いよいよ25日に開幕、オープン戦も熱を帯びてきたプロ野球。日本一奪還へ並々ならぬ闘志で雪辱を誓う巨人の絶対的エースに迫る。

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人生で初めての苦しいシーズン

これまで最多勝を3回(17年・18年・20年)、先発投手最高の栄誉・沢村賞を2回(17年・18年)受賞している巨人の絶対的エース菅野智之(32)。しかし昨季はケガや不調により、10日間は出場ができない登録抹消を4回経験した。9年目を自己ワーストの6勝(7敗)で終え、チームもリーグ3連覇を逃した。

そんな苦しいシーズンで感じていた異変を菅野はこう明かす。

「人生で初めてですかね。そういう経験というのは」

最大の武器「スライダーの修正」

雪辱を期して臨んだ今年のキャンプ。2月1日の初日からブルペン入りするなど精力的に投げ込みを行う菅野がこのキャンプで取り組んできたこととは…

「今は重点的にスライダーを見つめ直そうということでやっています」

キャンプのテーマに掲げたのは、菅野の最大の武器「スライダーの修正」だった。ストライクゾーンから右バッターのアウトコースへ逃げるように鋭く曲がる変化球だ。実は昨季、この“伝家の宝刀”に異変が起きていたという。

「なぜか分からないですけどスライダーが曲がらなくなってしまった。スライダーで打ち取りたい場面でもスライダーを選択できなかった」

プロ9年目で初めて経験したスライダーの不調。最大の武器にかつての輝きを取り戻すため最後に沢村賞を獲得した4年前のように今年は100球を超える投げ込みを解禁。初心にかえりブルペンで腕を振り続けてきた。

新兵器・右打者の内角を突くスライダー

球威があり鋭く曲がる理想のスライダーを追い求める日々。その中で菅野が取り組むプラスアルファとは…

「今年に関しては右バッターのインコースのスライダー。左バッターからしてもボールゾーンから入ってくるそのボールを練習しています」

菅野にとってのプラスアルファ、それは右打者の内角を突くスライダーだ。通常スライダーは右打者から見るとストライクゾーンからアウトコースへ逃げていくように投げるのが一般的だ。

一方、菅野が取り組んでいるのは右打者のインコースからストライクゾーンへ入ってくるように変化するスライダー。打者からは最初はボールに見える球が鋭い変化でストライクゾーンに入ってくるため、このスライダーへの対応は簡単なものではない。

「投げきったらほぼ100%抑えられる」

では、どういった場面で有効的に使えるものなのだろうか。

「基本的には軸になるボールではないので、ただあるというだけでバッターは意識すると思いますし、1試合に1球使うか使わないか。ただ使う場面というのは間違いなくその試合を左右する重要な場面で使うと思う」

何を投げても対応され、攻め手に行き詰まった場面。そんな窮地を打開するいわば秘密兵器のような球種だという。

「最終手段としてあるボールだと思うので、投げきったらほぼ100%抑えられると思います」

「身を粉にして投げる覚悟」

輝きを取り戻しつつある伝家の宝刀、そしてプラスアルファとなる秘密兵器を携え挑む今季。エース菅野が見据える先にあるものは…

「去年は1年間働けなかったという悔しさもありますし、ジャイアンツという球団は日本一を取って初めて評価される球団だと思っているので、僕が入団して10年目になりますけれども、まだ一回も日本一になれていないので身を粉にして投げる覚悟ではいますし、やれることは全てやりたいなと思っています」

絶対的エースとしての強い覚悟を語る菅野。“伝家の宝刀”スライダーにさらに磨きをかけて進化を続けている菅野の今季の活躍に期待だ。