長崎県の南部に位置する雲仙市。
約200年ぶりの噴火で知られる雲仙・普賢岳から、山を隔てた場所にあるのが雲仙温泉街だ。明治時代は外国人の避暑地にもなり、リゾート地の先駆けとして、国内初の国立公園にも指定されている。

大小30ほどの「地獄」が人気スポットだが、このほど新たに、“世界一新しい地獄”が誕生した。近くには「極楽公園」もリニューアルオープン。

豪雨災害からの復興と、新たな観光地づくりを目指して活動する男性の思いを取材した。

「雲仙地獄」に新たな地獄が…名前は公募で

硫黄の香りが立ち込め、ぐつぐつと沸き立つ「地獄」に、ぐるっと温泉街を見渡せる「展望公園」。
11月11日に、雲仙温泉街の新たな観光スポットとしてスタートを切った。

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この地獄は2018年、雲仙温泉の観光名所「雲仙地獄」入り口の駐車場で見つかった。

環境省や雲仙市が中心となって整備を進める中、名前の公募が行われた。
仕掛け人の1人は、加藤隆太さん(42)※取材時。

加藤隆太さん:
これをどう生かしていけるのか、地獄ができるなんて生きている間に多分ないことだと思う。これを逃す手はないな、と

「世界一新しい地獄」を、まちづくりにどう生かすのか。
雲仙市の職員や、観光業に携わる温泉街の若手が中心となって意見を交わしてきた。

加藤隆太さん:
いろんな人に長く愛していただける、自分たちも愛着を持って使っていける名前や場所になったらいいなと

コロナや災害による大打撃 大切な仲間の死も…

温泉水を使って焼き上げる雲仙の名物、湯せんぺい。
昔ながらの一枚手焼きを継承する唯一の店だ。

5代目の加藤さんは店を守りつつ、「雲仙観光のこれから」を見据えている。

2021年 運用を始めた雲仙市のポータルサイト。
イベントやグルメの情報だけでなく、雲仙が10年後に目指す姿やプランを打ち出している。

加藤隆太さん:
雲仙のまちづくりや雲仙温泉自体に興味を持っていただいて、間になっていただける人を探していきたい

新型コロナウイルスの影響で客足が遠のいても、「雲仙の今」を伝えようと情報発信を続けてきた。

そうしたさなか、2021年8月に県内を襲った大雨で、雲仙温泉街では道路に大量の土砂が流れ込み、通行止めや温泉が出なくなるなどの被害が出た。

コロナ禍の大打撃に加えて、災害による宿泊キャンセルは8月末までに約1万3,500人分に及ぶという厳しい状況に置かれた。

また、雲仙温泉街の小地獄地区では親子3人が土砂崩れで亡くなったが、その中には加藤さんたちの大切な仲間が含まれていた。森優子さん(当時32)だ。

雲仙温泉観光協会の職員として、イベントの企画やポスター制作など広報を担当していた。

加藤隆太さん:
これから狙っていきたい客層、まさにその層の雲仙の子、後輩。女性で30代で発信力がかなりある子だったので、彼女の目に映る雲仙がこれからの雲仙になっていく、そうなるべきだと思っていた

加藤さんが森さんたちと思い描いた「雲仙」が、少しずつ形になっている。
子どものころに遊んでいた高台の公園は、展望公園に生まれ変わった。

加藤隆太さん:
(地獄と公園の)名前の選考委員のメンバーでもあったので、一緒に考えてきた場所だった。地獄に行ったお客さんをここに上げて、交流の拠点になったらいいなと

言葉の持つインパクトや景観の良さが伝わるなどの理由から、「極楽公園」と名付けた。

加藤隆太さん:
長く親しまれて、たくさんの人たちの癒やしになる場所になったらいいなと。彼女の思いも自分たちの思いも、しっかり後につないでいく。気持ちを新たに皆で力を合わせてやっていこうと

加藤さんは、新しい地獄や公園の名前を使ったビジネスが温泉街で生まれたらうれしい、と期待をしている。

雲仙温泉街にはこんな注目スポットも

「雲仙地獄」に住み着いた人懐っこいネコ。

男性:
気持ちよかね…。本当慣れてる

2021年8月の大雨の影響で、地獄周辺は一時、立ち入り禁止となったが、現在はほとんどが復旧。再びネコと触れ合えるようになった。「雲仙地獄」の「ネコ天国」。ネコ好きには至福のひとときが過ごせそうだ。

「雲仙ジオバーガー」
10月に販売スタートしたご当地グルメ。必ず雲仙市の食材を使い、作りたてにこだわっている。市内5つの飲食店や宿泊施設で提供。
今後は、市内のイベントでも食べることができそうだ。

「雲仙BASE」
温泉街の近くに10月誕生。
少子高齢化の影響で閉校した雲仙小・中学校の校舎を未来に残そうと、大勢の人が集まる「交流拠点」として再整備され、お洒落な空間も登場。コワーキングスペース「AGORA」だ。

対馬市と長崎市で、コワーキングスペースを運営する長崎市の企業が雲仙市に初めて設置した。

AGORA・米田伊織代表:
元々、温泉地として魅力のある土地だと思っていた。例えばクリエイターが集まる場所になり、ここに来ればおもしろいアイデアが出てくる、アイデアがもらえる場所にしていきたい

今後は、ここでドローンパイロットの育成なども行いたい考えだ。

「AGORA」を運営するコミュニティメディア・米田利己代表取締役:
雲仙地域の活性化に少しでもお手伝いできればと思ってやっている

8月の土砂災害から一歩ずつ復興に向かう雲仙。
今後の展開が注目を集めそうだ。

(テレビ長崎)