誰もがスマホやSNSのアカウントを持ち、“1億総メディア時代”と呼ばれる現代。JX通信社は「記者ゼロ人の通信社」として、ビッグデータやUGC(※)を利用した新たな報道のあり方をtoB(対企業)、toC(対一般消費者)の両面から模索しています。

そんなJX通信社の代表取締役社長・米重克洋さん(@kyoneshige)にフリーアナウンサーの徳田葵さんが同社の事業内容や目指すもの、これからのニュースのあり方などについて伺いました。

※UGC:User Generated Content(=ユーザー生成コンテンツ)。報道機関や企業ではなく、消費者自身がSNSやブログで生み出したコンテンツを指す。

テクノロジーで「報道」をアップデートする

自らを「仮想通信社」と位置づけ“ビッグデータとテクノロジーでニュースのあり方を変える”ことをビジョンに掲げるJX通信社。見据えるのは、情報社会における新たな報道の形です。

(右)JX通信社の代表取締役社長・米重克洋さん(左)フリーアナウンサー・徳田葵さん
(右)JX通信社の代表取締役社長・米重克洋さん(左)フリーアナウンサー・徳田葵さん
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――JX通信社はどんなビジョンやコンセプトのもと創業されたのでしょうか?

社名の「通信社」には、ニュースを作って届けるという部分に特化した報道のプラットフォームとしての意味合いが込められています。

機械化・自動化など、テクノロジーを通じて報道機関のアップデートに寄与するとともに、報道機関以外の企業様にもさまざまな情報サービスによって課題解決をご提供しています。

――記者ゼロ人の「仮想通信社」とは?

仮想通信社と一般的な通信社の最大の違いは、いわゆる“人海戦術”で行う業務フローがないことです。今までの報道機関は何百・何千人という記者組織を通じて情報を集めていました。

しかし我々は、ビッグデータや一般の方がアップロードするUGCの中に埋もれた、価値ある情報をテクノロジーで集めて届けることに取り組んでいます。要するに、今まで人がやっていたことを、機械的な仕組みを用いてバーチャルで行えるようになるのが「仮想化」ということです。

――人海戦術で行っていた業務をAIやデジタル技術に置き換えることで、人間は本来やるべき仕事により多くの時間を割けるようになるというわけですね。

おそらく全ての産業でDXという言葉に象徴されるデジタル化、機械化が進展していると思います。その中でも報道・メディアといった領域はどうしても人間の果たす役割が大きく、比較的アナログかつ労働集約的なモデルで運営されてきました。

しかし、その中でも業務フローを精緻に見ていけばデジタル化できる部分はかなり大きいんじゃないかと。我々は、自社の保有する自然言語処理や機械学習などのテクノロジーを使って、それらを自動化できるサイトやソリューションをご提供します。

“1億総メディア”の目でリスク情報を収集

2016年9月にリリースされたビッグデータリスク情報サービス​「FASTALERT(ファストアラート)」。リスク情報が速く簡単に入手できるとして、主要民放キー局、自治体、大手民間企業など幅広い機関に利用されています。

SNSなどから情報を収集するビッグデータリスク情報サービス「FASTALERT」
SNSなどから情報を収集するビッグデータリスク情報サービス「FASTALERT」

――「FASTALERT」は、メディアに対してどのような価値をもたらすのでしょうか?

FASTALERTは災害、事故、事件など、リアルにおけるさまざまなリスク情報を、“1億総メディア”の目で収集するサービスです。SNS投稿などのUGCを利用することで、目撃者の生の声をいち早くキャッチし、分析してお届けしています。

リスク情報を速く入手できるビッグデータリスク情報サービス「FASTALERT」
リスク情報を速く入手できるビッグデータリスク情報サービス「FASTALERT」

これまでの日本の報道機関では、電話をかけるなどして警察や消防に直接コンタクトを取り、人海戦術で情報を集める方法がスタンダードでした。

そうではなく、目撃者の方がその目で捉えた生の情報を即座に捉え、何が起きたかを分析してお届けすることで、取材にかかる時間や手間を大幅に削減することができます。

現場にいる目撃者の投稿を集め、緊急時の情報などを発信
現場にいる目撃者の投稿を集め、緊急時の情報などを発信

――情報源となるSNSはTwitterなどでしょうか?また、速報性のインパクトに驚きますが、情報の正確性についてはいかがですか?

Twitter、Instagramなど主だったSNSプラットフォームのほとんどに対応しています。複数のUGCを参照するとともに、投稿者の他の投稿や同時間帯の別の方の投稿などを照らし合わせて分析したり、あるいは人が確認するプロセスを設けたりすることで正確性を担保することに取り組んでいます。

情報というものはただ早く届けばいいというものではなく、フェイクニュースは昨今SNSにおける大きな課題となっていますので、「FASTALERT」もそうしたリスクと無縁ではないと考え、対策に力をいれています。

FASTALERT:https://fastalert.jp/

ビッグデータから“消費者の本音”を引き出す新たなマーケティングツール

先日リリースされた「KAIZODE(カイゾード)」。JX通信社のテクノロジーが報道領域ではなく、マーケティング領域で生かされる一般企業向けのサービスです。

――「KAIZODE(カイゾード)」のサービス内容をお伺いできますか?

