通称“挟まれ屋”の男が嘘の名刺を使い、高級料理店や高級クラブなどで無銭飲食を行っていたことが追跡取材で分かった。

ドアの開閉で「靴が傷ついた」と現金要求

取材班が確認した問題の名刺。1枚目の肩書は「宅地建物取引士」、2枚目には「特別顧問」と記されている。

“挟まれ屋”の男が使用した名刺 「特別顧問」や「宅地建物取引士」とあるが、会社とは無関係
“挟まれ屋”の男が使用した名刺 「特別顧問」や「宅地建物取引士」とあるが、会社とは無関係
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この名刺を使っていたのは、あの男だった。2021年12月15日、福岡市博多区を走るタクシーの車載カメラ。

挟まれ屋:
おっちゃん、足挟まってるレバーに

運転手:
あっ!

挟まれ屋:
開けんな! 痛い痛い痛い

2021年の秋から、福岡市でタクシーのドアの開閉で「靴が傷ついた」などと言いがかりをつけ、運転手に現金を要求する通称“挟まれ屋”こと、大阪府出身の20代の男だ。

取材を進めると男は、単に挟まれるだけではないことが分かってきた。

嘘の名刺を出し「食事代、振り込みにできないか?」

FNNの取材によると、“挟まれ屋”の男は2021年の夏、京都の祇園の高級料理店に現れ、3人で合計19万3800円の食事をしたという。しかし、会計になると男は「振り込みにできないか?」と話した。

男は、店側に「宅地建物取引士」と記された勤務先の名刺を差し出し、食事代の銀行振り込みを相談。店側は、男がこれまでに何度も現金払いで1人分5万円以上の食事をしていたことから、銀行振り込みを承諾した。

ところがその後、振り込みは一切なし。男とは連絡がとれなくなった。

店側は名刺に記されていた会社に問い合わせたが、男と会社は無関係で嘘の名刺を使っていたことが分かったのだ。男にまんまと食い逃げされてしまった。

そして、嘘の名刺を使った被害は他にも…。

会社に届いた請求書には「96万1650円」とあった。

男は2021年の春、東京にも出没。高級クラブで約100万円の飲食をしたが、ここでは「特別顧問」と記された嘘の名刺を使い、代金を銀行振り込みにしている。

嘘の名刺をつかまされた高級クラブ側は、いまだ飲食代を回収できていない。

高級ブランド品の転売もちかけ 被害3200万円超か

会社の名を勝手に使われた男性社長が、取材に応じた。

男性社長:
(男が)名刺をいろんなところで配るので、電話がかかってきます

――彼を社員として雇ったことはない?

男性社長:
ないですね。名刺に書いてる宅地建物取引士の資格もない。何もかも嘘八百の男

会社の名を勝手に使われた男性社長
会社の名を勝手に使われた男性社長

男性社長の話によると、“挟まれ屋”の男は3年ほど前からの知り合い。たびたび男が会社を訪ねてきては「もうけ話がある」などと持ちかけてきたという。

男性社長:
ブランド物の話は持ってくるけど、興味ないので。困っているのなら貸してやるわということで、一時的に貸した経緯はある。2021年の2月から6月で、総額で3000万円近くではないか

男が持ちかけてきたもうけ話は、人気高級ブランド品の転売だった。男はこのもうけ話で多額の金銭トラブルを起こしている。

2021年6月に被害に遭った東京のC子さん:
「バーキンを安く買えるんだけど」と

2021年4月に被害に遭った広島のBさん:
「ロレックスが定価で入る」という話で、「これを転売したらもうかりますよ」と

FNNの取材によると、男は2021年のはじめごろから値段が高騰しているフランスの高級ブランド・エルメスのバッグやスイスの高級腕時計・ロレックスなどが、「定価で手に入る」「転売して利益が出る」などとうたい、代金を持ち逃げする行為を繰り返していたとみられている。

取材で把握できただけで、高級ブランド品の売買話をめぐり、男と金銭トラブルになっているのは全国で5人。その被害額は、合計で3200万円以上に及んでいる。

被害額は3200万円以上に
被害額は3200万円以上に

“持ち逃げ”した大金は借金の返済に?

被害者たちから持ち逃げしたとみられる大金はどこにいったのか。2021年6月、男性社長が男に借金返済を迫った際、その謎が明かされた。

【挟まれ屋と社長の録音音声(2021年6月21日)】

男性社長:
金は、いつできるねん?

挟まれ屋:
ちょっと、すぐにはできないので。頑張って必死に用意します

男性社長:
お前、真剣にせいよ

挟まれ屋:
はい、真剣にしてます

男性社長:
まあ、お前が言っているのは全部、嘘やから。詐欺、詐欺やないか、アホンダラ

挟まれ屋:
いや、詐欺じゃないです

男性社長:
かばんとか時計代とかで使っているか知らんけど、モノ買ってないんやろ?

挟まれ屋:
モノは買ってますよ、はい

男性社長:
モノを買っているなら、金になっているのではないか? お前の言っていること、また全部、嘘やからね

挟まれ屋:
はい、すみません。すみません、申し訳ないです

男性社長:
みんなから、ぎょうさんあっちこっち借りて、何に使ってるねん?

挟まれ屋:
全部、返済に充てています

男は、高級ブランド品の買い付けで預かった金を借金の返済にまわしていたという。

【挟まれ屋と社長の録音音声(2021年5月31日)】

挟まれ屋:
15日、16日と東京に行くので、お金を借りる段取りはできている

男性社長:
なんぼいく?

挟まれ屋:
1000万円借りられる。で、ここに500万円返す。500万円返して、500万円返す段取りをしていく

多額の借金を返すため、詐欺まがいの行為を繰り返しているとみられる男。そして2021年、男は福岡の街に現れ、“挟まれ屋”行為にも手を染めた。

【タクシーの車載カメラ】

挟まれ屋:
痛いってもう…。おっちゃん、挟まってたで、今

男とは連絡取れず…社長「コイツの性格は治らない」

男から残り500万円が返済されていないという男性社長。今、男とは全く連絡が取れないという。

挟まれ屋の映像を見てもらうと…。

男性社長:
頭、ぼさぼさやね

――なぜ、挟まれ屋をしたと思う?

男性社長:
挟まれ屋のこれは、よく分からんのですわ。よう、こんなん“小罪”を考えよったなと。お金に困っていると思う。コイツは治らんと思いますわ、性格が

ある時は嘘の名刺で無銭飲食し、またある時は、高級ブランド品の代金を持ち逃げしたとされる“挟まれ屋”の男。大阪府警には複数の被害相談が寄せられていて、男が嘘の名刺で相手を信用させようとした可能性についても調べている。

(テレビ西日本)

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