衆院選で落選した中道改革連合の小沢一郎氏の政治活動への意欲はいまだ衰えていない。自らに近い議員や落選者との活動を本格化させるため、グループの新たな拠点を都内に整備した。さらに、小川淳也代表ら執行部に対しても厳しい姿勢に転じ、一定の存在感も示している。

かつては良好だった小川氏との今の関係、そして小沢氏が含みを持たせた新党結成の可能性などについて、関係者への取材を通じて迫った。

政権交代の受け皿に「中道はなりえない」小沢氏が断言

「みんな次はどこから出るかも分からないのではないか。中道なんて次の選挙まであるのかという話になる。みんなの一番の心配はどの政党から出て選挙を戦うのか。今、中道で絶対出ると言う人はいないだろう。では、どこで出るのか。みんな宙ぶらりんになる。困り切って、ものすごく不安だと思う」

衆院選を前に立憲民主・公明両党の衆院議員が1月に結成した中道改革連合について、こう指摘したのは小沢一郎元衆院議員だ。

取材に応じる小沢氏(8日)
取材に応じる小沢氏(8日)
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2月の衆院選で中道改革連合から立候補したが、20回目の当選は果たせず落選。現在は自らのグループ「一清会」を率い、政治活動を続けている。

20人を超える国会議員が所属していた「一清会」だが、衆院選で小沢氏を含め多くの議員が落選し、現在は中道改革連合の衆院議員1人、立憲民主党の参院議員6人の計7人となっている。

衆院選から日を経ずして小沢氏と会った関係者は、「サバサバしていて元気だった。次の政局に向けて色々考えているようだ」と語っていた。

「一清会」の新事務所
「一清会」の新事務所

その小沢氏は8日、「一清会」の新たな拠点として国会近くに開設した事務所を記者団に披露し、取材に応じた。

この中で、事務所開設の理由について、小沢氏は次のように説明した。

「僕を含めてみんな落選してしまうと、東京へ来ても連絡場所もなければ取っかかりも何もない。一清会だけでなくて、誰でも必要な時には拠点のようにして利用してもらえればよい」

そして、「将来どうするかということもお互いに情報交換しなくてはいけない」と語った。

一方で、自らが所属する中道改革連合に対する批判は止まらない。

政権交代の受け皿になるか見解を問われると、小沢氏は「なりえない」と即座に断言。そして、「それだけは明白だ。だから深刻だ」と続けた。

政権交代の受け皿に「中道はなりえない」と断言する小沢氏
政権交代の受け皿に「中道はなりえない」と断言する小沢氏

中道改革連合は、小選挙区の総支部長を継続する落選者の一部に「政治活動支援金」として月額40万円の支給を検討している。まず30人規模で開始し、段階的に対象人数を増やす方針で年内に70人程度とすることを想定している。

これについて、小沢氏は「執行部が本人や地元をあたって色々調べて、『これならいける』という中から、候補者に資金援助をできるだけやろうという話になる」とした上で、「候補予定者にしてやるよと、まき餌をまいてやるような話ではない」と指摘。さらに、小川代表ら執行部に対する苦言を次のように続けた。

「選挙をやったことのある執行部ではない。自分の選挙しか知らない。執行部の“いろは”の勉強をもっとしないといけない」

党内のある議員は小沢氏の発言について、「旧民主党の頃から気に入らなくなったら党や執行部のことを批判してきた。党のイメージを悪くするだけだ。もういい加減にやめてほしい」と、いら立ちを見せた。

総理指名選挙で小沢グループ議員が小川氏に投票せず造反

「今回の厳しい選挙結果を踏まえれば、何が起きても私が驚くことはない。極めて冷静に受け止めている。嬉しいか残念かと言われれば、もちろん残念だが、冷静に受け止めているというのが率直な感想だ」

国会での総理指名選挙で高市総理大臣が再選された2月18日、中道改革連合の小川代表は参院で立憲民主党の投票が割れたことについてこう語った。

「嬉しいか残念かと言われれば、もちろん残念だ」中道・小川代表(2月18日)
「嬉しいか残念かと言われれば、もちろん残念だ」中道・小川代表(2月18日)

参院で存続する立憲民主党は、中道改革連合との合意を踏まえ、小川氏に投票する方針を決めていた。しかし、小沢氏のグループに所属する議員5人が党の方針に反し、水岡俊一代表に投票した。中道改革連合の党内からは「小沢氏の反乱だ」と指摘する声も上がった。

小川氏は記者団の取材に対し、「今後の3党(中道・立憲・公明)の様々なコミュニケーションに及ぼす影響については最小化していく努力をしたい」と強調した。

さらに、翌日、小川氏は新執行部による各党への挨拶回りを行った際、水岡氏ら立憲民主党幹部とも面会。その後、記者団の取材で、立憲民主党の投票が割れたことをめぐり、次のように陳謝したことを明かした。

「完全には足並みがそろわなかったことで、さぞ心痛、心労だったろうから、そのことのお詫びを申し上げた」

一方、その5日後の24日、小沢氏は記者団に対し、中道・立憲・公明の合流が進まない状況を指摘し、次のように疑問を呈した。

「合併する気なんかさらさらないのではないか。ないのにどうして他党の人を指名するのか。全く矛盾したその場の体裁を繕うだけの単なる談合に過ぎない。筋道として全くおかしいと思う」