「FASTALERT」にも使われているデータマイニング技術をマーケティングの課題解決に応用したサービスです。データマイニングとは、SNS上などに氾濫するビッグデータから価値ある情報だけを抽出することを意味します。

これまで一般消費者の声を聞くためにアンケートなどさまざまな施策が講じられてきましたが、それらには“本音を引き出すのが難しい”という課題がありました。一方で、SNSには消費者のリアルな意見があふれています。

「KAIZODE」では我々のデータマイニング技術で本音だけを抽出し、マーケティング担当者様などが顧客の解像度を高めるにあたって生かしていただくことを目指しています。このような手法を我々は「ソーシャルリスニング型のマーケティングリサーチ」と呼んでいます。

KAIZODE:https://kaizode.jp/

自社商品・サービスの画像をAIが収集する「ギャラリー」機能を持つ「KAIZODE」(※画像はイメージ)
自社商品・サービスの画像をAIが収集する「ギャラリー」機能を持つ「KAIZODE」(※画像はイメージ)

――企業のマーケティング担当者にとって、ユーザーの本音は非常に貴重な情報ですよね。それらを、人力ではなくAIで収集できるというのはかなりの強みなのでは?

おっしゃる通りです。SNS上のたくさんの消費者の声をマーケティングに生かそうという取り組みは今までもありました。しかし、問題は「無関係な投稿に必要な情報が埋もれてしまう」ということでした。

例えば「商品名」で検索しても、関係のない投稿が大量に引っかかるため、情報の選別に時間や手間がかかり、本来もっと注力すべき分析フェーズに使えるエネルギーが限られてしまっていたんです。

X通信社独自の「インサイトAI」を用いて顧客理解の解像度を高める「カスタマージャーニー」機能
X通信社独自の「インサイトAI」を用いて顧客理解の解像度を高める「カスタマージャーニー」機能

また、昨今はSNSに写真や画像を投稿するという消費者行動が一般化しています。例えば「このチョコレートおいしい!」という文言と画像だけで、商品名なしの投稿って結構ありますよね。

そのような文字化されていない消費者の声もマーケティング上、貴重な情報です。そこで「FASTALERT」の技術を応用し、お客様の声を必要なものだけ取りこぼしなく集められるサービスとして「KAIZODE」を作りました。

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――写真からもユーザーの声が拾えるとは…。まさに「解像度」を上げるということですね。具体的にどういった企業で導入されているのでしょうか?

一般向けの消費財、中でも食品・飲料など比較的SNSで投稿が多くみられる製品を提供されている企業での導入が広がってきています。

ある健康食品のメーカーでは、「どういったシチュエーションで自社の商品が食べられているのか」を分析することで、商品購入の動機や購入時の気持ち、継続購入を辞めた理由などを段階的に明らかにすることに「KAIZODE」を活用いただいています。

KAIZODE資料ダウンロード:https://kaizode.jp/resources/kaizode

「KAIZODE」にはマーケティングリサーチのほかにも活躍する場面があります。

――企業にとっていわゆる「炎上」のリスクも高まっています。炎上対策にも「KAIZODE」は効果を発揮するのでしょうか?

マーケティングと紙一重の部分もあるのですが、「異物が混入していた」「故障していた」「(スタッフや社員の)対応に不手際があった」といった内容がSNSに投稿され、急速に拡散されていわゆる炎上状態になることは現在頻繁に生じています。それらがダイレクトに業績に影響することも珍しくありません。

そこで重要なのが炎上の発端をいち早く察知し、できる限り早く初期消火的な対応に移るということです。その際、自社に関する情報を漏れなく収集できる「KAIZODE」は力を発揮するでしょう。

例えば炎上が広まる前と広まりきった後、たった数時間で対処方針は大きく変わります。企業の損害リスクを最小化するにあたって弊社のデータマイニングテクノロジーは力を発揮するはずです。

KAIZODE:https://kaizode.jp/

「ユーザー自身がニュースを作る」ニュースアプリ

累計500万DLを突破した「NewsDigest(ニュースダイジェスト)」は、JX通信社唯一のtoCサービスです。ニュースの定義が大きく広がる中で、速報性以外にも独自の特徴を持つと米重さんは話します。

累計500万DLを突破したニュースアプリ「NewsDigest」
累計500万DLを突破したニュースアプリ「NewsDigest」

■NewsDigestダウンロードリンク
iPhone 版:https://app.adjust.com/4eaelp8?campaign=FNNPO
Android 版:https://app.adjust.com/2bv299t?campaign=FNNPO

――「NewsDigest」はどのような特徴を持つアプリなのでしょうか?

