その人気と、才能あふれる注目選手の登場は今年もとどまることを知らないのだろうか。今季、年間38試合が予定される女子プロゴルフツアーの賞金総額は、過去最高の42億9600万円を記録。

今から10年前の2013年に、34億1500万円で過去最高となって以来、驚くべき上昇カーブを描き続けている。

そんな中、3月25日には今シーズンの第4戦としてアクサレディスゴルフトーナメントが開幕する。こちらも賞金総額が2000万円増額され、1億円の大台に到達した注目の一戦だ。

その戦いの舞台に立つ『黄金世代』を中心とした注目の女子プロゴルファーたちが、今季にかける目標を思い思いに書き記した。それぞれがインタビューで語った言葉や、絵馬に記した抱負をたどると、人気の秘密が見えて来る。

賞金女王・稲見萌寧 『まず1勝!!』

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昨シーズン9勝を上げ、獲得賞金2億5519万円で賞金女王に輝いた稲見萌寧(22)。

自らを「黄金世代」と「ミレニアム世代」に挟まれた「ハザマ世代のダイヤモンド」と表現するが、ゴルフ界で日本人初となる五輪銀メダリストは、圧倒的な練習量で知られる努力家だ。

まずは大躍進を遂げた昨年の年末、いつまで練習を続けて、お年始はいつから打ち始めたのか聞いてみた。

「年末は31日の(午後)5時くらいまで練習して、年始は1日の(朝)9時くらいから練習しました」

ーー年末年始らしいことは?
31日の夜は10時半くらいから成田山の方に行って、屋台だけ食べて除夜の鐘を聞いて帰ってきました。(笑)

頂点に上り詰めても、練習への姿勢が変わることのない稲見。平均ストローク1位、平均バーディ数1位、パーオン率1位など、昨シーズンの圧倒的なスタッツが、練習に裏付けられたものであることに疑問をはさむ余地はない。

五輪の舞台で日本ツアーの実力を証明した賞金女王は、さらに磨きをかけたショットでどんな高みを目指すのか。絵馬に書いた今年の抱負を読み上げて貰った。

「何をみなさん期待してますかねー」

ーーそうですね。今年中に永久シードとかでしょうか。
やばい、やばい、やばい(笑)。

ーーお願いします!
ジャジャン!(『まず1勝!!』と書いた絵馬を出す稲見。インタビュアーは驚きを隠せない)
やっぱり去年は去年なので、今年は今年で謙虚に行きたいと思っています。謙虚、大事なので。

ーーまあでも稲見プロらしいですね。では1勝をかなえたら次は?
年間複数回優勝です。やっぱり年間何勝っていうよりも、まず毎年、毎年1勝はあげていたいっていうのは、ずっと本当に最初のプロデビューから思っているので、そこは1番譲れないですね。

ーー自分のことをハザマ世代のダイヤモンドと言ってきましたが、今年は?
変えないです。う~ん、私は常にプロデビューからずっと変わらずにいたいなって。

ーーカットしてよろしいですか?(笑)
しないで、しないで(笑)。

小祝さくら『賞金女王』

コロナ禍の影響が吹き荒れたゴルフ界にあっても、3シーズン連続で全試合に出場している『黄金世代の鉄人』こと小祝さくら(23)。

昨シーズンは賞金女王争いでトップに立つも、終盤に逆転を許し、賞金ランキングは3位(2億42万円)。オフにスイング改造したショットで雪辱を期す。

ーー昨シーズンは1年半にわたるシーズンでしたけども、惜しかったですね。
そうですね、前半戦が本当に想像以上に成績が良くて、そこからの全然伸ばせない感じが凄くあったんですけど、でもトータルしたら凄くなんか色々あったんですけど、充実した1年だったなと思います。

ーー賞金女王はどのあたりから、「よし、行けるぞ」みたいな感覚を持ちましたか?

