触ると悪臭を発するカメムシが家の中に入ってきたら…。

考えただけでも憂鬱な気持ちになるシチュエーションだが、悪臭を発する前に捕獲する妙案はなかなか思い当たらないのではないだろうか。

こうした悩みを解決するため、島根県出雲市佐田町にある木材会社「浜村木材」が8年の歳月をかけて、「カメムシ専用捕獲器」を開発。2021年10月1日に販売した。

名前は「ぱっくりん」。

ぱっくりんとは(出典:ぱっくりんHP)
この記事の画像(9枚)

マジックハンドのような器具に粘着性のシートを装備し、カメムシを後ろからひっつけ、ぱっと挟む道具だ。最初から最後まで手を近づけず、さらに悪臭を発する前にカメムシを捕獲できるという。使い方は簡単で、以下の手順を守れば捕獲できる。

(1)捕獲器のクリップを専用シートの「差込口」に差し込む
(2)剥離紙をめくる
(3)カメムシを狙い、シートで接着
(4)持ち手を握って、シートの中に閉じ込める
(5)シートを外す
(6)つまんで捨てる

捕獲方法(出典:ぱっくりんHP)
捕獲方法(出典:ぱっくりんHP)

本体は3300円(税込)、専用の粘着シートは8枚入りで440円(同)。

「ぱっくりん」のwebサイトなどで購入できるのだが、非常にニッチな商品でありながら、発売から約3カ月で200本弱が売れているという。

カメムシに手を触れることなく、それも悪臭を発する前に捕まえることができるのであれば、たしかに便利かもしれない。

「浜村木材」の専務・浜村拓志さん(提供:浜村拓志さん)

妻は紙コップで塞ぐことしかできなかった

この「ぱっくりん」を開発したのは浜村木材の専務・浜村拓志さん。実は、このニッチな商品が生まれたうまれたきっかけは、カメムシが苦手な妻だった。では、商品化されて妻は喜んでくれたのか?また、これはゴキブリなど他の害虫の捕獲にも使えるのか?

浜村さんにじっくり話を聞いた。


――カメムシは多い日で一日に何匹ぐらい、浜村家に現れるの?

多い時は一日に10匹~20匹は現れます。


――カメムシが現れるようになったのはいつから?

カメムシは私が生まれる前から毎年出ております。田舎なので、相当、昔からいると思われます。


――佐田町にカメムシが多い理由は?

佐田町が山に囲まれているからだと思われます。


――「ぱっくりん」開発のきっかけを教えて

結婚をきっかけに今から13年前、妻と佐田町で暮らすことになりました。妻は佐田町に来るまでカメムシをほとんど見たことがなかったため、カメムシに対する耐性が全くありませんでした。

数年間、春から秋にかけて家の中に入ってくるカメムシを一人で捕まえることができず、床を歩いているカメムシの上から紙コップで塞ぐことしかできませんでした。多いときは床に5~6個、紙コップが逆さに置いてありました。

私が仕事から帰って最初にする仕事が、床の上にいくつも置いてある紙コップの中のカメムシの処理でした。

ぱっくりん誕生秘話(出典:ぱっくりんHP)

妻一人でもカメムシを捕まえて捨てることができないかと思い、今から約8年前にカメムシを離れたところから刺激を与えずに、最後まで手を近づけることなく処理する道具が作れないかと考えました。

以上のことから、開発のきっかけは「妻一人でカメムシを捕獲処理してほしい」と思ったことです。開発できれば、私の面倒くさい仕事が一つ減るだろうという思いもありました。

一番苦労したのは「カメムシだけひっつく構造」

――商品化に至るまで苦労したのでは?

まず、頭を悩ませたのが、今までにない道具だったので、道具のイメージがすぐに湧かなかった点です。

カメムシの捕獲方法はいろいろありますが、その中でガムテープを使って、背中にペタっと付けてガムテープごと閉じて捨てるという方法があります。この方法だと、不快な臭いを出さないので、これを離れたところからできないかを考えるのに苦労しました。

「ぱっくりん」本体に取替用の粘着シートを取り付けて捕獲しますが、一番苦労したのは、床や壁にはひっつかず、カメムシだけひっつく構造を考えることでした。

また、粘着シートの形状についても試行錯誤の連続でした。シートを修正すれば、本体のほうも修正が入ります。逆に本体を修正すれば、シートも修正する必要が出てきます。その繰り返しで大変疲れました。


――特にこだわったところは?

