東日本大震災・原発事故から11年。
この間、東京電力・福島第一原発では、さまざまな作業や調査が行われたが、廃炉の道筋はまだ見えていない。
12年目の廃炉作業は、最難関と喫緊の課題。その両方で準備を実行に移す、重要な局面を迎える。

1号機で初確認…デブリ取り出しは最も困難な作業

2051年の廃炉完了に向けて、作業が進む福島第一原発。

廃炉完了に向けて作業が進む福島第一原発
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最も困難な作業が、融け落ちた核燃料と金属などが混ざって固まった「燃料デブリ」の取り出し。1号機・2号機・3号機には約880トンの「燃料デブリ」があると推計されているが、どこに、どんな状態であるのか具体的なことは、今もわかっていない。

2号機格納容器内部の映像=東京電力提供

福島テレビ・日野佑希人アナウンサー:
ガレキなどの撤去は進みましたが、鉄骨はむき出しのまま。依然として、一目で原発事故の激しさを物語る、福島第一原発1号機です。廃炉作業も最も難航していましたが、2022年に入って大きな動きがありました

2022年2月。
東京電力は、1号機の原子炉格納容器に調査用のロボットを入れて調査を行った。そこでカメラが捉えたのは、ゴツゴツとした堆積物。1号機で初めて確認された「燃料デブリ」と見られる物体だ。

1号機で初確認された「燃料デブリ」と見られる物(右下)

福島第一廃炉推進カンパニー・高原憲一リスクコミュニケーター:
デブリ取り出しということに対する一歩一歩、着実な一歩ではありますけれども。これを足掛かりに、今後の調査も含めた対策を行っていくことで、みなさまに安心と安全を伝えられていくことになるかなと考えています

福島第一廃炉推進カンパニー・高原憲一リスクコミュニケーター

廃炉作業へ堆積物確認…デブリ「裏付ける映像」

今回の「一歩」は、廃炉作業全体にとって、どんな意味をもつのか?
廃炉を担当する経済産業省の木野参事官とともに、1号機と造りが似ている5号機に、福島テレビの取材班が入った。

廃炉を担当する経済産業省の木野参事官と、5号機に入った福島テレビ・日野佑希人アナウンサー

福島テレビ・日野佑希人アナウンサー:
格納容器内の底の部分まで降りてきました。ここに入り口みたいなものがありますね

経済産業省・木野正登参事官:
調査の映像では、この開口部付近に塊上の堆積物が確認されたり、またこの床面とかにも塊のようなものが確認をされています

福島テレビ・日野佑希人アナウンサー:
実際、このあたりまで出てきているというのは、どういうことが考えられますか?

経済産業省・木野正登参事官:
この中、原子炉が真上にあります。なので、上からデブリが落ちてきて、この開口部から融け出してきているということが想定されますね

これまで、1号機の核燃料はそのほとんどが融け落ち、圧力容器から格納容器に流れ出て、底に溜まっていると推定されてきた。

1号機の格納容器内の図解

経済産業省・木野正登参事官:
すべてが落ちているということは、今回の開口部からも外に相当出ているだろうという予想をしてきたわけで、この映像はそれを「裏付ける映像」であったと思っています

2号機の「燃料デブリ」 年内に試験的に取り出しへ

デブリと見られる物体を確認できた今回の調査。どうやって、そしていつから取り出すのか。見通しは立っていないが、こうした新事実の積み重ねが、廃炉への一歩となる。

経済産業省・木野正登参事官:
1号機は、これからどうやって取り出すのかというのを考えていかなければいけないので、まずその映像が確認できたと。デブリの可能性があるものがみえたということは、工法を考える上で非常に役に立つ情報ではあります

経済産業省・木野正登参事官

2号機の「燃料デブリ」は、一部をつかんで持ち上げられることがわかっていて、2022年内に数グラム程度を試験的に取り出す計画。

2022年1月には、イギリスで専用に開発されたロボットアームが楢葉町の施設に到着。実物大の原子炉の模型で、訓練を続けている。

イギリスで専用に開発されたロボットアーム 実物大の原子炉の模型で訓練を続けている

東京電力の廃炉の責任者は、これからの1年を「燃料デブリ取り出しのスタート地点に立って走り出す年」と表現する。

福島第一廃炉推進カンパニー・小野明最高責任者:
1号機にしても色々な調査の準備が整って、ことし実際調査に入る。2号機も試験的取り出しの準備が整って、2022年に実際 取り出しにチャレンジするという、ある意味で2022年は非常に象徴的な年だと思っています

福島第一廃炉推進カンパニー・小野明最高責任者

処理水の海洋放出へ準備は着々…先進技術も導入

一方、約1年後に迫っているのが、処理水の海洋放出。
トリチウムの濃度を国の基準の40分の1以下に薄め、海底トンネルを通して沖合い1キロの地点から海に放出する計画。

処理水の海洋放出(計画イメージ)

処理水の貯蔵量は130万トン。タンクの95%が埋まっていて、先送りできない作業。

福島テレビ・日野佑希人アナウンサー:
5・6号機の海側では処理水の海洋放出に向けて、放出直前の処理水が入るためのスペースを作る工事が行われています。18メートル近くまでもう掘られているということで、手前側、もう底が見えないほど深くなっています

放出に関わる設備の建設に向けて、準備は着々と進められていた。

福島テレビ・日野佑希人アナウンサー:
分析に必要な機材がいたるところに置かれています。この場所は放射線の影響を受けないために地下に作られていまして、処理水関連のさまざまな分析がこの場所で行われます

処理水に含まれるトリチウムの濃度などを測定する「分析室」

ここは、処理水に含まれるトリチウムの濃度などを測定する「分析室」。トリチウムの濃度を基準以下まで下げなければ放出できないため、正確な分析は欠かせない。

作業員:
試料の情報を登録、精製水の情報を登録

作業の正確性や効率化を図るため、視界に入れると自動で情報を登録できる先進技術も導入。

海洋放出の実施に向けては、分析施設も拡大・強化する計画。

福島第一廃炉推進カンパニー・高原憲一リスクコミュニケーター:
当然、ALPS処理水の排水をするということになって、さらに分析数は増えていくことは間違いないと思っています。これにあたっては、分析技術をもったリソースを十分にこれからも継続的に確保していくことが、われわれに必要なことだと思っています

準備が加速する一方、解決しなければならない課題も。
2022年3月5日に、福島テレビが福島民報社と共同で行った県民世論調査。
処理水の海洋放出について「国の内外で理解は広がっていると思うか」という質問に、「広がっている」と回答した人が38.7%にとどまった一方、「広がっていない」は52.5%にのぼった。

2022年3月5日に福島テレビが福島民報社と共同で行った県民世論調査

風評がおこらないよう、理解を広げていくこと。
そして「燃料デブリ」の試験的な取り出しを確実に実行して、廃炉への道筋をつけること。

2051年の廃炉完了という“約束”を果たすために、喫緊の課題と最難関の行方を左右する、12年目の廃炉作業が始まる。

(福島テレビ)

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