火災で失われた正殿の赤瓦

首里城が火災で焼失し、2021年10月31日で2年となった。

沖縄を象徴する首里城を再び見たいと、県の内外から多くの支援が寄せられ、2022年には正殿の建設が始まる予定だ。その屋根に輝きを添える「赤瓦」を再現するべく、県内の技術者たちが今、奮闘している。

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八幡瓦工場 八幡昇代表:
県民の誇り。世界中から沖縄に来て、首里城を見て感動されるような復元ができたらいいなと

新たな瓦作りが着々と進んでいる。

在りし日の首里城を彩っていた鮮やかな朱色の赤瓦は、職人の英知を詰めこんだ最高品質のものだった。1992年に復元された首里城正殿に使われた赤瓦、約5万5000枚の製作に奔走したのが奥原崇典さんだ。

奥原製陶 故・奥原崇典さん(1992年):
やっぱり、ウチナーンチュが焼きたかったということですね。土の問題からずっとやってきて、はっきり言って今でも苦労しているような状態ですから

当時、課題だったのは、いかに瓦の吸水率を低くできるか。「クチャ」を原料とする赤瓦は吸水率が高く、水を含んで重くなると、巨大な木造建築である首里城の構造に影響を与える恐れがあったからだ。

吸水率12%以下を目指し…各地の土を調査

復元の際に技術面で協力していた、県工業技術センターに試行錯誤の記録が残されていた。

県工業技術センター 花城可英 主任研究員:
いわゆる平成の復元時に、首里城の瓦を作るための試験をした結果です。処分を考えていたところだったんですけど…また表に出してきました

さまざまな土の配合と焼く温度を変えて試作を重ね当時たどり着いたのが、名護の古我知で採れる古我知粘土を使って一般的な瓦よりも温度が高い、1130度で焼いた瓦だった。

今回、再建に向けた赤瓦の製作にあたっては吸水率12%以下と定められ、さらに安定して確保できる原料を用いて実現することが、課題として突きつけられた。

県工業技術センター 花城可英 主任研究員:
平成の復元の時の瓦の原料が、もう採れる可能性が低いので…原料をどうしようかと

平成の復元時、駆け出しの研究員ながら一部の作業を手伝っていた花城可英さん。原料となる県内各地の土の調査を急いだ。

県工業技術センター 花城可英 主任研究員:
幸いにも首里石嶺から、いわゆる「石嶺クチャ」と呼ばれるクチャが見つかって。そのクチャを使うことによって、吸水率を低くすることができると分かりました。平成の復元時に比べると技術的にはレベルアップしていまして、作ることに関しては問題ない

焼け落ちた瓦を砕き、新たな瓦に混ぜ未来に繋ぐ

そして、この瓦には首里城の魂が吹き込まれる。ボランティアの手で、ひとつひとつ漆喰がはがされた赤瓦。炎で焼け落ちた首里城正殿の赤瓦を細かく砕き、新たな瓦に混ぜこむことで、人々の想いを未来に繋ぐ。

実際に瓦の製作を担うのは、沖縄県赤瓦事業共同組合に加盟する瓦工場。

八幡瓦工場 八幡昇代表:
赤土を多くしているね

県工業技術センター 花城可英 主任研究員:
はい。あとシャモット(赤瓦を砕いたもの)が入っているので、その分赤い感じです

試作瓦のプレス成型が、八幡瓦工場で行われた。

八幡瓦工場 八幡昇代表:
赤瓦は唯一、原料から全部、生産を沖縄でできる製品だと思っていますので。沖縄の誇りとしてね、早く再現したいですね。我々の先祖が作って何度か火災に見舞われたけど、今回より一層、いい首里城ができたらいいなと思って、一生懸命取り組んでいます

技術と想いが結集する首里城正殿の赤瓦…。2日間かけて試作瓦が焼きあがった。

県工業技術センター 花城可英 主任研究員:
問題なく焼けていると思います。今回の試作は吸水率が問題なく下がっています。次は色味の問題があるので、色味が違う試験体を準備して、国の技術検討委員会の下のワーキンググループの方に提供して、そちらの方で検討してもらうことになります。首里城の、やっぱりお城に相応しい瓦を作って、それをのせていって欲しいと思っています

朱色に輝く首里城をよみがえらせるべく…。人々の想いを繋ぐ復元が一歩ずつ進んでいる。

(沖縄テレビ)

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