世界は新型コロナウイルスの感染が続く中、また新しい年を迎えた。国際情勢ではアメリカと中国の対立が今年も続き長期化する見通しだがそれぞれ国内に不安を抱えている。アメリカと中国の関係は台湾問題、日中関係にも影響する。

一強習近平国家主席の不安

習近平国家主席は、今年後半に予定されている共産党大会で党トップの総書記として3期目の政権を発足させることが確実視されている。江沢民氏、胡錦濤氏と2代に続いた「2期10年」という慣例を破っての続投になる。そして、共産党100年の歴史上3回目の「歴史決議」を経て習主席は毛沢東氏と並ぶ指導者としての権威を手に入れた。

江沢民氏、胡錦濤氏と続いた「2期10年」の慣例を破って3期目が確実視される習近平国家主席
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IT大手・アリババへの統制強化や営利目的の学習塾禁止にみられるように共産党による管理は様々な分野に及ぶ。統制強化は不安の裏返しとも言える。その不安とは共産党への求心力だ。共産党政権は改革開放以来、経済成長を続けることで一党支配の正当性を示し、求心力を維持してきた。しかし、その成長の果実は一部だけに偏り、格差が是正されないまま今に至っている。

我々が目にする日本や海外で「爆買い」する人たちは14億人もの人口のなかからみれば一部に過ぎない。中国には「次に豊かになるのは私たちだ」と思ってチャンスを待っている人たちが大勢いる。習近平政権が「共同富裕」を掲げるのは、こうした人たちに期待を持たせ共産党への支持を繋ぎとめることにある。経済発展から取り残された人たちの願望が実現できなければ共産党と習主席自身の威信が失墜する。習近平政権は3期目に向けこうした不安を抱えることになり、統制が弱まることはないだろう。

バイデン大統領正念場、どうなる中間選挙

中国を最大の「競争相手」と位置づけるアメリカのバイデン大統領も不安を抱える。QUAD=日米豪印戦略対話やAUKUS=米英豪による安全保障の枠組みを発足させるなど就任以来、中国包囲網を強化してきた。しかし、アフガニスタンから米軍を撤退させた際の混乱で超大国の信頼に傷がついた。軍事力を中国対応に集中するための撤退が中国に批判のチャンスを与えてしまった。

米軍用機の離陸に群がる市民たち(Facebookより)
飛行機に乗ろうと殺到する市民ら(Twitterより)2021年8月16日

また、国内では民主党内の内輪もめでバイデン政権にとって重要な経済政策の法案が難航している。更にデルタ株の拡大やインフレなどで支持率が低迷している。このままでは今年11月の中間選挙は「惨敗」との見方もある。事実上の「レームダック化」となれば中国政策に影響を与えるかもしれない。

「レームダック化」なるか、バイデン大統領

その11月は、習主席が3期目の政権をスタートさせる時期と重なる可能性がある。連邦議会襲撃事件、アフガニスタンでの混乱、アメリカ国内での新型コロナウイルス感染拡大と80万を超える死者数。

中国は「アメリカ式の民主主義はすでに民主主義の本質から乖離している」と批判し、アメリカが主導する国際秩序に挑戦している。中国の外交専門家はアメリカの国力が落ちてきていると指摘する。中間選挙で民主党が多数派を失い、バイデン政権が失速すれば、中国がアメリカの足元をみて対抗姿勢を強めるかもしれない。

台湾問題

「台湾統一」は習近平政権の最優先課題とされ、譲歩できない問題だ。一方でバイデン政権は台湾との関係を強化し、欧州でも同様の動きが続いている。中国は台湾に対し軍事行動に出るのか?日本にとって関心の高い問題だろう。

2月に北京オリンピック・パラリンピックがあり、春先には全人代=全国人民代表大会(国会に相当)、後半には共産党大会が予定されている。国際的なイメージや国内の安定などを考慮し、中国が軍事行動に出ることはないとの見方が多い。

習主席は2021年11月に行ったバイデン大統領とのオンライン首脳会談で台湾問題についてこう発言している。「我々は我慢する気持ちがある、最大の誠意で平和的統一に向け最大限努力する。ただし、台湾独立勢力が挑発し我々を追い詰めたり、レッドラインを超えれば、我々は断固たる措置をとる。」

オンラインで開催された米中首脳会談(2021年11月16日)

平たく言えば「中国は平和的に統一したいと思っている。だからアメリカや台湾は中国が軍事行動をとらなければならない状況に追い込むなということだ。」とある中国の知人が解説してくれた。本音のところで中国は、現段階でアメリカに軍事力で勝てないと考えているのかもしれない。バイデン大統領はこの首脳会談で衝突を回避するための「ガードレール」構築を呼び掛けた。

懸念されるのは不測の事態だ。台湾では2年後の2024年に総統選挙が行われる。習近平政権としては中国と関係が良い国民党が政権を奪還することを期待しているだろう。もし、独立志向が強い民進党政権が続く場合、まず新政権の出方を見極め、必要と判断すれば台湾周辺での軍事演習など圧力を強める可能性がある。

台湾の蔡英文総統(台湾総統府提供)

日中関係

今年、日中は国交正常化50周年の大きな節目を迎える。日中関係は沖縄県の尖閣諸島などをめぐり悪化した状態が続いている。今のところ日中で記念式典を行う計画は発表されておらず、そうした雰囲気は感じられない。先月、日本政府は北京オリンピックに閣僚など政府関係者の派遣を見送ると発表し、岸田総理大臣は日本オリンピック委員会の山下泰裕会長らが出席すると表明した。「外交的ボイコット」との表現について岸田総理は「特定の名称を用いることは考えていない」と説明した。

中国の日中関係専門家は「日本がアメリカと中国それぞれとの関係に配慮した結果だろう」と分析している。中国外務省は日本の判断について「歓迎」という言葉を使いアメリカなどと違う対応をみせた。その一方で「日本政府の関係する対応を注目する」「スポーツを政治家しないという約束を着実に実行することを望む」と述べ、釘を刺した。

中国は日本国内にアメリカの中国抑止策に同調する意見があることに不満を持ち、安倍元首相の「台湾有事は日本有事」との発言に強く反発している。別の専門家は「今年の関係改善は難しいだろう。」と悲観的だ。中国としてはアメリカとの対立が続くなか、日本との関係は安定させておきたいと考えている。

日中は国交正常化50周年の大きな節目を迎える

中国ビジネスに携わる日本企業は3万社以上とされる。2012年の尖閣諸島国有化をきっかけに中国で起きた反日デモでは、日本企業の工場などが襲撃を受けた。習近平政権は経済カードを手に人権や台湾などの問題で岸田政権の対応を注視していくだろう。  

【執筆:フジテレビ 国際取材部長 垣田友彦】

垣田友彦
垣田友彦

(株)フジテレビジョン 報道局国際取材部長

外交・安保
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