「粒が大きい」ホクホクの食感楽しめる栗きんとん

岐阜県中津川市に、秋の訪れを感じさせる栗を使ったオリジナルの和菓子がある。そぼろ状にした濃厚な栗きんとんを、つきたての餅のまわりにたっぷりと振りかけた「栗粉餅」だ。

柔らかい餅に栗の甘みがよく合うこのお菓子は、賞味期限の短さと販売数の少なさから“幻の和菓子”と言われている。

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岐阜県中津川市の国道256号線沿いに店を構える、昭和33年創業の和菓子処「一茶堂(いっさどう)」。

この時季の看板商品の「栗きんとん」(240円)は、ホクホクとした食感と栗そのものの甘さがたまらない中津川の秋の味覚だ。

女性客A:
栗きんとんというと、ここの店へ寄るんです。粒が大きいのが入っている

女性客B:
味ももちろんですけど、粒が残っていたりして。いろんなお菓子屋さんがありますけど、一茶堂さんの栗きんとんが一番好きなので

この味を求めて朝から多くの人がやってくる。生み出すのは、2代目店主の田口哲也さん。

田口哲也さん:
「ここの栗きんとんがおいしかった」と言ってもらえるのが、この仕事をやっていて一番うれしい言葉です

小さな渋皮まで丁寧に取り除き、栗本来の味を生かす

午前6時。毎朝、この時間から一茶堂の栗きんとん作りは始まる。まずは九州・熊本産の栗を40分ほど蒸す。

田口哲也さん:
色もキレイですし、ホクホク感とか栗の風味がすごくいいです。栗きんとんに熊本の栗は最高だと思います

蒸した栗を機械で半分に切り、中身を取り出したところで、箸を使って渋皮などを取り除く。

手間はかかるが、栗本来の味を生かすために小さな渋皮を取り除く作業は欠かせない。

続いて、砂糖を加え炊き上げる。栗の食感を楽しめるように粒を残すのがポイント。一つ一つ丁寧に茶巾で絞ると、あの独特な形に。栗きんとん1つに栗6個分が使われる贅沢な逸品だ。

翌日には固くなってしまう幻のお菓子「栗粉餅」

看板商品の「栗きんとん」とは別に、それ以上に人気の商品が「栗粉餅」(6個入り 1000円)だ。

田口哲也さん:
餅に炊き上げた栗きんとんを、そぼろにしたものをまぶしたお菓子です

栗きんとんの餡をそぼろ状にしたら、つきたての柔らかい餅のまわりにまんべんなく付ける。柔らかい餅に栗の甘みと香りがよく合う、別名“幻のお菓子”だ。

女性客C:
丸ごと栗を楽しめます、柔らかいお餅の上にふんだんに栗がのっていますので。朝に来ないと売り切れてることが…

女性客D:
1日の命ですよね、次の日だと固くなっちゃうので。おいしいです。秋を感じます

田口哲也さん:
日持ちがしないので、本日中に食べていただくのが一番。味が落ちてしまうので、幻のお菓子って言われているのではないでしょうか

賞味期限の短さに加え手間がかかるため、1日25箱ほどしか作れないことも“幻のお菓子”と言われるゆえんだ。

餅が見えないくらい栗の粉をかけて 息子のアイデアで評判に

「栗粉餅」は20年前から販売してきたが、知られるようになったのは田口さんの長男・温基さんのあるアイデアがきっかけだった。

長男の田口温基さん:
もともとは粉がちょこっとの感じなので…。もっと栗きんとんを味わってもらいたいので、お餅が見えないくらい栗きんとんの粉をかけた

以前は餅が8、栗きんとんが2の割合だったが、栗粉の割合を増やして餅にたっぷり振りかけ、栗が主役のお菓子に変身させた。

田口温基さん:
餅が見えないくらい栗の粉をかけることでインパクトもすごいので、もっとみんなに知ってもらえるかなと。こっちの方がどう考えても満足感もありますし

真面目な職人である父が作った、どこよりもおいしい栗のお菓子。多くの人に知ってもらいたいと願う息子さんの思いが生んだ、栗が主役の「栗粉餅」。

ちなみに温基さんには、店の倉庫を使ってさらなるアイデアがあるという。

田口温基さん:
栗きんとんを使ったソフトクリームとか、かき氷をやれる施設に変えられないかなと…。最終的には「一茶堂」をみんなに知ってもらいたくて。それで親父の助けもできたらなと思いますね

田口哲也さん:
本人が色々やってみたいと夢を語ったので…。これから若い者の意見を取り入れて、味を守り続けながらも、新たな挑戦をしていかないと

田口さん親子は、伝統の味を守りなが、新たな挑戦を続ける。

(東海テレビ)

東海テレビ
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