最後まで手を近づけずに処理できるところです。シートを閉じた後に、シートの耳の部分に本体の先端にあるクリップを通して、シートをつまんでゴミ箱に捨てます。ここの部分を色々な方の前で実演すると、とても感心されます。「そこまで考えているのですね!」と言われることが多いです。

シートをつまんでゴミ箱に捨てる(提供:浜村拓志さん)

――この道具を使うと、なぜカメムシは臭いを出さない?

カメムシの背中からガムテープでそっとひっつけるため、刺激を与えないので、臭いを出さないのです。

果たして、奥さんは喜んでいるのか?

――開発したことで奥さんは喜んでいる?

妻が喜ぶだろうと一生懸命考えて、8年もかかって道具を作ったのですが、8年という歳月が長すぎて、その間に妻がたくましくなり、「ぱっくりん」を使わなくても、普通にガムテープで捕れるようになってしまいました。

喜んでいるかどうかは不明です。どちらかというと冷ややかな目で見ています。ただ、私が頑張っていたことは認めてくれているだろうと思っています。私はそう信じております。
 

――本業の木材会社の技術は「ぱっくりん」に生かされている?

これが全く生かされておりません。


――開発を提案したときの社内の反応は?

テーマが決まった時に社長に伝えましたが、かなり否定的でした。また、当初は従業員には秘密にしておりました。反対されるのは分かっていたので、反対されると私のモチベーションも下がってしまうので、当面は家族しか知りませんでした。

天井にいるカメムシも捕獲可能(提供:浜村拓志さん)

――この商品を使って、カメムシを捕獲するコツは?

本体に装着した状態で使用する場合は、粘着シートの上半分をターゲットゾーンとすると捕まえやすいと思います。また、この商品のコツは床や壁にいるカメムシを捕獲するときに、少し強めに押し付けるのがコツとなります。

強めに押し付けることで、装着されている粘着シートがより水平になってくれるので、虫が粘着シートに引っ付きやすくなります。強く押し付けても、カメムシが粘着シートにひっつけば、臭いは出さないです。


――ゴキブリなど他の害虫にも使える?

ゴキブリにも使えますが、生きたままのゴキブリで大きいものは動きも早いので、捕獲が難しいと思います。比較的、小さいゴキブリであれば、生きたまま捕まえることも可能です。

また、殺虫剤で殺した場合は、液体が大量にかかっていると粘着シートが滑って、上手くひっ付かない場合が多いです。

購入者の声「無事に捕獲できました」

――「ぱっくりん」という名前の由来は?

カメムシをパックして、クリーンになるという意味です。また、「くりん」という言葉の響きが丸い感じがして、女性に受け入れられやすいのではないかと思いました。


――販売を始めたのはいつ?

正式には2021年10月1日から販売開始しております。発売から約3カ月がたちましたが、200本弱売れています。害虫捕獲の道具で最初から最後まで手を近づけずにできる道具は、これまでほとんどなかったのではないでしょうか。

また、カメムシ専用の道具もほぼ無かったのではないかと思います。そういう意味ではかなりニッチですが、一定数、必要とされる商品ではないかと考えています。

ぱっくりんと浜村拓志さん(提供:浜村拓志さん)

――注文は主に島根県内なの?

主には県外です。島根県内は少ないです。関西、関東、東北あたりからの注文が多いです。


――購入した人からは、どんな声が寄せられている?

アンケートをこれまでとっていなかったので反応はあまり分かりませんが、「無事に捕獲できました」と喜んで報告される方もいらっしゃいました。


「妻一人でカメムシを捕獲処理できるように」という思いから開発が始まり、8年という年月をかけて商品化が実現した「ぱっくりん」。カメムシが家に入ってくるという人、その捕獲に悩まされているという人は購入してみてもよさそうだ。