JX通信社が唯一、一般消費者の方々に向けてご提供しているサービスで、どこよりも速く速報をお届けする無料ニュースアプリです。また、スピード以外の特徴として、ユーザー自身がニュースを作る仕組みを設けている点があります。

「NewsDigest」には情報投稿窓口が設けられており、我々が独自に提供している新型コロナウイルスに関する情報や地域に対して速報している事故や災害、事件に関する情報などもそちらに寄せられます。

それらを「FASTALERT」で分析し、その結果を「NewsDigest」にフィードバックすることで、ユーザーのみなさんが身近で起きた事件や災害の情報をほぼリアルタイムでチェックできるような仕組みになっています。

――この事業に携わっているからこそ、「ニュースとは何か」についても深く考えられているかと思います。JX通信社にとってニュースとはどのように定義されるものでしょうか?

これまではニュースといえば、例えば新聞の記事だったり、テレビのニュースだったりといったフォーマットで形作られたものがイメージされがちでした。

しかし、我々が考えるニュースは決してそれらに留まるものではなく、例えば「目の前でこんなことが起きた」といったSNS上のつぶやきも今やニュースとしての価値を帯びているコンテンツ、UGCだと考えています。

普通の人の何気ない投稿や商品の情報も、ほかの誰かにとっては価値のある情報かもしれません。そのため、弊社では「ユーザーにとって価値のある情報」を広い意味でニュースと捉え、それらを適切に届けるということを意識して事業に取り組んでいます。

――確かに、「本当はわたしたちの生活に密接に関わっているんだ」と認識できるという意味で、身の回りで起こっていることを投稿できるってすごくいいですよね。

今は昔と違って新聞、テレビ、ラジオといったいわゆるマスメディアだけが情報を発信できる、「1対n」の時代ではありません。

1億人が発信し、1億人が情報を受け取る「n対n」の時代です。現在は、それに合わせてニュースの定義や価値がどんどん広がっている過渡期だと思います。

気鋭の通信社は“航空”にかける夢から生まれた

2008年1月、米重さんが大学生のときに創業したJX通信社。同社が生まれたきっかけには今も米重さんが抱く“意外な夢”がありました。

――航空会社を作るという最終目標があると伺いました。どのようなきっかけでそのような想いに至ったのですか?

中学時代、同級生に航空オタクの人がいまして、私も感化されて航空業界に興味を持ったのですが、飛行機のフォルムや飛び方よりも航空業界や航空行政のあり方に関心が向いたんです。

そこで、航空業界をより消費者本位に作り変えていくというのは面白いテーマなんじゃないかと感じ、それから今までずっと航空会社を作りたいという思いを抱き続けています。ちょうど中学2年生くらいのときだったので、中二病が今でも治っていない感じですね。

――そこからどのようにして、報道関連の企業であるJX通信社の創業に至ったのでしょう?

そもそものきっかけは、中学3年生の時、航空業界に関するニュースサイトを作ったことでした。2000年代の前半は航空業界にかかわらず、いろんな業界のニュースサイトがまだまだ不足していました。

「航空会社やメーカーの情報をまとめて得られるサイトがあればな」と考えていたところに、ブログやホームページビルダー(プログラミングなしでホームページが作成できるソフト)が流行り始めて、それらを使えば自分で航空業界のニュースサイトを作れるんじゃないかと思ったんです。

実際にサイトを運営して思い知らされたのが、「オンラインのニュースサイトやメディアは全然儲からない」ということです。一番多いときで月30万PV以上のアクセスがあったと思うんですが、そういう時期でも月3,000円程度の収入が得られれば御の字でした。それが後に、ニュースや報道の領域でしっかりとビジネスが成り立つような仕組みが作れないかと考えだすきっかけとなりました。

――現在に当時の思いがつながっているというわけですね。

よく考えてみると航空業界とメディア業界は全然違う畑に見えて、構造的に似通った問題を抱えています。その点が面白いと感じますね。

――それでは、最後にこれからの展望をお伺いできますか?

我々の事業すべてに共通するのは、ニュースをただ届けるだけでなく「作る」という点です。また、作ったニュースはただ大勢に届けるだけでなく、ユーザーの皆様の意思決定に寄与できるような「人を動かす」サービスにつなげたいと考えています。

情報のあふれる社会には光と影の両面がありますが、光の部分を上手く生かしながら影の部分を打ち消すような、新しい報道機関の形をテクノロジーで作っていきたいと思います。

<インタビューを動画で見る>

JX通信社
データインテリジェンスを武器とする「記者ゼロ人」の新しい報道機関。ビッグデータリスク情報サービス「FASTALERT」、ソーシャルリスニング型マーケティングリサーチ「KAIZODE」、国内累計500万ダウンロードのニュースアプリ「NewsDigest」など、ビッグデータとUGCを活用するさまざまなサービスで報道機関や企業、一般消費者への貢献に取り組んでいる。エンジニアを中心に、メンバーの採用を強化中。

〒101-0063
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■FASTALERT:
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制作:FNNプライムオンライン編集部
文:宮田文机