2030年までに、女性や子どもの貧困率を半分に減らす――。
国連の持続可能な開発目標=SDGsで目標の最初に掲げられ、そんな“約束”がされている貧困問題。日本で特に厳しい状況となっているのが「ひとり親家庭」だが、そのひとり親家庭が今、コロナ禍に加え、物価高の影響で、一層厳しい生活を強いられている。
物心両面で貧困家庭の支えとなっている地域の子ども食堂を通じ、実態を取材した。
食料や光熱費高騰…"9割が生活苦"実感 「ひとり親世帯」の現実
この記事の画像(16枚)3人の子どもを育てる美智子さん(仮名):
ママがこんなので、ごめんねっていつも謝っている
働いても約半数が、相対的な貧困状態にある日本のひとり親世帯。そこにコロナ禍と物価高が追い打ちをかけている。
美智子さんの長女・香織さん(中学生・仮名):
ガソリンが高くて、野菜とかも高くなってきている
食料品や光熱費の高騰が、生活を圧迫。生活が苦しくなったと感じているひとり親世帯は、実に約9割にも上っている。
そんな家族を支えているのが、子ども食堂だ。
子ども食堂の運営者:
お母さん、がんばったね
3人の子どもを育てる美智子さん:
いろいろ助けてもらいました
コロナ禍で収入激減…月給"59円" 「トイレの水は1回で流さない」
札幌市のシングルマザー、美智子さん(仮名・39)。2つの仕事を掛け持ちして、3人の子どもを育てている。2021年はコロナ禍で、食品関連の仕事の収入が激減。振り込まれた給料が59円だった時もあるという。
――1ヵ月で?
美智子さん:
1か月です
安定した収入を得たいと、介護施設の仕事に転職。倉庫での出荷の仕事も掛け持ちしているが、生活は困窮している。
美智子さん:
トイレの水は1回で流さず、みんなでまとめて流して。お風呂も1週間ぐらい我慢して、子どもたちも学校がない日はお風呂入れないようにしてとか。常に「お金ないからね」って言っている
日本のひとり親世帯の約半数は相対的な貧困状態にあるとされていて、中でもシングルマザーは、男女の賃金格差や非正規雇用の割合の高さから貧困に陥りやすいといわれている。
一家の支えは中学2年生の長女・香織さん(仮名)。家事や弟の保育園の送り迎えをしてくれている。
美智子さん:
感謝しかないです、本当に。本当は辛いのかもしれないですけど。謝りますね。いつもママがこんなのでごめんねって
2021年の12月。街はクリスマス一色。しかし…
美智子さん:
すみません。暖房節約してつけてないので
2021年の冬から、燃料が高騰。コロナ禍で収入も減り、子どもたちにプレゼントをあげることができない。
美智子さん:
クリスマスプレゼントを用意する余裕はないですね
長男:
サンタさん、いないもんね!
「孤立させない」物心両面で支える"子ども食堂"
そんな親子を支えているのが、札幌市手稲区の子ども食堂「ぐれーす」。家族は週に1度、ここでお弁当を受け取る。クリスマスの特別メニューだ。
こども食堂「ぐれーす」 亀岡純子さん:
きょうはビーフシチューとガーリックスパゲッティとサラダ。あとケンタッキー
美智子さん:
本当にありがたいです。ビーフシチューなんて食べられない
貧困は経済的な問題だけではなく、孤立にもつながると言われている。
「ぐれーす」を運営する亀岡純子さんは、美智子さんの悩みを聞くなど心の支えになってきた。
こども食堂「ぐれーす」 亀岡純子さん:
お母さん頑張ったね。みんな3人とも頑張ったね
美智子さん:
助けてもらいました。本当に。泣いちゃう。
年を越え、新型コロナの感染者数が増加した、1月。
陽性となり自宅療養していた美智子さんに、お弁当を届けたのも亀岡さんだった。
こども食堂「ぐれーす」亀岡純子さん:
地域の子ども食堂が、経済支援も必要だけど、お母さん同士が孤立しないように、お互いにつながりあうことで気づくことがあるので、子ども食堂は地域の居場所として存在価値があると思う
つながりの中で貧困を乗り越える。親子だけではできないことを"地域の力"で。
物資提供をお考えの方は、こども食堂北海道ネットワーク 011-841-8601 まで。
(uhb北海道文化放送)