長引くコロナ禍の影響で生活に困窮する女性が増えている。中には寒空の下、住むところや食べ物にも困るケースもある。彼女たちはどのような理由で生活困窮者になってしまったのだろうか。労働組合、市民団体、弁護会などの女性有志によって2021年12月25日、26日に新宿の大久保公園で「女性による女性のための相談会」が開催された。

女性による女性のための相談会実行委員会によれば、2日間で相談に訪れた女性は10歳代から80歳代までのべ169件にのぼった。相談は人それぞれケースが違い、原因も複合的だということだが、生活困窮に陥ってしまったきっかけと、そこから抜け出すことが困難な実例について、実行委員の松元千枝氏にお話を伺った。

新宿大久保公園の特設会場
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誰にとっても生活困窮のきっかけになりうる就労の問題

ーー生活困窮に陥るきっかけとして、就労の問題があると聞きましたがどのような相談がありましたか?

松元氏:そもそも女性には、パートやアルバイト、派遣などの非正規雇用が多いため、もともと数カ月という短期雇用の仕事をコロナ切りされて、やむを得ず日雇いの仕事で食いつないでいたという例が複数あります。

今回は、さらにフリーランスや個人事業主のための緊急支援金が打ち切られるので、先の生活が不安という女性や、海外からの観光客を対象として事業を行っていたが、コロナが長引く中で生活に窮したという女性もいました。いずれにしろ、コロナ禍が長引く中で収入源が断たれたままの人が多いように思います。

法律、医療などの専門家や生活上の悩みについて女性相談員が相談に乗った(実行委員による再現写真)

情報の入手や受給申請が簡単ではない!制度の問題

ーー生活困窮者向けに様々な行政の支援制度がありますが、どう利用されているのでしょうか。

松元氏:制度について知らない人が多い一方で、知っていても申請を断念してしまうケースもあります。行政用語がわかりにくかったり、当事者目線で制度設計がされていないことが原因だと考えられます。利用していても制度を使い切れていない例も多数あります。

例えば、「住宅確保給付金」を申請する際には大家の印鑑が必要です。しかしこれを申請すれば大家に失業中だと知られると同時に支払い能力がないと思われて、契約が更新されないかもしれないと不安を抱えている人がいました。こうした理由から、申請をためらってしまうようです。

また、10万円の生活支援を受けながら職業訓練を受講する休職者支援制度について、正社員を1年以上続けないと受給できないと誤解していた方がいたので、相談員が正しい情報を伝えました。

個人事業主の女性は、売り上げが半減以上した事業支援策として月上限10万円が支給される月次支援金が10月で終了したため、ギリギリの生活を強いられていました。それ以降の支援策が提示されず売り上げが伸び悩む中で、利用できる制度について知りたいと相談に来ました。子育て世帯だけではなく、住民税非課税世帯にも臨時特別給付金10万円が支給されることも知らない方が多かったです。

家族だからといって支えあう存在とは限らない

ーー家族の問題を抱える女性も多いと聞きました。

松元氏:コロナ禍で家族が一緒にいる時間が増えたため、すでに多かったDVが急増しているのはこれまでも報道されてきました。例えば、病気で失職した夫が家で機嫌が悪く、暴力を奮いお金も賭け事に使ってしまう、という相談がありました。

一方で、親とは絶縁状態で、失業して生活が苦しくなっても実家を頼る選択肢はないという女性や、親に居場所を知られたくないため住民票を移せず、就職サイトの利用に必要なマイナンバーカードが登録できないという就活生もいました。

コロナ禍での事業閉鎖や営業時間短縮により、障害のある子どもの世話や親の介護を一手に引き受けるのは多くの場合、女性です。そのためフルタイムの仕事に就けないとか、自分自身でも精神疾患を抱えながらケアする側にあるなど、家庭内での負担が女性に偏っていました。

会場では相談者にお花も手渡された

男性には相談しづらいことも

ーーなぜ、相談者も支援者も女性に限定した相談会を開催したのでしょうか。

松元氏:2020年年末から21年年始にかけて、都内各所では相談会が実施されました。そのうち新宿区立大久保公園の「年越し支援・コロナ被害相談村」には、344人が相談に訪れ、女性はおよそ2割を占めました。相談村を訪れた女性相談者からは、生活まわりの困りごとや自分の悩みや不安を男性支援者には相談しづらいという声があがっていたので、2021年3月に2日間、7月に2日間、女性限定の相談会を実施しました。

会場では相談者に生理用品も提供された

ーー女性限定ということで特に気を付けていることはありますか?