「筋道として全くおかしい…」小沢氏(2月24日)
「筋道として全くおかしい…」小沢氏(2月24日)

そして、5人の行動について、「政治家として、人間として正しいやり方であり、生き方だった」と称賛した。

小沢氏のグループの関係者も「小川代表がどう受け止めたのか分からないが、我々としては筋を通しただけだ」と話す。

また、野田前共同代表ら旧執行部について、小沢氏は次のように厳しく批判した。

「単なる票の足し算だけでやって、新党としての主張、理念が全く曖昧で分からず、国民から見放された」

そして、「何をしたい政党なのか分からない。分からないのでは投票する人はいない」と指摘。さらに、今後も中道改革連合に所属して活動するか問われると、次のように語った。

「中道が今回の選挙でハッキリした通り、国民からはほとんど支持されていない。政権を担うことを考えた場合は、何らかの国民に支持される勢力を作ることが必要になってくるかもしれない」

代表就任直後に小沢氏「小川君は良い子」関係変化の指摘も

党に対する批判を強める小沢氏だが、小川氏についてはどのように見ているのか。

24日の取材の中では、代表就任から2週間足らずの小川氏について、次のように評価した。

「小川君は良い子だし、能力があると思う」

「小川君は良い子だし、能力がある」小沢氏(2月24日)
「小川君は良い子だし、能力がある」小沢氏(2月24日)

しかし、それから2カ月以上経った今、厳しい姿勢に転じている。その理由について、小沢氏に近い関係者は次のような見方を示す。

「どのように党勢を浮揚させようとしているのか、道筋が全く見えない。幹事長が選挙の公約で掲げた恒久的な食料品の消費税ゼロを断念するかのような発言をした。皇族数の確保策についても党内から方向性に批判が出ている。党運営がメチャクチャだ。危機感を持たざるをえない」

また、良好だった小沢氏と小川氏の関係が変化したと指摘する声も上がっている。

かつては小川氏が小沢氏の事務所を訪ねる姿が見られた。当時、ある関係者は「小川氏は敬意を持って小沢氏に接している。そんな姿勢を小沢氏もかわいいと思っているのではないか」と話していた。

しかし、代表就任後、小川氏が小沢氏のもとを訪ねる姿は見られず、一定の距離を置いているという印象を持つ。

筆者は2007年夏から旧民主党が政権交代を果たした2009年頃まで小沢氏の担当記者を務めたが、当時の側近議員が「小さなボタンの掛け違いで、小沢氏と関係が悪くなった議員も多い。常にアンテナを張って、小沢氏の意向を把握しなければいけない」と漏らしていた姿を思い起こす。

「方法論の1つの帰結」 小沢氏が新党結成に含みも

「まず野党が政権を取ることだ。それから全ての改革が始まる。野党でまとまろうと言ったが、みんな自分のことばかりでウンとは言わない。結局、自民党にいいようにされている」

先述の8日の取材の中で、小沢氏はこう指摘し、「野党の役割は政権を作って、今までの古い権力体制を改めることだ」と強調した。

2024年の衆院選では、立憲民主党など野党は過半数の議席を得たにも関わらず、まとまることができず政権交代には至らなかった。

小沢氏は、1993年の衆院選で過半数を得る党がなかった状況で、自らが中心となって実現させた8党派による細川連立政権に言及し、次のように不満をあらわにした。

「先例があるのに何でだろうと不思議で仕方がない。よくよく考えてみたら、その当時の連中がいない。誰も知っているやつがいない。実感としてイメージできないのか。足し算をすれば過半数を取れていた。本当に困ったものだ」

中道改革連合は政権交代の受け皿になりえないとする小沢氏だが、今後の政局についてはどのように見ているのだろうか。

「中道でも立憲でもどうしようもないとなったら、新しい集団を作り上げなければ駄目だとみんなが思うかもしれない」

小沢氏はこう述べた上で、新党結成について、「色々考えた方法論の1つの帰結だ」と含みを持たせる一方、「最初にありきの話ではない」とも強調した。

あるベテラン議員は「仮に小沢氏が新党結成を主導したとしても逆に集まらない。大きな塊を作るという主張と矛盾するのではないか。放っておけばよい」と冷ややかに見る。

一方、落選者の1人は小沢氏の発言について、「今の党内の雰囲気を的確に表している」とした上で、次のように指摘した。

「中道改革連合で支持を広げられるか分からない。かといって立憲民主党に戻るという選択肢もない。小沢氏が主導するかは別にして、“この指止まれ”という形での新たな枠組みしかないのではないかと思い始めている人たちは多い」

党勢の回復に向けて苦しむ中道改革連合が今後どのような道を進むのか、そして政界の権力闘争の中心で“剛腕”を振るってきた小沢氏がどう動くのか、その行方に注目が集まりそうだ。

(執筆:フジテレビ政治部 野党担当キャップ 木村大久)

木村 大久
木村 大久

フジテレビ政治部(野党担当キャップ・防衛省担当)、元FNN北京支局