う~んと、あのCAT Ladies(昨年8月、7アンダーで優勝)を終えた時点くらいで、まあ本当に頑張ったら行けるんじゃないかなっていうのがあったんですけど。でも本当に試合数もすごいたくさんあるので、油断できない部分だったり、あと勢いのある選手もたくさんいたので、本当にそういう気持ちはありましたね『頑張らなきゃ』っていう。

ーーあとここを頑張れば届くっていう、手応えみたいなものは、つかんでいますか?あとここを頑張れば賞金女王みたいな…。
(考えて…)いや、そんなにないです。

ーーないですか、そうですか(笑)。それでは今シーズンの抱負を見せてください。
今年の目標はこれです。(少し笑いながら『賞金女王』と書いた絵馬を出す小祝)

たぶん去年も同じだったとは思うんですけど、本当に今年はリベンジ、去年のリベンジで、今年こそは頑張りたいなっていうので、これにしました。

ーーツアーで試合を戦った後の記者会見のコメントなども本当に我々楽しみにしてますので、今年もおもしろワード、よろしくお願い致します!
ありがとうございます。

西村優菜『複数回優勝』

昨シーズン、4度の優勝を果たすとともに、JLPGAのビューティオブザイヤーを受賞したのがこの西村優菜(21)だ。調子の良し悪しに関わらず、プレー中に見せる笑顔でファンを魅了している。

身長150センチと小柄ながら、それをカバーする技術で、今季平均バーディ数では1位、さらに平均パット数でも1位を誇る2000年生まれのミレニアム世代。昨シーズン賞金ランク5位(1億7525万円)から目指すものは。

ーービューティオブザイヤーと呼ばれるのはいかがですか?
なんかちょっと恐れ多いですね、恐縮です。
(気持ち的には)笑顔でプレーしようっていうのは心がけていますし、やっぱりそういう賞をいただいてからも、ちょっと内面から、もう一度素敵な女性になれるように、心がけるようにしています。

ーービューティオブザイヤーを貰って、周りからいじられたりしますか?
まあ、いじられているんですかね、はい(笑)。

ーー抱負をお願いします。
抱負は『複数回優勝』です。
絵馬にはこの1つしか書けなかったんですけど、実は(抱負は)2つありまして。複数回優勝っていうのは1番達成したい目標で、やっぱり年間2、3勝勝てる選手っていうのは凄く強いと思うので、まずはここを目標にしています。

あとは海外のメジャーに挑戦したくて、2022年は挑戦の1年にしたいと思っているので、そこにいけるように、しっかりランキングを上げていきたいなと思っています。
もともと最終的な目標が「海外メジャー優勝」なので、そこに向けてどんどん進んで行きたいので、まずは一つ目のステップかなと思っています。

ーー古江プロが先にアメリカ行きますけど、いかがです?
いや、さみしいですね、さみしいんですけど、でも本当にすごく尊敬するプレーヤーなので、頑張って欲しいなっていうのもありますし、早く追いつきたいっていう気持ちもあります。

ーーLPGAの“ミニモニ”として(笑)。あと、余談ですが字がお上手ですね。
本当ですか?嬉しいです!

勝みなみ『笑顔溢れるプレーをする』

ツアー通算5勝(メジャー1勝)を挙げた黄金世代の大黒柱・勝みなみ(23)。

身長157センチと女子ゴルフ界でも身体は決して大きくないが、女子プロゴルフツアートップクラスの飛ばし屋としてティーショットに注目が集まる。昨シーズンのドライビングディスタンスは2位。平均254ヤードを誇る飛距離を武器に、賞金ランクは7位の成績をおさめた。(1億2798万円)

ーー勝選手は黄金選手のリーダー的存在というか、喋りもプレーも含めてですけど、どんどん若い選手が出て来ることを、どう感じていますか?
やっぱり嬉しいことですし、私たちもやる気が出てくるので。

ーーでも勝プロは若いのにベテラン感がすごいですよね。
よく言われます。なんか自分はまだ新人のつもりでいるんですけど…(笑)。

ーーそういう世間の見方と、感覚のズレはないですか?
だいぶあります。喋ってると『しっかりしてるね』って言われるんですけど、全然しっかりしてなくて。日常生活とか、本当だらしないので、そことのギャップがスゴイ申し訳なくて。
本当にだらしないなぁと思うので、気をつけます。

ーー二度寝したりとかも…?
よくありますね。

ーー完璧主義なところはいかがですか?
ゴルフに関しては完璧主義なとこはありますね。ゴルフの時以外はマジでテキトーです。

ーーそのオンオフが大事なのかもしれないですね。
そうですね(笑)。なんかもう、ありがとうございます!

