「長崎名物」といったら、何が浮かぶだろう?
カステラ、ちゃんぽん、皿うどん、ビワ、角煮まんじゅう…
実は今、そんな長崎名物に新たに加わろうとしているメニューがあり、じわじわとその知名度を上げてきている。

それが「スープカレー」だ。

新たなご当地グルメに?
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なぜ長崎で、なぜこの時期に、「スープカレー」なのか、どのような思いから誕生したのか、取材した。

女性服が並ぶアパレルショップの一角や、全国各地の名品を取り扱うセレクトショップ。

セレクトショップの一角に「長崎スープカレー」

そして老舗の文房具専門店の売り場など、トレンドに敏感な店が今、注目しているのが「長崎スープカレー」(1080円)だ。

文房具店にも「長崎スープカレー」

テレビ長崎・吉井誠アナウンサー:
袋を開けた瞬間に、ものすごくいい香りがしてきました。鶏肉や具材が大きいですね。スパイスがこんなに香るんですね!いろんな旨味が溶け込んでいるのが分かる。鶏肉、こんなにゴロっと入っているなんて思いませんでした

吉井誠アナウンサー(テレビ長崎)

この具材の量と、ゴロゴロ感は魅力だ。

「長崎スープカレー」企画は市内のホテル

「ちゃんぽん」スープをベースに、地元の「長崎ばってん鶏」をゴロリと入れ、独自配合の20種類ものスパイスで仕上げる。

海外との交易の窓口だった長崎の和華蘭文化を「スープカレー」で表現した。
しかし、このカレーを企画したのは食品メーカーではない。
意外なことに、長崎市内のホテルだ。

テレビ長崎・吉井誠アナウンサー:
カレーを作った方ですか?

稲佐山観光ホテル・小林央幸専務:
そうです!稲佐山観光ホテル・専務の小林でございます。
(Q.そんなにカレーが好き?)
大好きですね

稲佐山観光ホテルの小林央幸専務 長崎・曙町

小林さんは自宅に30種類のスパイスをそろえ、日頃からカレーを作りまくる「カレーマニア」だ。過去には「教室」や「イベント」を開いたこともある腕前で、一部では「カレー王子」と呼ばれている。

「カレー王子」の異名も

稲佐山観光ホテル・小林央幸専務:
本当にスパイスからカレーを作り始めたのは、15~6年前からですね。鶏肉のスープとか、残ったものをカレーにするとすごくおいしかった。
美味しいスープがあれば、美味しいスパイスカレーってできるんだと気づいて。それはもう、ちゃんぽんスープしかないじゃない。
おいしいちゃんぽんスープが入っているカレーを作れたら、ご当地グルメになって、ちゃんぽんスープカレーを食べるために長崎に来てくれる観光客が増えるのではないかと思ったんですよね

10年前に閃いたものの、その後は実行に移すまでは至らなかった。
しかし、世界を襲った未曽有の事態が、皮肉にもこのプロジェクトを前進させることになった。
新型コロナウイルスの感染拡大だ。

新型コロナの広がりは宿泊業を直撃。小林さんのホテルも例外ではなく、売り上げは通常の4割にまで落ち込み、月の半分以上休館せざるをえない状況になった。

稲佐山観光ホテル・小林央幸専務:
繁忙期にお客さんがゼロということが多々あった。
何もしないで、このコロナ禍を過ごすのは良くない。何か未来に向けて、何かできることないかなと思った時に、今こそ、ちゃんぽんスープを使ったスパイスカレーを作る時なんじゃないかと思って動き始めた。
コロナが来ていなかったら、まだやっていなかったかもしれないですね

試作6回…”ちゃんぽんスープが隠し味”スープカレー誕生

資金は、県の助成やクラウドファンディングを活用した。食材・カレー・製造・デザインの専門家でチームを結成し、2020年9月に味の研究を始めた。

スパイスカレーのアドバイザーとして迎えられたのが、アジア各国でカレー作りを学んだ松永美和さんだ。

イベントの時にだけ提供される限定カレーが超人気で毎回完売するなど、今 長崎カレー界で最も注目されている「流しのカレー料理人」だ。

稲佐山観光ホテル・小林央幸専務:
辛さはほどいいと思う。カイエンペッパー入れていないから、トウガラシとか

カレー料理人・松永美和さん:
「スパイスだ!」って感じる何か…

稲佐山観光ホテル・小林央幸専務:
カルダモンの粒をかませたかったんですけれども、それはちょっとできないという話だったので

カレー料理人・松永美和さん:
マスタードシードのプチっとした苦味が時々入るのがおもしろいですよね。何か変えるとしたら、ニンニク…ショウガ…とかそっちかな

次々とアイディアが浮かぶ

そして、6回の試作の末に完成。
結局、20種類のスパイスを使ったが、特にブラックペッパーの辛味が刺激的で、弾けるような、さわやかな辛さがある。

また、ちゃんぽんスープが隠し味になっていて、コク・うま味があり、長崎ばってん鶏にも存在感が!
肉からでた出汁がさらにスープをおいしく、トマト、タマネギ、ナス、ジャガイモなど野菜もゴロゴロ入っている。

