の職員にも陽性者が相次ぎ、最終的には42人の感染が確認された。

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及川忠人院長は発生当初をこう振り返る。

東八幡平病院・及川忠人院長:
入院患者さんの平均年齢が、たぶん80超えていると思う。深刻な状況になるんじゃないかと不安がよぎりました

この病院では、新型コロナウイルスの全国的な流行を受けて、有事の際にも事業を継続するための計画「BCP」をクラスター発生前に策定。職員が体調不良を感じた場合の対応などについて、細かく取り決め運用していた。しかし…

東八幡平病院・及川忠人院長:
感染してもその症状が隠れてしまうというのが、今回の新型コロナウイルスの特徴で、職員から(ウイルスが)入ってくることを防げなかった大きな要因かなと

いくら対策を取っても、すき間をつかれる。新型コロナウイルスの難しさを痛感する一方、このBCPでの取り決めが、その後の病院運営に有効に機能したことも事実だった。

東八幡平病院・及川忠人院長:
感染クラスターというのは急激に起こりますので、BCPなどがないと、どうしたらいいかわからないっていうパニックになってしまう。そういう対応というのは良かったと思う

その一つが、あらかじめ看護スタッフをチーム分けし、病棟ごとに割り振って固定していたことだった。

東八幡平病院・菊地賢次法人事務局長:
病棟ごとにスタッフを分けて、スタッフがナースステーションで交わらない体制を取ってきました。コロナが出た時も交流しないので、こちら側の病棟に感染しなかった

もともとこの病棟では、見取り図の上側と下側で職員を分けて配置していた。日頃から交わる機会も絶っていたため、感染者が出なかった側の病棟では通常の運営ができたのだ。

また、こうした空間とスタッフの区分けはリハビリの分野でも行われていた。従来1カ所だったリハビリの部屋をA病棟用、B病棟用、外来用と3カ所に分けるとともに、対応するスタッフもチーム分けした。

リハビリテーション部・及川真人部長:
ここがB病棟のスタッフが普段詰めている場所

スタッフの休憩室も3カ所に分け、普段から全く交わらないようにする徹底ぶりだ。

櫻井滋医師:
接触する人を特定してしまう。そうすると、特定された中から、もしコロナ患者が出た時にはそのグループだけ隔離すればいい。そこまで、もうかかるもの・うつるものとして対応する

こう語るのは、県のコロナ対策専門委員会委員長で、この病院の危機管理担当顧問を務める櫻井滋医師。病院のBCP策定にアドバイスをしていた。

そのBCPに基づく取り組みにより、リハビリでも影響を最小限にとどめた。感染者が出た病棟の患者についてもスタッフが防護具をつけながら体を動かす訓練を継続したという。

東八幡平病院・及川忠人院長:
休んじゃうと、やはりどんどん歩けなくなったり、それとの闘いがあって。感染下でもなんとか工夫しながらリハビリを継続していくことが、非常に重要なのではないか

BCPが機能するなか、多くの感染者は中和抗体の投与などにより悪化を免れた。
しかし、以前から症状が重かった患者2人は感染後に亡くなった。
櫻井医師は、厳しい対策を取っていても市中感染の広がりによってウイルスは入り込むとして、こう注意を呼びかける。

櫻井滋医師:
コロナウイルスがたくさんになれば、どうしても水が漏れる場所から入り込んでくる。若い方々が皆さん元気だから大丈夫と言っていますけれど、そういう方が増えれば必ず皆さんの家族がいる施設にコロナが入り込む。ご自分の身の回りだけはきちんと固めていただきたい

現在も会議などはオンラインで対応

病院では4月9日から入退院の制限などをすべて解除した。現在、職員向けの張り紙を増やすなど対策の再徹底を図っている。

東八幡平病院・菊地賢次法人事務局長:
更衣室の中では会話しないことを徹底しています

また、院内のリハビリスタッフの会議は現在もオンラインで実施している。

病院はどう新型コロナウイルスと向き合うべきなのか…クラスターとの闘いの日々を越えた今、及川院長は取材の最後、かみしめるようにこう語った。

東八幡平病院・及川忠人院長:
どこでも起こりうることなので、なかなか完ぺきに防ぐことはしにくいという面がありますので、そのときに最小限の損失で止めることは、とても大事なことなのではないかと思います

県内の医療施設や高齢者施設では、3月までの2カ月で26件のクラスターが発生している。事業継続計画「BCP」の重要性は、病院だけではなく、一般企業にもあてはまると言える。

(岩手めんこいテレビ)

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