北京五輪は4日の開会式に先立って一部の競技が始まり、3日の男女モーグル予選に日本勢が出場。男子モーグルには、異色の“二刀流”選手が登場する。

“モーグルと競輪の二刀流”原大智

「僕自身北京五輪で終了、終わらせようと思っています」

引退を決意し最後のオリンピックへ挑むのはモーグル原大智、24歳だ。

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原といえば、2018年に平昌五輪のモーグルで日本男子初となる銅メダルを獲得。フリースタイルスキー史上初の快挙を成し遂げたその翌年、さらに世間を驚かせた。

平昌五輪での活躍からわずか1年3カ月後、プロの競輪選手になるため養成所への入所を決める。

原は、その決断の理由をこう語る。

「『競輪どうだ?』と言ってくれた人がいて最初は断っていたんですけど、みんなすごすぎて逆に倒したいという気持ちがすごく出たのでそれでやってみようと思った」

モーグルと競輪の二刀流という前代未聞の挑戦。それでも「前例がないというのは自分でやってやろうという気持ちもすごくありますし、『絶対に成功してやる』という気持ちの方がものすごく強いです」と、1年間のハードなトレーニングを乗り越え、国家試験に合格。2020年5月についにプロ競輪選手としてもデビューした。

「茨の道」でも信じたゴール

しかし、二刀流での挑戦は決して簡単ではない。モーグルでオリンピック代表になるためには国際大会での結果(世界選手権かW杯で8位以内を1回以上)が必須条件となる。

2021年3月、原はワールドカップの出場権がかかった全日本選手権でまさかの4位。ワールドカップ派遣メンバーから外れてしまう。1年間のブランクはあまりにも大きなものだった。

それでも原は自分を信じた。

茨の道ですよね。けど僕はちゃんとゴールできると信じて頑張ります」

「最後までやり切りたい」、その思いは彼を突き動かした。2021年11月、選考会を勝ち抜きワールドカップメンバーに追加されると、迎えた12月、ワールドカップで3季ぶりの表彰台(2位)に。オリンピック代表派遣の基準をクリアした。

競輪で鍛えた足の筋力や瞬発力でターンに磨き

崖っぷちから這い上がった原。そこには競輪に打ち込んだからこそ生まれたあるプラスの効果があるという。

「瞬発力と有酸素能力がすごく向上しているのでジャンプの踏み切りとかターンの切り替えがすごく良くなってきた」

競輪で鍛えた足の筋力や瞬発力を向上させたことによって、絶対的な武器であったターンにもさらに磨きがかかった。

「北京五輪に出場してメダルを取ってこそ自分の二刀流が完成されると思うのでくじけず腐らず頑張りたいと思います」

モーグルと競輪の二刀流。前人未到の挑戦を選んだモーグル界の開拓者が最後の舞台へと挑む。