注文殺到…豚肉使った新作構想も

2021年7月の発売からの反響を聞くために、ホテルを訪れてみた。

稲佐山観光ホテル・小林央幸専務:
置く所がないので、客室を一部屋つぶしてカレー倉庫にしています。やり始めたばかりの新規事業なので、とりあえず今は自分でやっています。
この前、注文が殺到して、朝の4時くらいまで梱包にかかっちゃいました。(スープカレーが)長崎に来るきっかけになれば最高ですね

パッケージは、いわゆるレトルトカレーっぽくしないというコンセプトで、ポップな色合いにデザイン。とても可愛らしく、印象的で、2021年秋には県のデザインアワードで金賞を受賞した。

デザインの可愛さが店頭でも映える

新型コロナという逆境から生まれた「長崎スープカレー」。前を向いて進みたいという思いが味に込められている。

今後は新作の構想もあり、今度は「長崎の豚肉」を使いたいと考えている。
また、リピーター用に箱をなくした「お買い得版」を準備することも検討中とか。

この「長崎スープカレー」はレトルトなので家で食べるのが基本だが、レストランクオリティにアレンジした料理を店で食べることもできる。

珍陀亭 チトセピア店

長崎市のチトセピア地下1階にある珍陀亭では、「長崎スープカレー」のスープを使って店用にアレンジし、さらにばってん鶏のスパイシーチキンなどを添えたレストランバージョンのメニューも提供している。

レストランクオリティのスープカレーも

【取材後記】
「これは…レトルトのレベルじゃない…!?」
グルメマンガのようですが、これが最初の一口の正直な感想です。

新型コロナの感染拡大から2年目を迎え、多くの業界が「これまで通り」が通用しない、かつてない苦境に立たされています。
そんな状況にあっても「新しいもの」を生み出そうとする人に注目し、番組の中で取り上げています。

今回取材したのが「長崎スープカレー」でした。
長崎を代表する観光ホテルがコロナの影響を受ける中、企画されました。
 
「カレー王子」と呼ばれる小林専務と、長崎で今一番人気があると言われるスパイスカレーの料理人・松永美和さんのタッグは、長崎カレー界に衝撃が走る組み合わせでした。
 
レシピ化の様子を私も何度か見せてもらいましたが、20種類のスパイスをg単位で調整し、なおかつ香味野菜や調味料にいたるまで、とんでもない数の組み合わせを考慮した結果できあがったのが「長崎スープカレー」です。

具もゴロゴロ、野菜も鶏肉も存在感ある!

製造を担当した食品会社の方に聞いたところ、「過去最も細かいオーダー。こんなにリクエストが多いカレー作りは初めて」とのこと。
「企画物」のカレーは全国に数多ありますが、その中でも「長崎スープカレー」は独自の立ち位置を開拓したと思います。
 
長崎名物「ちゃんぽんスープ」と20種類のスパイス、そして長崎ばってん鶏。
具もゴロゴロ、野菜も鶏肉も溶けることなくしっかり存在を主張しています。
かつて海外からスパイスが入ってきたのは長崎の出島だけ。そんな歴史もスープカレーが伝えてくれています。

パッケージもポップで、ライトでかわいらしいです。
デザイナーの方は、いわゆる「カレー」らしい黄色やオレンジ、茶色がベースの案も作っていましたが、「今どきのスーパーは本棚のようにカレーを縦に並べる。ありがちな色にすると浮き立たない。今までにないカラーリングにすべき!」と強く主張して、結果、展示会でも「ジャケ買い」する女性が押し寄せる程のものができあがりました。

吉井誠アナウンサー

新型コロナの取材は閉塞感を感じることが多いのですが、「コロナで想定外の時間ができたからこそ長年の企画を形にできた!」という「長崎スープカレー」は、長崎だけでなく、全国を明るくする話題だと思います。
 
カレーが好きだと自認するみなさん!
これは一度食べておいていい、知っておいていい、カレーだと思います。

(テレビ長崎・吉井誠アナウンサー)