沖縄県の新型コロナウイルスの感染者は現在、減少傾向にあるが、医療現場では次の流行に備え準備を進めている。第5波のような爆発的な感染拡大を引き起こさないために、県民に求められることなどをコロナ対応にあたる医師に聞いた。

第5波で医療崩壊の一歩手前に

琉球大学病院 梅村武寛医師:
第5波は、沖縄県としてはある意味不名誉なことだと思いますけども、全国で有数の感染爆発。全国と言わず世界的に見ても、日常の一般的な医療自体が継続できなくなるような状況の「医療崩壊の一歩手前」というところまで来てしまった。これがこの地域での、大きな特徴になります

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琉球大学病院の梅村武寛医師は、病院で新型コロナ患者の治療するかたわら、県の対策本部で医療コーディネーターとして感染者の入院調整にも奔走した。

琉球大学病院 梅村武寛医師:
一時期、4日間ぐらい本気で(ベットが)足りなくなりました。多分、8月の中旬過ぎだったと思います。一番多かった時は、私も夜中にあっちこっちの入院調整をするわけですけど、いかんと本当に、ここから次の1人が決まらないというところが出てきました

これは、2021年8月に撮影された琉球大学病院の新型コロナ重症者専用の病床の様子。エクモなどを必要とする重症患者には、複数のスタッフで対応する必要があることから、医療現場では病床だけでなく人員をいかに確保するかが課題となった。

9月以降は新規感染者が減少し、10月には県内の重症者は約1年3カ月ぶりにゼロに。コロナ専用として使っていた病室は他の病気の入院患者の病床として活用されているが、医師たちは次の流行の波を見据え準備を進めている。

10月28日撮影
10月28日撮影

琉球大学病院 梅村武寛医師:
抗体カクテル療法、ロナポリープとかあるじゃないですか。感染したよという時に速やかに打つ術をつくる。だから各病院でどうやるかという調整をしたり、検査体制を維持する。それから、次に増えだした時のホテルと入院待機ステーションを整備しておく。本当に入院が必要となった時、いつの時点で医療フェーズをあげるか

重症化リスク高い妊婦の “専用病床”

第5波では重症化のリスクが高いとされる妊婦の感染も相次ぎ、琉球大学では妊婦専用の病床を確保して対応に当たった。

琉球大学病院 梅村武寛医師:
第5波の時に非常に難渋したのは、例えば家庭環境的な問題であるとか、妊婦さんである、そういったことです。家の中で生活をしているから感染しないだろうと思ったら、思いのほか家庭内感染してしまったわけです

2021年8月、千葉県では感染した妊婦の入院先が見つからず自宅で出産した結果、赤ちゃんが亡くなった。早産や重症化のリスクを抱えた妊婦と赤ちゃん、2人の命を守るため、現場は危機感を持って受け入れ体制を構築する。

琉球大学病院 梅村武寛医師: 
感染して急にお産になるということが全国でありましたよね。そうならないためにも、特殊なパターンっていうもの自体をちゃんと診るところは、決めておいた方が良いでしょう。妊婦さんがコロナ陽性になった場合、専用に見るような病床を琉大が作ります

誰もが感染状況を意識することが大事

うるま市の精神病院では、職員と患者あわせて約200人が感染する大規模なクラスターが起き、71人が死亡した。こうした病院や高齢者施設で感染が確認された際、拡大をいかに抑えるかも課題となった。

琉球大学病院 梅村武寛医師:
施設の中に、感染対策で我々医療従事者が早めに入る。そこで悪くなった方々は入院してもらって、軽症の方々はそのまま施設内で診る。クリアオープンなかたちで私たちが決められるようにする

第6波に備える医療現場。次の流行の波をできるだけ小さくするためには、県民1人1人が県内の感染状況を意識しながら日々を過ごすことが肝要だと訴える。

琉球大学病院 梅村武寛医師:
無制限に病床は増えないわけです。病院が本当にやばいぞ、本当に危ないんじゃないかと思った時に早めに気づく、おかしいぞという時に少しブレーキを踏むことをやっぱり覚えなきゃいけない。いざやるよって言った時に、みんなが納得して、きちんとした行動変容を起こしてくれることだと思う

梅村医師は第5波が収束した要因として、ワクチンの接種が進んだことに加え県民が危機感をもって自粛に協力したことを挙げている。医療崩壊を招かないためには、感染予防を続けながら生活する必要がある。

(沖縄テレビ)

沖縄テレビ
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