4月に少年法が改正され、18歳と19歳の少年は大人と同じ裁判を受ける罪の範囲が広がるなど、17歳以下とは異なる扱いを受ける。法律の改正で、犯罪を起こした少年の扱いはどのように変わるのか、その最前線となる少年刑務所を取材した。

「特定少年」として17歳以下よりも厳罰化

フジテレビ 社会部 司法担当・長谷川菜奈記者:
4月1日から改正少年法が適用され、罪を犯した少年をめぐる環境が大きく変わります。その内容の柱は、民法では新たに成人となった18歳と19歳について、少年法の対象のままにする一方、特定少年として17歳以下よりも厳しく扱うことです。具体的には、家庭裁判所ではなく、大人と同じ裁判を受けるケースが広がります。

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これまでは、原則殺人罪などの罪に限定されていましたが、人が住む建物への放火や強盗罪なども普通の裁判を受ける対象となります。

これによって、特定少年が収容されることが増えそうになるのが“少年刑務所”なんです。

加藤綾子キャスター:
少年院っていうのもありますけど、少年院とこの少年刑務所って何が違うんですか?

社会部 司法担当・長谷川菜奈記者:
少年院は少年少女の保護処分を行う施設で、社会復帰に向けた矯正教育を主に行います。これに対し、少年刑務所は“刑罰”が第1目的の施設で、未成年に対しても刑務作業が課せられます。「教育の施設」と「刑罰の施設」という大きな違いがあるわけです。

今回の法改正によって、少年刑務所はより重要度が増すことになります。その少年刑務所を今回取材してきました。

「死ぬまで償い続ける」危険運転で友人が死亡

社会部 司法担当・長谷川菜奈記者:
取材したのは、全国に6カ所ある少年刑務所のうちの一つ、埼玉県の川越少年刑務所です。罪を犯した少年は、成人の刑務所と同様に厳しい規律の下で過ごすことになります。

この刑務所に収容されている、ある少年に話を聞いてきました。この少年は、18歳のときに130キロで車を運転して事故を起こし、一緒に乗っていた友人を死亡させました。そして、危険運転致死傷などの罪で3年以上5年半以下の懲役刑の判決を受けました。

少年刑務所に収容中の少年:
遺族の中の一人の方から、「お前は自分のしたことが分かっているのか?もうお前がどれだけ何をしても、あいつは帰ってこないんだぞ」っていうことを言われて。死ぬまでずっと償い続けなきゃいけないんだなって思いました。

社会部 司法担当・長谷川菜奈記者:
このように罪を反省していた少年は今、少年刑務所の中で刑務作業を行うとともに、社会復帰に向けた勉強をしています。この日行われていたのは、交通ルールなどについての指導です。

指導などは穏やかな雰囲気でしたが、建物内はやはり刑務所ならではの雰囲気があり、受刑者が教官から許可を得て何かをする様子を見ると、行動が制限されているんだなという印象を受けました。

少年院では、原則20歳になると自動的に退所できる場合もありますが、少年刑務所では判決通りに刑期を過ごす必要があります。さらに少年刑務所に入ると、犯罪の履歴「前科」が残ります。そういう意味では、少年刑務所の方が世間からの目は厳しく、就職活動で支障が出るなどがあります。

”実名報道”をどう思うか 刑務所での成人式も

社会部 司法担当・長谷川菜奈記者:
私はこの少年に聞きたかったことがあります。今回の改正で、これまで匿名での報道だった18歳19歳の特定少年について、実名報道が可能になることです。際に実名報道をするかどうかは報道機関の判断ですが、仮にこの少年が改正後にこの事故を起こしていたとしたら、実名が報道されていた可能性があります。実名公表について、事故の前はどう思っていたのか聞いてきました。

少年刑務所に収容中の少年:
(事故前は)まだ少年扱いだから、もし何かやって捕まっても名前も出ないし、顔も出ない。そういう施設(少年院など)で生活して外に出れば、またいつも通りの生活ができるっていう、そういう考えをしている部分が結構多かった

加藤綾子キャスター:
やはり「匿名だから」と意識というのがあったということですよね。

社会部 司法担当・長谷川菜奈記者:
それが今回の法改正につながっているんです。この少年は、2022年1月に少年刑務所の中で成人式を迎えました。成人式には3人の少年が参加し、普段は作業服の少年たちもスーツに袖を通します。式では少年それぞれが壇上に上がって、罪への反省と成人の誓いを述べました。

少年刑務所で成人式を迎えた少年:
私が生きてきた20年間は、たくさんの人に迷惑をかけてしまった20年間でした。それをとても後悔しています。大人としての自覚をしっかり持ち、今まで以上に自分の行動一つ一つに責任が生まれるということを理解して、正しい行動をとれるように心がけます。

社会部 司法担当・長谷川菜奈記者:
式典では、この日は特別に保護者も参列が許可され、刑務官が親からのメッセージを代読しました。

親からのメッセージを伝える刑務官:
あなたが生まれた時、かわいくてかわいくて、どうか元気に健やかに育ってほしいと願いながら育ててきました。その気持ちはこれからも変わりません。生まれてきてくれてありがとう。帰りを待っています。

社会部司法担当・長谷川菜奈記者:
成人式は、社会復帰に向けた教育として実施されています。今回の改正で18歳19歳の特定少年が増えると、塀の中で成人式を迎える少年も増える可能性があります。法務省は、少年刑務所の中で18歳や19歳の少年には、大人として扱われることの社会教育が必要と判断し、責任を自覚させるプログラムを準備しています。

詐欺の受け子など、抑止効果に期待

加藤綾子キャスター:
実名が出るということが抑止につながることを期待したいんですけれども、法改正でどういった効果が期待できるんでしょうか?

住田裕子弁護士:
実名報道というのは、例えば振り込め詐欺で「少年だからいいじゃないか」という形で、受け子に簡単に引きこまれる。その抑止効果というのは大きいと思うんですね。特定少年に関して、成人並みに刑罰の可能性が広がりますが、実は少年法以外にもう一つ、刑法改正が閣議決定されていまして、拘禁刑という形で禁錮と懲役が一本化するんです。

住田裕子弁護士:
そして、作業内容については個別具体的に、例えばこの成人向けに社会に出たときに職業訓練、学力向上のため、高齢者には高齢者向けに、という形で多様なプログラムができます。そういう意味でも、少年刑務所の刑務作業内容が多様化して社会復帰を目指すという方向では、私はこれから望まれると思います。

加藤綾子キャスター:
きめ細やかな対応が期待されるということですね。

(「イット!」3月23日放送より)