急勾配の”難所”として知られるJR山陽線の瀬野~八本松間、通称「セノハチ」で活躍してきたある機関車が、3月に引退となった。
製造から50年以上。長年走り続けた名物機関車のラストランに密着した。

名物機関車の世代交代

マツダスタジアムのすぐそばにある、JR貨物の広島貨物ターミナル駅。

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地下トンネルを抜けた先にあったのは、今回特別に構内での撮影が許された、ある車両。
長年の定期運行を終え、翌日にラストランを控えた機関車「EF67形」である。

1970年に製造され、1991年に“後押し専用”に改造されてからは、1台の先頭機関車だけでは引っ張ることが大変な急な坂を、後ろからサポートしてきた。

しかし3月、その歴史に幕を下ろすことになった。
今回特別に、その車両の内部を取材することが許された。

JR貨物広島機関区・加川尚主任運転士:
こちらがマスコンハンドルといい、車でいうアクセルと同じ役割。これで前に行くのか、後ろに行くのかを決めている

アクセルの役割を担うマスコンハンドル
アクセルの役割を担うマスコンハンドル

(Q.この運転席にも思い出が詰まっている?)
JR貨物 広島機関区・加川尚主任運転士:

そうですね…あまりいい思い出がない(笑)覚えているのはトラブルばかり。古い車両なので、故障などもありますので

別の運転士は…

JR貨物 広島機関区・高瀬直明主任運転士:
暖房はあるが、クーラーはないということで、夏場は暑いなというのもありました

車内を扇風機と窓から入る風で冷やし、近年は朝晩を中心に運行してきた。
また、車輪が空回りして急な坂を登れなくならないよう、砂をまくタイミングにも気をつかったという。

公園の砂場の砂よりは大きめかなという印象
公園の砂場の砂よりは大きめかなという印象

続いてカメラは、この機関車の“心臓部”に接近。

端本進車両技術主任:
その当時、画期的なチョッパ制御という制御方式で、この機関車を動かしています

端本さんは、車両内の狭い通路で点検作業をしてきたという。
ラストラン前日のこの日も、入念に点検をしていた。

端本進車両技術主任:
最後まで見届けられるのはとても幸せなことだと思い、大変うれしく思っています

しかし、なぜ今回引退することになったのか。

JR貨物 広島支店・山田智章企画係長:
交換する部品の手配が大変になったりして、後継機を製作して、その役目を終えることになりました

次世代へバトンタッチ

3月29日、ラストラン当日。
急こう配な「セノハチ」を、紅葉色が鮮やかなEF67が最後の疾走を見せた。

ラストランを見届けた鉄道ファンは、「本当にご苦労さんですね、ありがとうございました」と感謝の言葉を口にした。

JR貨物によると、この先 解体するか展示するかは、現時点で決まっていないという。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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