2021年6月に話題となった、東京都日野市の多摩動物公園の「ハキリアリ」の展示を覚えているだろうか?

女王アリが死亡した後、「ハキリアリの群れが衰退していく様子」をあえて見せる展示で、多摩動物公園は女王アリが5月下旬に死亡したことを報告。

ハキリアリの働きアリ【画像:(公財)東京動物園協会】
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展示について東京ズーネットの記事に、「数年に一度しかない、群れの終焉。ぜひ、終わりまでの日々の変化を見届けに来てください」とつづっていた。

展示が始まった際に編集部でも取材し、ハキリアリは集めた葉や落ち葉などで菌類の栽培を行っている種が有名で、多摩動物公園で飼育しているのは「Atta senxdens」という葉を切り取って菌を栽培する種で、ペルーで採集されたものだと語っていた。

(関連記事:「女王アリ」亡き後はどのように滅ぶ? “ハキリアリの群れの終焉”展示が興味深い

死亡したハキリアリの女王アリ【画像:(公財)東京動物園協会】

そして、女王アリの死亡から約6か月後となる10月28日、多摩動物公園はTwitterの公式アカウント(@TamaZooPark)で、この展示の終了を報告した。

「巣内の状態が悪化したため展示を終了いたしました」とつづっている。

また、この展示でハキリアリが衰退していく様子を見ていたという、Twitterユーザー、空白寺さん(@vanity_temple)は10月28日、展示の感想を投稿。

「女王アリが死亡し新たなアリが生まれなくなった群れが衰退してゆく様子は胸に迫るものがありました」「『信頼する仲間と、緩やかに迎える滅び。それが彼らの生き方なのでしょう』という飼育員さんの言葉が刺さりました」とつづっている。

「滅びの展示」という珍しい試みに心揺さぶられた人もいたようだが、“巣内の状態が悪化”というのは、どのような状態なのか?
また、巣内の状態が悪化するまでには、どのような過程を辿ったのか?

多摩動物公園の担当者に話を聞いた。

「菌園がかなり縮小し、働きアリの個体数も少なくなりました」

――「巣内の状態が悪化」、これは具体的にはどのような状態?

菌園がかなり縮小し、働きアリの個体数も少なくなりました。
菌園の周りに切った葉が使われず堆積するようになり、一部カビも生え始めています。

展示から下げたハキリアリの菌園の様子【画像:(公財)東京動物園協会】

――巣内の状態が悪化するまでには、どのような過程を辿った?

働きアリの数が少なくなり、菌園が縮小しました。

6月14日に撮影したハキリアリの菌園の様子。左の菌園がごくわずかになっている【画像:(公財)東京動物園協会】

葉を切り取る量も少なくなりましたが、一方で、切り取った葉があまり使われず、菌園の周りに堆積するようになりました。

菌園を育てる作業をあまり行わなくなったからかもしれません。

6月24日に撮影したハキリアリの菌園の様子。左の菌園がもう確認できない【画像:(公財)東京動物園協会】

女王アリの死亡後、すぐに巣が崩壊するようなことはなく、秩序を保ちながら、徐々に衰退していったような印象です。

途中からは、普段はあまり葉を切り取らない大きな兵アリも葉を切り取る作業をするようになり、もしかしたら、各働きアリの仕事内容も巣の衰退に影響されていたのかもしれません。

ハキリアリの働きアリ【画像:(公財)東京動物園協会】

「興味深い生態を伝え続けてくれたことに感謝しています」

――お客さんの反応は?

展示をご覧になるお客さんの中には、すでに女王が死亡していることを知っている方もいらっしゃいました。

――定期的に観察に来たお客さんはいた?

いらっしゃいました。

空白寺さん(@vanity_temple)が投稿したハキリアリの展示

――展示が終わったこと、どのように受け止めている?

多摩動物公園で飼育したハキリアリとしては最も長く生きた女王アリで、また、多数の働きアリが展示で活躍してくれました。

女王が死んでからも、残った働きアリが、その興味深い生態を伝え続けてくれたことに感謝しています。
 

新たな群れの展示を開始

多摩動物公園はTwitterの公式アカウントで、新たに、バックヤードで飼育していた女王アリが存在している群れの展示を始めた、と投稿している。

新しい群れの展示の様子【画像:(公財)東京動物園協会】

今回は菌園の展示の仕方も少し変更したそうで、以前はアクリルケースの中に大きな菌園が直接入っていたが、新しい展示ではいくつもの小さなプラスチックケースに菌園が入っている。「ハキリアリは野外の土中では多数の直径15㎝ほどの部屋で菌園を育てているそうで、小さな多数の部屋に分かれているという意味では、より自然に近いと言えそうです」としている。

女王アリが存在しているハキリアリの群れは、どのような生態を見せてくれるのか。ぜひ、自分の目で確かめてほしい。