橋下徹さんはケンカ上手
先週末のFNN世論調査によると、日本維新の会の政党支持率は11.7%で、立憲民主党の9%を上回った。自民党は40.2%。この数字だけ見れば維新はすでに野党第一党になっている。他社の数字も似たようなものだ。実際の衆院の議席は立憲が97議席、維新が41議席なのでまだ倍以上の差はあるのだが。

ただ衆院選で議席を4倍にした維新には勢いがある。国会議員に配られる月100万円の文書交通費について「10/31の夜に当選した議員が10月分の100万円をもらうのはおかしい」と橋下徹元代表が言い出して、維新は寄付する方針を決め、他党も同調しつつある。ハシモッチャンはさすがケンカ上手だ。
それだけではない。維新は衆院選で議席を増やしたので国会で委員長ポストを一つ獲得したのだが、以前からムダな委員会が多いとして、委員長の手当やハイヤー使用などを批判してきた。12/6にも召集される臨時国会では今回得た委員長ポストを盾に国会改革を迫るものとみられる。
立憲は袋小路に入ってしまった
衆院選では立憲が14議席減で惨敗し、枝野代表が辞任した。自民も15議席減らしており、2党の減った分が維新の30増である。つまり維新は立憲が共産党に接近しすぎたことを嫌った左寄りの無党派層と、所信表明で「改革」という言葉を一回も使わなかった岸田首相に幻滅した右寄りの無党派層を取り込んだわけだ。
この左右の無党派層は維新が文書交通費を寄付したり、国会のいらない委員会の委員長のハイヤー代をカットするときっと喜ぶだろう。維新の人気はもっと上がるかもしれない。
一方の立憲だが袋小路に入ってしまっているように見える。世論調査によると立憲支持層は共産との野党共闘を「続けた方がよい」48.6%で「続けない方がよい」48.3%と拮抗しているのだ。

立憲は14議席減だが実は小選挙区では9議席増である。つまり共産との共闘は一定程度成功した。ただ比例で23議席減だった。共産との距離を縮めすぎたために立憲そのもののブランド価値が破壊され、無党派層が逃げ出した。ということは来年の参院選でも立憲の「弱い選挙区候補」は共産と組みたがる。勝つ人もいるだろう。だが比例はまた厳しい、ということではないか。
政界再編のキーパーソンは
では維新は政権を狙えるような二大政党の片割れになれるのか。単独で100を超えて200を狙うのは大変だ。ただ国民民主党や自民の「小さい政府」派、立憲の保守派が合流、あるいは連携すれば、自民と対抗できるスケールになる可能性はある。東京には都民ファーストという地域政党もある。
僕は9月の自民党総裁選で、安倍、麻生が岸田を推し、菅、石破、進次郎が河野太郎を推すのを見て、このままガチンコでぶつかって、両陣営の関係修復が不可能になったら、たぶん負けるであろう菅一派が離党するのではないかとの危惧を抱いた。確かに菅、河野は政策的に維新と近い。

だが不思議なことに河野太郎は負けた後に、そのまま自民党に残り、なぜか楽しそうに冷や飯食ってるし、菅氏も最近岸田首相といい感じで会っていた。首相も菅氏へのリスペクトを忘れない。こういうところが自民のしぶとさ、である。あと、岸田首相のゆるキャラが実は効いていると思う。

ただ潮目が変われば何が起こるかわからない。たとえば何かのきっかけで菅氏が「俺は維新に行く」と言えば、追随する人はいるだろう。国民はすでに維新と国会対応で連携することを決めている。であれば選挙区調整もできるだろうし、「限定的な閣外協力」だってできるだろう。立憲の保守派は国民に移れば維新と連携できる。
2009年に民主党が政権を取った時、「ついに日本でも欧米並みの2大政党制ができたか」と感慨深かったがすぐに崩壊してしまった。やはり自公が永遠に政権を担当するというのはダメだ。権力は時々交代しないとアカや汚れがついてしまう。もし維新を中心にした野党連合ができるなら、二大政党制ではなく二大勢力制ということになるが、これはこれで日本の新しい民主主義の形なのかもしれない。
【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】
【表紙デザイン:さいとうひさし】