ーー絵馬の抱負をお願いします。
『笑顔溢れるプレーをする』です。
昨シーズンは、後半戦は特に笑顔でやれてたかなと思うんですけど、調子が悪い時だと笑顔を忘れちゃったり、ゴルフの楽しさを少し忘れてるなって思ったので、どんな時でも笑顔で、ゴルフの楽しさを皆さんにお届けできたらと思っているので、1年間笑顔で戦えるように頑張りたいと思います。

ーー具体的には何勝などありますか?
あります。一応あります。複数回優勝を今まで2回したことがあるんですけど、どっちも2勝なんですよ。3勝以上したいという目標と、メジャー勝って特別感があったので、今年も勝ってみたいです。

ーーメジャーは何が違うんでしょうか?
なんか雰囲気とか、自分のプレーに対する姿勢とかも変わって来るのかなって感じています。
勝ちたい思いが強いからなのか。いつもよりも集中が増すし、面白いゴルフが出来ているように思います。

ーーゾーンに入っている様な感じがしましたよね。
そうですね。日本女子オープンとかは特に自分が自分じゃないみたいな感じでプレーしていたので、それをまた一回感じてみたいなって思いました。

ーーそこには、だらしない自分が全然いなかった?
はい(笑)。

吉田優利『シーズン3勝以上』と『メジャー優勝』

プロデビューしたシーズンで2勝をあげた2000年生まれの「ミレニアム世代」。1月に放送されたジャンクSPORTSでは、美意識の高さから『コスメ番長』として話題になったのがこの吉田優利(21)だ。

昨シーズン賞金ランクは22位で7528万円を獲得。2シーズン目の飛躍に期待が集まる。

ーーちょうど去年の今頃に新成人ということで「20歳の誓い」を伺ったんですけど、何を書いたか覚えていますか?
「聡明」だと思います。

ーーなぜ『聡明』という言葉を選ばれたのでしょうか?
これは二十歳の誓いだけじゃ無くて、毎年自分の目標の一つとして掲げているんですけど、今はプロゴルファーとしてやっていますが、プロゴルファーとしても人間としても社会の中で自立していけるようにっていう目標があるので、しっかり物事見据えて、聡明な女性になれたらと思っています。

ーーさて絵馬に書いていただいたものを、お願いします
今年の抱負は『シーズン3勝以上』と『メジャー優勝』を目標にしています。

ーーその目標を掲げた理由は?
去年は2勝する事が出来て、すごく良い年だったなと思うんですけど、決して満足している訳ではないので、さらに向上出来る様に、さらに大きな目標を掲げようと思って。

特に3勝以上はもちろんなんですけど、メジャー優勝というのは自分の中で高い位置付けにあるものなので、そこをクリア出来れば良いなと思いました。

上田桃子さん(同じ指導者に師事する姉弟子)も16勝されているんですけど、(自分で)1勝して16勝がどれだけすごいかを改めて感じたので、桃子さんに負けないように、私も目標を立てられたら良いなと思います。

大里桃子『複数回優勝!!』と『応援団を増やす』

アスリートの中でも特にゴルファーに多く、プレー中に突如自分の思い通りに身体が動かなくなる症状で知られる「イップス」。昨シーズン、その症状に苦しみながらもツアー通算2勝目を上げたのがこの大里桃子(23)だ。

ーー昨シーズンは2勝目、おめでとうございます。どんな一年でしたか?
そうですね。序盤はちょっとパターがイップスになってしまって苦しい出だしだったんですけど、途中でいいきっかけを見つけて、5月から2位以上が5週間続いて神がかったというか、そこが転機というか。
そこでバーンと行けたんで、気持ちよくプレーできました。

ーーパターのイップスはどういう状態でしたか?
私の場合は(パターを)引けるんですけど、そこから降りてこないんですよ。引けるんですけど。「ダメだ~」みたいな。もう一回やり直したりとか、頑張って(パターを)下すんですけど、まっすぐ当たらない。
もう30センチとかでもカップ触らないみたいな感じで「何やってるの!」みたいな感じでした。

この大里、デビューイヤーにはプロテスト合格から史上最短の23日目で初優勝を果たし、身長も171センチと、恵まれた体格と才能の持ち主だ。

イップスを克服した昨シーズンの賞金ランクは12位(1億513万円)。ここからどんな飛躍を目指しているのだろうか?

