"体験"を贈る「パン専用ギフト券」

おいしい体験を贈ることで、地域が元気になる仕組み作りに迫った。

全国に253店舗を構えるベーカリーチェーン「ヴィ・ド・フランス」。
衣にコーンフレークを使用したかりかりのチーズカレーパンや甘いリンゴとカスタードクリームがのったサクサクのアップルパイなど、人気のパンはもちろん、サンドイッチなど常時100種類ほどの商品を扱っている。

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この店ではこの冬から、レジ横に新たなQRコードが設置された。
そこには「全国パン共通券」の文字。

これは、"パン専用"のオンラインギフト券。
受け取った共通券からカメラを起動してQRコードを読み取ると、パンと引き換えることができる。

全国パン共通券は、贈りたい人が200円、500円、1,000円の中から商品券を購入し、贈りたい相手にLINEやメールなどでURLを送る。
受け取った人は加盟している全国約500店舗のベーカリーで、金額分のパンと引き換えることができる。

加盟している店には手数料の数%を引かれた金額が支払われる仕組みだ。

このサービスを運営するのは、地域のベーカリーのパンを独自の方法で冷凍し、オフィスや自宅などに届けるサブスクリプションサービスなどを運営してきた「パンフォーユー」。

パンフォーユー・矢野健太代表:
今までパンフォーユーとして、冷凍でベーカリーの店舗外にいかに売り上げを作るかといった支援をさせてもらっていたが、コロナ禍で店頭の売り上げもどうにかしたいといった声をもらうようになって、今までいらっしゃらないお客さまの新規流入につながると思っています。

近くのベーカリーに来店する"きっかけ"に。
加盟している店も新たなファンづくりに期待する。

ヴィ・ド・フランス 企画部営業企画課・森れい佳さん:
サラリーマンやOLが中心の店なので、新しいお客さまにもっと来てもらえるように期待しています。1回使ってもらうことでお気に入りのパンを見つけたりとか、ヴィ・ド・フランスの良さをもっと味わっていただければ。

匂いや雰囲気、選ぶ楽しさなど店での体験を贈り、店頭の売り上げ増加を狙うこのサービス。
パンフォーユーが目指すのはベーカリーを中心とした地域経済の活性化だ。

パンフォーユー・矢野代表:
新しい"パン経済圏"をつくり、地域経済に貢献するというのを事業のミッションとしている。『お客さん』と『ベーカリー』のみならず、パンを売りたい方だとかこの事業を通じてより原料のことを知ってもらうとか、新しい配送網ができたりというところで、パン屋の周辺地域が盛り上がる。経済性を持って盛り上がるというところが新しいパン経済圏を創出したあとの成果。

まずはベーカリーのあらゆる課題を解決することによって、何か困ったことがあったら、パンフォーユーに相談しようという存在になれるように頑張りたい。

心が動き消費が生まれる「共感マネー」

三田友梨佳キャスター:
エコノミストの崔真淑さんに聞きます。
地域のパン屋さんを応援することにつながる今回の取り組みはどうご覧になりますか?

エコノミスト・崔真淑さん:
小麦粉の値上がりによって厳しい状況にあるパン屋さんを応援しようという仕組みだけではなく、パン専用のオンラインギフト券によってご当地のパン屋さんとのご縁だとか、パン屋さんの雰囲気を味わえる体験も贈れることは面白いと思います。

体験を贈ることで、ご当地のパン屋さんのファンだとか共感を集める契機にもなると思います。
特に地域活性化において今鍵を握ると言われるのが「共感マネー」というもので、人々の共感を軸にしながら消費や投資をいかに増やしていくかといった様相を示しています。

今回のパン専用のオンラインギフト券やご当地商品を応援するためのクラウドファンディングなども共感マネーの1つと言われています。

三田キャスター:
パンによって地域のお店とお客、さらには配送や原材料の生産者などが結ばれるパン経済圏をつくるには、「共感マネー」が鍵になりそうですね。

崔真淑さん:
経済圏というとどうしてもお得に買い物ができるとか、ポイント還元といったところに注目が集まりがちですが、パン経済圏の場合はいわゆる金銭的な損得だけではなく、むしろ共感だとか応援といったものが消費にいかに繋がるのか。この共感マネーの伸び方が鍵を握っていると考えています。

三田キャスター:
地域で共感マネーの輪を広げるにはテクノロジーとのかけ算も必要かもしれませんね。

崔真淑さん:
現状ではすでにご当地の商品を購入すると割引を受けられるといった決済の仕組みも導入されてきています。
ただ、ここにもまだ課題があって、自分が購入した商品が本当にご当地のものなのかが証明できませんでした。

しかし現状ではブロックチェーンといった仕組みが登場したことによって、自分が購入した商品が本当にご当地のものなのか、産地偽装はしていないのか、また、自分の消費は地産地消に繋がっているのかを証明しやすくなり、実証実験も始まっています。

テクノロジーと共感マネーのかけ算が地域活性化の鍵を握っていると私は確信しています。

三田キャスター:
ギフトをきっかけに新規でお客さんを呼び込めるというのはパン屋さんにとって大きなメリットだと思います。 そこからリピーターを増やすためには共感が重要なようです。

(「Live News α」2月23日放送分)