松元氏:安心して相談できる空間づくりを心掛けています。女性は複合的な問題を抱えています。初見で語られる問題だけでなく、話をする中であらゆる困難が絡み合っていることがわかります。会場では受け付けのあとに、まずはカフェスペースで一緒に温かい飲み物をとりながらお話を聞き、専門家の相談ブースに案内します。

この相談会では、メディアが会場で相談者に取材をしたり撮影したりすることを一切禁止しています。会場をテントで取り囲み、受付も含めて外から見えないようにしています。私自身もメディアの人間なので取材規制をかけるのは気が引けますが、相談者の安心と安全を最優先に考えた結果です。相談者がDV被害者の場合、服装や後ろ姿、手先だけが報道されるだけでも身の危険が伴います。

相談会はあくまで相談に来る女性たちのためにあり、メディアに報道してもらうためではないんです。

相談会場は外から見えないように配慮された作りになっている

ーー相談者からは相談会に関してどんな声がありましたか?

松元氏:友人でも家族でもない実行委員が、親身に話を聞いてくれたことが嬉しかったという声や、自分が勘違いしていると思っていたこと(職場でのハラスメントなど)は間違っていなかったと確信できたという声もありました。実行委員である女性たちは、それぞれセクシュアル・ハラスメントや性暴力、DVなどを乗り越えてきた経験があったり、中には、いままさに乗り越えつつある人もいます。だからこそ、相談に来る女性たちの気持ちが手に取るようにわかります。

温かい飲み物を飲みながらのおしゃべりで話しやすい空気を作っている

相談会が終わってからが本当のスタート

ーー相談会の後の活動を教えてください

松元氏:必要に応じて、生活保護申請に同行したり、アパート探しや転宅を手伝ったり、1人の相談者に複数の実行委員がチームを作って伴走支援を続けます。相談に来た女性たちが、いつでも悩みを相談できるようなつながりを作ることが重要だと思っています。相談会で一歩前進できたという女性たちの中には、実行委員として会を運営する側になる人もいて、私たちが目指している力のサイクルができつつあります。

ーー相談会を受けて、行政に望むことは何でしょうか?

松元氏:2021年11月に発表された自殺対策白書によれば、2020年の女性労働者の自殺率は前年に比べて15%増加したことがわかりました。これには大きな衝撃を受けました。このニュースを聞いた時、相談会で出会った女性たちを思いました。さらに12月29日には、新宿区歌舞伎町で子ども2人を抱えた女性が、無理心中を図ろうとしたところ息子だけが転落死してしまい、逮捕されました。まさに私たちが相談会を実施している場所であり時期でもありました。

彼女たちは、社会においても家庭においても孤立しています。生活に窮していたり、夫からの暴力から逃げようとしていても、相談する相手がいなかったり、相談するという選択肢さえも考えられなかったりします。私たちの相談会からは、こうして、白書が示す実態が見えてきています。

女性たちが孤立させられている背景には様々な問題がありますが、もっとも深刻な問題の一つには暴力があると思っています。その被害によって、心身を病み、人間関係を断たれ、回復したり自律したりするための選択肢が奪われているのです。もともとこの社会には、女性が働き、生きていく上での選択肢が少なすぎます。さらに、女性たちは自己決定権をも奪われてきました。

彼女たちをこうして社会の隅に追いやったのは、誰なのか、そしてその理由は何かーー。私たちは、それを問うていかなければならないと思います。

 

長引くコロナ禍に影響を受けるサービス業従事者、非正規雇用者には女性が多く、生活困窮者に対する支援が待ったなしに求められている。相談会では生理用品や食材、衣料などを持ち帰っていただく「マルシェ」と呼ばれるコーナーも設置されて、相談者に喜ばれていた。1月8日、9日にも、同様の「女性による女性のための相談会」が実施される。

【執筆:フジテレビ 岸田花子】
【画像提供:女性による女性のための相談会実行委員会】