ーー今シーズンの抱負をお願いします。
『複数回優勝!!』と、『応援団を増やす』です。

ーー上は分かるんですが、2つ目は?
いま、固定で全国に応援に来て下さる方が3人位いらっしゃるんですけど、結構(他の選手は)大人数で応援団に来てもらっている方もいるんですよ。凄い憧れるんですよね。
私も、さらに沢山の方に応援していただけたらな、という気持ちで書きました。

ーーどうやって増やそうと思います?
どうしましょう、難しいですね。どうやったら増えるんですかね。

ーーその笑顔じゃないですか?
笑顔…ですか。そうですね。私、結構ブスくれちゃう癖があるので、笑顔に気をつけます。
なんか、第一印象は大体怖いって言われるんですが、本当は人見知りなんですよ。心を開いたら凄い友達とかにもはっちゃけたりするんですけど、やっぱ最初の頃は怖いかもしれないです。

ーーボギーの後も笑顔で。
そうですね、頑張ります(笑)。

“新世紀世代”山下美夢有『2勝目優勝』

「黄金世代」あるいは「ミレニアム世代」より若い、2001年生まれの「新世紀世代」の注目株が、この山下美夢有(20)だ。

この世代には全米女子オープンを当時19歳で制した笹生優花や、今シーズン初戦のダイキンオーキッドレディスでプロ初優勝を果たした西郷真央といった新しい才能があふれている。

もちろんこの山下も、2021年にプロ初優勝、さらにリカバリー率で年間1位(グリーンにパーオン出来なかったホールでもスコアを崩さず、パー以上のスコアを残す確率でトップ)を獲得した実力の持ち主だ。昨シーズン、賞金ランキングで13位(1億456万円)に食い込み、さらなる飛躍を目指す。

ーーあらためて今のご自身の武器は何だと思いますか?
ボギーを打たないゴルフかなと思います。なんかそこまで実感がなかったんですけど、やっぱりそこ(リカバリー率1位)が1年間を通して武器だったのかなと思います。

ーー優勝したときもそうおっしゃってましたね。「ボギーをたたかないゴルフを練習してきた」と。そんな山下プロの今シーズンの目標・抱負を教えてください。
目標はこれです。『2勝目優勝』を目指してがんばります!
本当に1勝することができたので、今年も優勝を目指して、2勝目を目指して行けたらいいなと思っています。

ーー昨シーズンは、届きそうで届かなかった試合もありましたが。
そうですね、本当に結構良いところまで最終日で回ったりとかもあったんですけど、なかなか2勝目っていうのが難しかったっていうのがありましたね。

ーーフジサンケイレディスでは最終日に稲見プロと同じ組で回って、惜しくも優勝を逃しましたが?
やっぱり(稲見プロは)技術面とかでも上手なので、悔しかったのは悔しかったですけど、やっぱりすごいなと思いました。

ーーその後はヤマハでも優勝争いをしましたが、正直どう思っていますか?
いやもう「また?」「またかいな!」って感じでしたね。
やっぱり1番は精度、ショット力とパッティングが1番大事だなと思いました。

ーーぜひ2勝目を目指して頑張ってください
ありがとうございました!!


注目プロのインタビューを通じてみなさんは何を感じ取っただろうか?
ハツラツとした若さの中に秘められた向上心。実力伯仲の過酷なトーナメントを戦い抜く強い精神力を持ちながら、等身大の自分をさらけ出して見せてくれる親近感。そして何より、応援してくれるファンを大切にする謙虚さなど、多くの人々を惹きつけるのも頷けるのではないだろうか。

この週末も、戦いは続く。
桜の開花が進む宮崎で、トッププロによって繰り広げられる高度なプレーと、若さあふれる笑顔に注目して頂きたい。

(取材:フジテレビゴルフ中継班 構成・文:吉村忠史)

アクサレディス in MIYAZAKI 2022 最終日
3月27日(日) 午後4時5分~
フジテレビ系列全国ネット放送
https://www.fujitv.co.jp/golf/axaladies/index.html