シリーズ「名医のいる相談室」では、各分野の専門医が病気の予防法や対処法など健康に関する悩みをわかりやすく解説。

今回はリウマチ性疾患のエキスパート、慶應義塾大学名誉教授の竹内勤先生が、リウマチの正しい知識と対処法について詳しく解説する。

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「リウマチ」とは

「リウマチ」という言葉そのものは、体を動かす運動器である、関節、腱、筋肉などに痛みが起こってくる病気のグループ名です。

専門的には「リウマチ性疾患」といい、40以上の非常に多くの病気が加わっているグループです。

例えば「痛風」。
字面を捉えると「風が吹いても痛い」。
親指の第1関節に腫れと痛みを起こしてくる病気ですが、関節の症状のため「リウマチ症状」です。
それで広く「リウマチ性疾患」の1つになります。

馴染みは少ないかもしれませんが「変形性関節症」、皮膚に病気が起こる「乾癬(かんせん)」に伴う「乾癬性関節炎」というのもあります。

また、多くの膠原病と呼ばれる病気もリウマチ症状を出します。
その中で「関節リウマチ」という病気が代表的なリウマチ性疾患ということになります。

関節は骨と骨とが向き合っていて、その表面に軟骨がついていますが、その軟骨の滑りをよくするための関節液を分泌する「滑膜」という膜があります。

「関節リウマチ」というのは、その「滑膜」に炎症が起こってくる。
そのために骨が少しずつ削られていき、軟骨が溶けていって関節がうまく動かせなくなる病気です。

この炎症は、関節だけでなく関節外にも及びますので、動脈硬化が進んだり、全身症状「体重が減る」「物が食べられなくなる」「体が怠くなる」など様々な影響が全身に及びます。

男女比は3:1で女性に多い

「関節リウマチ」の国内の患者数は、数10年前は60万人、10年くらい前は70万人、一番直近の2018年に行われたアンケート調査によると83万人、もしかしたらそれより多いかもしれません。
少なく見積もって60万人、多いと100万人ぐらいの患者さんが国内にいるのではないかと言われています。

全体の男女比で言うと、以前は4対1で女性に多く、最近は少し男性の割合も増えてきて、3対1ぐらいと言われています。
それでも女性に多い病気です。

昔は40~50歳代に発症すると言っていましたが、2018年の調査によると「関節リウマチ」の患者の一番多い年代は実は60~70歳代と言われていまして、昔に比べて高齢化しています。

その最大の理由は日本の人口が高齢化しているためで、そのために60歳代に一番ピークがあると考えられます。

しかしどの年代にも起こる病気で、当然若い方、20代、30代でも起こります。
小児の方にも起こります。
小児の場合は「関節リウマチ」という名前ではなく、「若年性特発性関節炎」という名称を使っていることが多いです。

逆に70代、80代でも起こるので、どの年代に多いという言葉は適切ではなくて、どの年代にも起こる病気です。

「こわばり」「痛み」「腫れ」

リウマチの症状は、特徴として3つあります。
こわばり」「痛み」「腫れ」がリウマチの一番多い症状です。

「こわばり」は、関節がうまく動かせないようなぎこちない症状が出てきます。
「関節リウマチ」の場合、こわばりは朝に多いです。

こわばりの時間は、例えば1時間以上こわばると、かなり「関節リウマチ」が疑わしくなります。

それから当然、「関節の痛み」。
「じっとしていても痛い」「動かして痛い」「人に押されると痛い」という3つの痛みの特徴があります。

もう1つが、「関節が腫れる」。
特に「腫れが起こる」というのが非常に重要なポイントです。

例えば触ると、骨が盛り上がったような腫れではなく、いわゆる水枕が腫れたような、触ると柔らかくて少しプニプニする。
それは、先ほど言った「滑膜」が膨らむためです。

水枕で考えると、ゴムの部分が「滑膜」に当たり、その中に関節液(滑液)が溜まっています。
そのゴム部分(滑膜)が腫れるので、外から触ると柔らかく腫れるんです。
中に少し液が溜まっているような形に思われるかもしれません。

この痛みや腫れが複数個あると、「関節リウマチ」がかなり疑わしいということになります。

痛みや腫れが1カ所だと、突き指でもそうなりますし、ゴルフで手首を使いすぎて痛むこともあるので、1関節だとまだその疑いは強くありませんが、痛みや腫れも含めて複数関節に及ぶとなると、「関節リウマチ」のような全身の炎症で起こる病気が強く疑われます。

症状が出やすい箇所

「関節リウマチ」で痛みや腫れが起こる関節には特徴があります。
一番典型的なのは、爪から数えて2番目の関節と指の付け根の関節です。
「第2関節」と「指の付け根の関節」に痛みや腫れが起こるのが特徴的です。

親指だけは爪から数えて一番最初の関節と付け根の関節です。
もちろん手首、足首にも起こります。

例外もあって、「関節リウマチ」でも爪に一番近い関節に腫れや痛みが起こることもあります。
この第1関節に痛みや腫れが起こる代表的な病気は、リウマチ性疾患の中で最も多い「変形性関節症」という、関節に負荷が加わったり、年齢と共に骨が盛り上がる病気です。

「関節リウマチ」は、第1関節は比較的少なく、第2関節と指の付け根に多いと考えてください。

症状が出てから3か月以内に治療を

「こわばり」であっても「痛み」「腫れ」であっても、「関節リウマチ」が始まったなと思う最初の症状「初発症状」から一番最初に「抗リウマチ薬」を使うまでの期間は、3ヶ月以内が理想的と言われています。

実は発症直後が一番骨が溶けやすいと言われています。
ただ、レントゲンでは骨が溶けたことがわからないケースもあります。

症状が出てから1年以内に病状が進む人が非常に多いのに、それをレントゲンで検出できる人は30%しかいません。

病気が始まった直後が一番炎症が強いため、その時が関節破壊の進行スピードが速いと言われています。

症状が始まってからなるべく早く診断し、診断がついたらなるべく早く薬による治療を開始することが重要です。

しかし、これは理想で、非常に診断が難しいケースでは3ヶ月を超えてしまうこともあります。

ポイントは「血液検査」

まずは、血液検査を行っている施設、自己抗体の血液検査が大事です。
併せて体の中に炎症があるかどうかがわかるCRP検査とか、赤血球沈降速度、略して「赤沈」「血沈」と言いますが、こういった炎症が体にあるかどうかを血液で調べるのが重要です。

「内科」でも、専門の「リウマチ科」でも、または、「整形外科」の先生でもリウマチを専門にしている方もいるので、まず近所で血液検査ができる施設を訪ねることです。

理想的にはそこでレントゲン検査をして、骨に傷がついていないかどうかを併せて検査できるとより良いです。

血液検査は非常に感度が高い一方、レントゲンは初期ではほとんど所見がないので、まずは血液検査が診断する上で非常に重要になります。

*慶応病院は、紹介状がないと受診が出来ません。
竹内先生は現在、新規の患者は受付ておりません。

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竹内 勤
竹内 勤

慶應義塾大学 名誉教授
自己免疫疾患、膠原病・リウマチ性疾患、感染症、アレルギー性疾患のエキスパート
慶應義塾大学医学部卒、慶應義塾大学医学研究科大学院修了
ハーバード大学ダナ・ファーバー研究所、埼玉医科大学副学長、慶應義塾大学病院 病院長などを経て現職。日本リウマチ学会理事長、日本炎症・再生医学会理事長、日本骨免疫学会理事、慶應医学会理事 ほか多数

名医のいる相談室
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