シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法など健康に関する悩みをわかりやすく解説。

今回は皮膚科の専門医、吉祥寺まなみ皮フ科の葉山愛弥院長が、コロナ禍で手洗いや消毒が増えていることで生じやすい手荒れやあかぎれの対処法について解説。
手荒れを悪化させないポイントやハンドクリームの塗り方なども伝授する。

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手荒れの症状

手荒れの症状は軽いものだと、ちょっとカサカサするなという感じだと思いますが、その後は赤みが出てきたり、かゆみが生じてきたり、亀裂と言っていますが切れてしまう症状、手の表面だと水ぶくれが出る症状も手の湿疹の特徴になっています。

ザラザラしたら基本手荒れになりかけていると思っていいです。
指が部分的にゴワゴワするというのも、その部分は湿疹になっているので、ザラザラすると思ったら手荒れを起こしていると思った方がいいと思います。

手荒れの原因

もともと手のひらというのは、角質が厚くできているので物理的な刺激においてはかなり強くできていますが、汗の腺が多い一方、毛穴が少ないという点で、薬液などの刺激から守ってくれる油分である「皮脂膜」があまり無いんです。

なので薬液などの刺激で手荒れを起こしてしまうということが多くみられています。
手洗いの回数が多いと皮脂の膜がどんどん取れてしまうことや、洗剤アルコール消毒の薬液が原因となることが多いです。

コロナ禍以外にも手荒れを起こしやすいものとしては、紙を扱う仕事、段ボール箱など水分を吸ってしまうものやパソコンをよく使って指先に慢性的な物理刺激を起こすことなどは、どんどん水分が奪われるので、手荒れを起こしやすくします。

もう1つは「アレルギー性のかぶれ」。何かに触ってかぶれてしまうのも手荒れのきっかけの1つになります。

コロナ禍で「治りにくい」人が増えている

女性の方は炊事や洗濯が多い点では少し多いのかなというのと、見た目を気にして来る方もいます。もちろん男性も数としては変わりないと思います。
治りにくい」という人がちょっと増えている気はします。

通常であれば軟膏などで軽快するものが、消毒が毎回刺激になってしまうので、治りかけたものが悪化してしまう。

皮膚のバリア機能が破綻している状態なので、湿疹は表皮の細胞と細胞の間が引き伸ばされて崩れている状態です。要は細かい傷がたくさんあるような感じです。

そういった皮膚が外からの物質をバリアしているということは、深いところに薬液や刺激物がよりまた加わる。そうすると体はまた治そうと炎症を起こすわけで、かゆみが出てきたりとか、小さな傷から雑菌が入って感染を起こすことも考えられます。

皮膚に「すり込む」「こする」はあまり良くない

やはり油分が少ないということがありますので、保湿剤やハンドクリームで構わないのでこまめに使うのが大事です。

香りの良いもの、さらっとしたものが好まれますが、香料などは刺激の要因になってしまったり、さらさらしたものの方がしみやすかったりします。

手の場合は油分が足りないことがありますので、軟膏とかワセリンに近いもの、ハンドバームのようなものを使っていただくのがいいと思います。

あとは皮膚科を受診してもらい保湿剤を提供することもできます。

皮膚はすべてそうですが、「すり込む」「こする」刺激、摩擦はあまり良くないんです。
みなさん薬を一生懸命塗り込んでいますが、薬はのっていればちゃんと皮膚に浸透しますし、皮脂膜にのりますので、軽く押し広げるように使っていただいて、摩擦はやめていただきたいと思います。

あと、も大事です。
人差し指第1関節にとるぐらいの量が大体手のひら2枚分ぐらいと言われているので、ハンドクリームをちょこっと塗り広げるよりはたっぷりと使って頂いた方がいいと思います。

手洗い、炊事のポイント

泡立てたもの、泡のソープの石けんなども販売されているので、そういったものであまり摩擦のないものを使った方がいいです。
固形石けんでもなめらかに洗えるものであれば何でも構わないと思います。

お子さんに結構多いのが、手を洗った後ハンカチなどで拭かずにそのまま遊んでしまうと、水が蒸発する時に熱が奪われてしまうので、温度の変化で霜焼けになることが多いです。
手の甲が真っ赤でガサガサしているお子さんだと霜焼けの1つの症状となります。

洗った後はきちんと水分を拭き取って、その後に保湿クリームを塗るようにしてください。

アルコール消毒などで悪化した状態で炊事をしなくてはいけない場合は、さらなる刺激になってしまうので、ゴム手袋を着用するとか、中で蒸れて悪化してしまう人もいるのでその場合は中に綿の手袋を1枚敷いていただくとか、少し保湿剤を先に塗ってから作業するのがいいと思います。

手洗いとアルコール消毒を両方されている方もいますが、傷口からアルコールが入ると結構痛いので、家など手洗いの環境がある場所では手洗いをしっかりすればアルコール消毒は必要ないです。

手が洗えない状況では、アルコール消毒がコロナウイルスには一番有力なのでしていただいた方がいいと思います。

消毒の場合は、乾いた手に使って蒸発することでウイルスが死滅します。あまりべたっと保湿してからやっても効果が落ちる可能性があるので、朝方に保湿剤を使って、出先で30分後とかに消毒するのがいいかなと思います。
 

葉山愛弥
葉山愛弥

吉祥寺まなみ皮フ科院長 平成20年3月 日本大学医学部医学科卒業 平成20年4月 東京女子医科大学病院 初期臨 床研修医として勤務 平成22年4月 東京女子医学大学病院 皮膚科 学講座入局 平成24年1月 聖母病院に出向 平成25年1月 東京女子医科大学病院 皮膚科 学講座 帰局 平成27年12月 東京女子医科大学病院 助教就任 平成29年5月 東京女子医科大学病院嘱託医、 他都内皮膚科クリニック勤務 平成31年2月 吉祥寺まなみ皮フ科 開院、東京女子医科大学病院嘱託医  資格 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医  厚生労働省認定 臨床研修指導医講習会修了